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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第一章 ここは異世界
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第18話:レパートリー

「………よぉ、また会ったな」

「会いに来といてよく言うぜ」


 俺たちが一階に降りると、宿のロビーにあたるところはすでに襲撃者たちによって制圧されていた。

 その数、約30人ほど。

 数の多さもさることながら、それだけの数が収まり、なおかつ自由に動けるほどの余裕があるロビーから、この宿の大きさも伺えると思う。


「各10人ずつでどうよ」

「私は大丈夫ですよ」

「僕も問題ない」


 アンネとレイから了解をもらい、二階でした作戦を思い出す。

 曰わく、広い場所に行って纖滅。

 これだけ。

 アンネが『それだけッ!?』って騒いでたけど、黙殺した。


「てめぇら………俺たち黒牙に手ェ出した落とし前、つけてもら………って逃げた!?」


 黒牙(笑)の団長っぽい奴が口上を述べている間に、破壊された壁から飛び出す俺たち。

 飛び出せ青春!


「ちくしょう、奴らを追いかけろ!!」


 相変わらずの単純思考。なんて扱いやすいんだよ団長。


「んじゃ昨日の広場でいいか。ど真ん中に噴水があるけど、それを中心に半径100メートルくらいはあったろ」

「ですね。周囲の人はなんとなく逃げてもらいましょう」

「では水属性の得意なアンネルベル殿が噴水近くでやるといい。僕とユーリはそれを挟むように展開しよう」

「おっけー」

「了解です」



 ◆アンネルベル◆


 さて、やりますか。

 広場に着いた私たちがバラバラになったのを見て、黒牙も三つに別れた。しかも運良く10人ずつくらいに。

 これで当初の予定通り。


「へっへっへ……。すまねぇな嬢ちゃん。奴の仲間だったことを悔やむんだな」


 ………なにか言っているが、悔やむことなんてまるでない。ユーリさんは命の恩人だ。

 そういえば襲った人とそれを助けた人と襲われてた人が仲間になっているのか。

 そのチグハグっぷりに、少し笑みを漏らす。


「何笑ってやがんだよ!!」


 雑魚が何か勘違いしている。なんて無様。

 ああ、気持ち悪い。さっさと始末してしまおう。


「我が命に従い顕現せよ、咆哮を上げる者ルドラ


 暴風雨神にして、破壊神。

 空間を破壊する者。

 ルドラ。


「荒れろ」


 その一言で空に暗雲が立ち込める。


「な、なんだ!?」

「なんだよこれ!!」


 雑魚どもが騒いでいる。………まったく、耳障りだ。その心臓の音を止めろ。


「降り注げ」


 刹那、広場は暴風雨に見舞われた。風鳴りが聞こえ、肌を叩く雨粒は弾丸のようだった。

 そして空から降り注ぐは幾条もの閃光――いや、雷光。


 ダァンッ!

 ガガゥン!!


「あは………」


 私の口は、無意識に弧を描く。


「ギャァァァアアア!!」

「うわぁぁぁああああ!!」

「た、助け………ぁぁあああああ!!!」


 広場に叫び声が木霊する。

 ユーリさんやレイさんの敵も少し削っている気がするが、気にしない。


「あはははは………」


 そして、私の哄笑が響き渡った。


「あははははははははははははははははははははははは!!!」



 ◆レイネスティア◆


 三つに別れた後、僕のところに作戦通りの数が来た。

 予定通りすぎて話にならない。


「覚悟しろよきさmぶほぁ!!」


 僕は話している一人の懐に潜り込み、純粋に力だけで殴り飛ばす。

 話全部聞くと思ったの? バカなの?

 ユーリにはこいつらは倒していい連中らしいというのは先に聞いた。つまり、僕は手加減する必要がなくなったということ。


 ――ルドラ


 ふと、そんな声が耳朶を叩いた。

 すると、すぐに暗雲が立ち込める。しかも雷雲である。

 ………えーっと、ルドラってなんだっけ。なんかヤバい感じの魔術だったような………。


「お、おい、なんだよこれ!」


 なんか騒いでるけど、とりあえず無視。


「ルドラルドラ………、あ」


  暴風雨神だ!


「ヤバい……ッ!」


 僕はすぐに地に伏せる。

 刹那、広場に暴風雨が吹き荒れる。立っていた奴は地面に転がり込むほどだ。

 そして、


 ドォンッ!!


 雷が落ちた。


 ――あはははは………


 地に伏せた僕を除いて、黒牙の人たちは雷に撃たれた。

 風と雨と雷が吹き荒れる中、僕は哄笑する女王を幻視した。



 ◆ユーリ&ノア◆


「魔術で出来ること、か」


 俺は近寄る黒牙(笑)の団員を超電磁砲レールガンで吹っ飛ばしながら、なにか元の世界で得た知識から、魔術のレパートリーを増やそうとしていた。

 つまり魔術でできることしかできないわけで、てことは原作が魔法使うやつなら大体おっけーってことよな?


「んー、と。ノア、なんか案ある?」

「そうじゃのぅ………、集束砲とかかの?」

「…………」


 ………管理局の白いなんちゃらってやつか?

 今はどうか分からないけど、以前“固定砲台”でググったら最初に出てきたあの人。


「………つーと、あれか」

「うむ!」


 なんで嬉しそうなんだ。


「………無理だぞ。あんなマップ兵器使ったら町がなくなる」

「む、………むぅ、残念じゃ」


 なんで残念がるのかが分かりません。つか分かりたくない。


 ――ルドラ


 ふと、そんな声が聞こえる。

 ルドラ………、確か暴風雨神だ。しかし、シヴァの別名でもあり、いわゆる世界の破壊神である。

 なぜ今その名前が………。


「のぅユーリ」

「何だ?」

「アンネがルドラを召喚したぞ」

「………は?」


 慌ててアンネを振り返る。

 アンネのそばに、青白く光る長身の人影が立っているのが見えた。長身とはいっても2メートルは優にある。

 その彼女(彼かもしれない)は、優しげな雰囲気でアンネの頭を撫でていた。


「………アンネって何者?」

「ふむ………、後ほどルドラに訊いてみることにしよう」

「んー……、ん?」


 今何か気になることを………。


「ユーリ、周囲に風結界を張るがよい。それと、隣に避雷針を」

「ん、了解」


 ノアの言葉に、一も二もなく従う。

 風結界。自分を台風の目と捉えて、周囲に竜巻を発生させる。

 避雷針は高い棒みたいなやつ。


「おお、さすがルドラ。暴風雨の神なだけあって威力すげー」

「わらわはユーリが驚かないことに驚きじゃ」

「もう慣れたよ」


 少し遠い目をする。


「避雷針もちゃんと役割を果たしておるな」

「そか。そりゃ良かった………ん、雷?」


 ふと頭をよぎる。あれなら普通にいけるか。

 まだかろうじて雷に当たっていない盗賊を狙い、腕を振り下ろす。


「“千の雷”」


 そう言って、魔力を込めた右手を勢いよく降り降ろす。

 次の瞬間、爆音とともに極太の雷が盗賊たちに降り注いだ。


「ギャァァァアアア!!」


 あ、いけた。


「んー、じゃあ、“雷雨”」


 手から花火みたいに雷の矢が上に飛んでいき、雲に隠れた。そして、雷と一緒に落ち出す。

 トマホークかと。


「あんまりレパートリー増えなかったな」

「まぁ思い出せば使えるんじゃから、気長にいこう」


 まぁ確かに。そんなに焦ることもないか。

 ま、今はとりあえず、


 ――あはははは………


「アンネを止めるぞ!」

「了解じゃ!」



 あれ……? アンネが………。


2010/09/01 01:23

一部改稿。

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