第16話:バラしていいよね?
レイが俺の旅について来る?
………まぁ正直戦力は多い方がいいのだが、その前に訊かないといけないことがいくつかある。それを聞いてからでないと答えは出せないな。
「………まず、なぜ俺について来る気になった?」
「一番単純な理由だと、僕がユーリを気にいった………と言うと少し偉そうかな………、まぁそんな感じだ」
「複雑な理由だと?」
「この世界を見てみたいと思ったからだよ。一番ユーリが気が合いそうだったからね」
この世界を?
というと、さっきの家出と何か関係しているのだろうか。
「いいのか? 親とかそういうの許さんだろ」
「いや、どうせいつかは龍人の国に帰らなきゃならないことは決定してるんだし、だから父上も僕を捜索しになんかこないんだろうね。やろうと思えば一日もかからず見つかるだろうし」
………色々気になるが、とりあえずこれだけ。
「帰ることが決定してるってなんだ?」
「え? そりゃ後継がないと、さ」
「何の後よ?」
「………えーっと、………あ、そうか」
なるほど、と言ってレイは納得顔をした。こちらからすれば分からないことだらけなんだが。
「アンネルベル殿なら分かるかもしれないな。まだ僕のフルネームは言ってなかったよね」
「そうですね。レイネスティア、としか聞いてません」
アンネもきょとんとして聞き手にまわっている。
ちなみにではあるが、ノアは猫形態で、俺が正座をしている時からずっと俺の後ろ頭に覆いかぶさって、前髪辺りに顎が、両側のこめかみ辺りに両手(両前足?)が垂れている。正直、首が疲れる。
「改めて自己紹介するよ。僕はレイネスティア・ドラゴニス。よろしく」
「ドラゴニス? ………え………ど、ドラゴニスって………まさか………」
何かに気付いたアンネが愕然としている。後ろにいる騎士たちは、すでに何人か立ったまま気絶している。それでも倒れないのは凄いと思うが。
「で、なんなんだよ。俺だけ蚊帳の外か?」
「ああ、ごめんごめん。ドラゴニスというのは王族のみに許された名前でね、つまり僕は一応王族なんだ」
「………なんだって?」
聞き間違いだな(希望)。
「僕の父上は龍族の王。いわゆる龍王、というやつでね。その息子が僕、レイネスティアなんだ」
聞き間違いじゃなかった(諦観)。
「………まさかこんなところで会うなんて………」
アンネは絶句したまま何やら呟いている。それなりに危険な光景だ。
俺はとりあえず、話を先に進めることにする。
「はぁ。ま、レイが王子(?)なのは分かった」
「………それだけかい?」
「………それだけだが」
なんだよ。そんなに驚いてほしかったのか………てかアンネと初めて会った時もこんな会話したなぁ………。
レイは気を取り直すように、軽く頭を振った。
「………えっと、それで、僕は後を継いで王になった際のことも考えて、この世界のことを見ておきたいんだよ」
「つまり今からレイに媚売っとけば後々甘い汁が吸えると」
俺はニヤリと笑って問いかける。
その意図に気付いたのか、レイが苦笑する。
「まだ短い付き合いだけどさ、ユーリはそんな性格してないよね?」
「あはは、確かにな」
なんだこいつ、俺のこと良く分かってんじゃん。
俺は誰かに媚びへつらうくらいなら、つらい道を歩んだ方がましだ。ただし、それは自分にのみ責任が被る場合に限る。
ま、なんにしろ、そういうのは好きじゃないのは確かだ。誰でもそうだろうけど。
「んじゃ、今度は俺だ。俺の旅の目的を話す。それを聞いてから、もう一度考えてくれ」
俺は真剣な顔で切りだす。一応、生死に関わる可能性があるからだ。
それを聞いたレイが居住まいを正し、いつの間にか我に返ったアンネもこちらを真剣に見つめる。
「俺の目的は、簡単にいえば霊域の破壊だ」
それを聞いた二人の顔に疑問が浮かぶ。
「そうだなぁ………、最近この辺で魔物が多くなってきたって話はあるか?」
俺は逆に訊いてみる。
最初に口を開いたのはアンネだった。
「我がクレスミスト王国では、最近、とはいっても数年ほど前からですが、魔物の被害が多くなってきています。魔族の行動も活発になってきていて、城の兵士だけでは追い付かず、最近ではギルドに依頼もしています」
「………ふむ、僕の国には物理的に入ることは出来ないが、近くの森には多くなってきた気がするな。たとえ多くても龍族にとっては簡単に屠ることが出来る故、取るに足らないことではあるが、会議の議題に上がることもしばしばある」
アンネに続いてレイも自分の考えを話す。
どうでもいいが、どうやら二人はやはり王族であるからか、政治や経済、自国の危機に関することになると、急に大人びた雰囲気に変わる。
これが王族というものか。と、俺は初めて二人に触れた気がした。
「そう、最近魔物が増えて来た。その原因を破壊するために、俺は旅してるんだ」
「………原因って、何なんですか?」
アンネが不安そうに訊ねる。先ほどの大人びた姿からの、この落差! 萌えrいや今はどうでもいい。
「それが霊域なんよ。そこに瘴気を撒き散らしている奴がいて、そいつをとりあえず倒せばいいらしい」
俺も良く理解してないが、そんな感じ。
「だよな?」
「うむ」
久々ノア様です。
つか、頭から降りてくれないかなぁ。そろそろ首が……首がぁぁぁ……。
「そうなんですかぁ………。それなら王国でも捜索隊を結成した方がいいですね。………いえ、むしろ結成しないと国の威厳が失われます。一応ギルドにも伝えた方がいいのでしょうか………? ん、………とりあえず今はやめた方がいいですね。国内にいらぬ不安を与えてしまいます。なにより今は帝国との戦争が懸念されている時。国内の不安はなるべく与えないようにしないといけません」
アンネさん。考えてることがだだ漏れです。そして意味が分かりません。
それよりも気になるフレーズが先ほどからちらちらと。
「ところでさぁ、ギルドって何? やっぱり冒険者の集まり的な?」
「………何がやっぱりなのかは分かりませんが、だいたいそんな感じです。………というか、そんなことも知らないなんて、ユーリさんは何者ですか?」
ぅあ、藪蛇だったか。
「いえ、それだけではありません。大魔術の連続使用や、創造魔術、転移魔法まで使いこなし、何にも動じない心を持っていながら、あらゆることに無知過ぎる。そして、旅と言っておきながら旅に必要なものを何一つ持っていない。極めつけが、おともに猫の神様。………こうして口に出してみると、本当にユーリさんと言う人物が霞がかって見えます」
うおー、色々不思議がられてるし! こんなにミスってたのか俺! しかも気付いていながら気付かないふりをしていたっぽいアンネに脱帽だよ!
そこで、レイからも援護射撃が出て来た。………無論、アンネの援護だが。
「ああ、僕も気になっていた。ユーリの魔力量は人間にしては多い方だと思う。しかし、先ほどの光の槍のようなもの然り、出会いの風系統と木系統の純粋な魔法。それらを使って、なお魔力が減った気配がない。一体それはなんなんだ? それと、その猫………ノアといったかな、は神だったのか」
うあー、これもう無理じゃね? もういいよね? バラしていいよね? ゴールしてもいいよね?
「あー、いや、まぁ、なんだ。その、色々あんだよ」
色々て。なんやねんそれ。
「ユーリさん………」
「ユーリ………」
二人がじっと俺を見つめてくる。必死に目をそらすも、視界の外で見つめ続けられているのが分かる。
……………。
…………。
……ッ!
「だぁぁぁあああああ!! わぁーったよ!! 言えばいいんだろ言えば!!」
なんで俺がここまで責めされなきゃならんのだ!
つかノアとか完全に沈黙保ってるし、なんか言えよテメェ!
「ノア! ばらすぞ!」
「お、おお。協力者は多い方が良い。しかし、危ない真似はさせるんじゃないぞ?」
「ったりめーだ」
はぁぁぁぁ………、と深い溜め息をつく。
まだ二人は俺を見つめたままだ。いい加減居心地が悪いので視線をそらしてほしい。
「とりあえず俺の部屋に行くか………。ここじゃ人の目がありすぎるだろ」
まだ宿の玄関付近にいた俺たちは、一応周囲に人影は見当たらないので話していた。しかしもうすぐ昼となるためか、少しずつ人が増えて来ていたのだ。おそらくご飯を食べに行くのだろう。
「分かりました、ではユーリさんの部屋に行きましょう」
「あ、ユーリ。僕は一応もうユーリについて行くつもりだからよろしくね」
ったく、勝手なこと言いやがって。
言いつつ、なぜかニヤける口を抑えるのに必死だった。やはり、気の合いそうな仲間が出来る、そしてその仲間に自分の秘密をバラすことが、少し嬉しかった。もう隠さなくていいのか、と。
「はぁ、………ま、心強い仲間が出来た、くらいに思っておくか」
「じゃの。実際アンネとレイは強いぞ? 一人一人でこの町を壊滅出来るくらいには」
………この町って結構でかいよな? それを一人で?
鬼の類ですか。
「ユーリとわらわなら、国が落とせるぞ」
………やらんけどな。
俺は軽く伸びをすると、部屋へ向かって行った。
………あ、気絶した何人かの騎士どうしよう。