第15話:アンネ怖い
「………で、なんでこんなことしてたんですか?」
「い、いや、まずは落ち着k」
「質問に答えて下さい!」
「ごめんなさい!」
………今俺は、昨晩泊まっていた宿の玄関で、正座をしている。
そして、なぜか龍人のレイネスティアも横で正座している。
2人して宿に駆け込んで息を整えていると、スィードを伴ったアンネが急ぎ足で入ってきた。アンネは昨日俺が渡した服を着ているので、動きやすそうにしている。しかし、その動きやすさのために、俺はアンネからドロップキックを受けることになった。
その後すぐさま正座させられ、レイネスティアことレイと一緒に広場でのあらましを語ったのだ。
アンネはどうやら俺の魔術練習からレイとの共闘まで見ていたらしく、俺の魔法量がすげぇこともバレてしまった。
「あ、アンネルベル殿………、どうか落ちt」
「黙りなさい」
「はい」
龍人よわー!
「というかですね、レイネスティアでしたっけ。あなた龍人ですよね?」
「はい。龍人です」
「力が強くても、もう少し考えてから行動しなさい」
「も、申し訳ない………」
なぜか龍人に説教を始めるアンネ。後ろで騎士たちが顔面蒼白でガクガクしている。もう少しで死にそうだ。
まぁ龍人に説教する人間なんて、史上初だろうからなぁ………。
「聞いてるんですかユーリさん!?」
「はい! 聞いてます!」
アンネ怖い。
超怖い。
「はぁ………。で、なんでレイネスティアさんはユーリさんにこんなことをしたんですか?」
「それは………、アンネルベル殿を連れて行く途中、ユーリに襲撃され、あまつ逃げられたからだ」
ギロリ、とアンネが俺を睨む。
アレー? アンネさん、そんなキャラでしたっけ?
「ユーリさん………全て説明してもらいますよ………?」
「………イエスマム」
俺は異世界に現れ、村に至るまでを説明した。
ただし、異世界から現れたというのは秘密にして、転移魔法のミスだと言っておいた。
ちなみに転移魔法も大魔術に分類されるのだが、すでに色々見ているアンネからのツッコミはなかった。
「そんなことが………。ユーリさん、改めてありがとうございます。この御恩、一生かけても返せないかもしれませんが………」
「いやいや待て。俺も成り行きで助けただけだから、そこまで言われると負い目を感じる」
「ですが………」
「ま、とりあえず俺はクレスミスト王国で情報が集められりゃいいや」
「………分かりました。全力で助力させていただきます」
その言葉に、俺は苦笑で返した。
正直そこまで大したことをした自覚はないからだ。
「………あッ! ごめんなさい、正座とかさせちゃって!」
と、急に慌てて俺とレイを起こしにかかるアンネ。
ちょっと癒される。
「いや、ま、俺が説明しなかったのが悪いんだし、レイももうアンネに危害を加えるつもりはないんだろ?」
「ああ」
それならいい。
「ところで、いくつかレイネスティアさんに訊きたいことがあるんですが………」
「ああ、私も一応龍人ゆえに隠さないといけないこともあるが、答えられることならばすべて答えよう。………それと、私のことはレイでいい。ユーリもそう呼んでるからな」
「………分かりました。ではレイさん。私が襲われた時、傍にいた護衛騎士の方々はどうしました?」
そう訊くアンネの顔は、こちらが強張ってしまうほどに緊張していた。
………もしかしたら殺されているのかもしれない。むしろ、普通ならば殺すだろう。目撃者は少ない方が良いに限るのだから。
「ああ、彼らか。大丈夫、殺してはいないよ」
その言葉に安堵のため息を吐くアンネ。よほど気がかりだったのだろう。
「仲間には殺せと言われたがな」
と言って苦笑するレイ。その言葉にアンネは顔を引き攣らせた。
「………えっと、では次に、なぜ私を拉致したのですか?」
「すまない、それは言えない」
アンネの声にすぐさま反応するレイ。どうやら質問を予想していたようだ。
「しかし、君ならなぜ自分が連れ去られたか、分かるのではないか?」
その言葉に考え込むアンネ。どうやら思い当たる節があるらしい。少し考え込んでいたが、どうやら自分の中で整理は出来たようだ。
「んじゃ、俺からも質問いいか?」
「ああ」
さて、俺のターンだ!
たいした質問はしませんけど。
「なんでレイはここにいるの?」
「ん? 家出したからだ」
「……………」
……………。
「い、いや、そこまで引かれると傷つくぞ………」
………家出………家出か………。
「………アンネ。この辺じゃ家出は珍しくないのか?」
「………十分珍しいですね」
「いやいや待ってくれ! 色々と事情があるんだ!」
俺たちが蔑んだ目(あるいは生温かい目)でレイを見ていると、軽く泣きそうになっていた。龍人って、案外怖くないものね。
俺はそれより怒ったアンネの方が怖いと知りました。
「実はユーリに襲撃された際、少し説教されてしまってな。それで、アンネルベル殿を攫うよう指示した理由を訊ねに行ったのだが、その理由が気に食わなかったんだ。それで、何度言っても聞いてくれそうになかったんで、それならもう僕の信念から外れた龍人の国にはいられないと思って、国を出たんだ」
家出じゃなくて、国出だった。
しかし、それで出れるってすごいなぁ、龍人の国。
「それで、あの時見事にわれらを出し抜いたユーリのことを思い出してね、探してみようと行った矢先、彼らに絡まれてしまってな………」
心底苦労した、とでも言うように、レイは肩を落とした。
彼ら、というのは先ほどのチンピラどものことだろう。
「そこでだ、ユーリに頼みがあるんだ」
「あン? なんだ?」
なんだろう。すでにそれとなく仲良くなってるから、出来ることならしてやりたいけど。
しかし、レイの頼みとは、俺の予想からは若干斜め上を行くものだった。
「ユーリの旅に、僕も同行させてもらえないか?」
「………は?」
ギャラクシーエンジェルの二次創作とか面白いかもねぇ。
こんにちは、芍薬牡丹です。
pv20000とユニーク3000ありがとうございますm(_ _)m
これもひとえに読者様のおかげです。
明日の分とか全然書いてませんが、頑張りますのでよろしくお願いします。