第11話:若き情動
村を出発して2時間くらいで最初の町についた。そもそも出発した時間が遅いので、最初の町で今夜は休むことになったらしい。
騎士達は少数なので、王女の部屋を交代で警備するらしい。さらに俺の警備まですると騎士達の寝る暇がなくなるので、遠慮させてもらった。なかなかに食い下がったが。
あと、なぜか騎士の中では俺が王女を救ったと噂されてた。いや一応本当なんだけど、ただ拾っただけとしか言ってないよね?
そのことに関して、勇者を見るような目をする騎士もいれば、アンネとため口で話すことに憤りを覚える者。俺に対して敵意を向ける騎士もいたりと、なかなかに騎士というものは一枚岩ではなさそうだ。
「ではユーリ殿。また明日、お伺いします」
「ん。また明日な、スィード」
と、俺は気軽に声をかける。
ちなみにスィードは俺と同年代くらいなので気軽に話して欲しいのだが、立場上そのような振る舞いは出来ません、って言われた。
立場って難しいね。
でも、騎士の中で一番友好的な人物が、スィードである。やはり拳を交わした相手だからだろうか。拳ではなく槍と鎌&銃だったが。
「では寝るかの、ユーリ」
「ん、ああ………」
振り返ると、ノアが人間形態でベッドの端に座っていた。足をブラブラしているので、なんだか庇護欲をそそられる。
ちなみに、ノアの寝間着は俺が創った。水色の落ち着いた感じのパジャマだ。ちなみに俺は下がジャージに半袖シャツ。なんの面白みもない。
「そういえば、風呂はどうすんだ?」
俺はふとノアに訊ねてみた。
そう言えば今日は風呂に入っていない。一般的な日本人である俺は、やはり毎日風呂に入らないと気持ち悪いのだが。
「ふむ、先ほど宿の客の話を聞いておると一応あるようじゃぞ? 行ってみるかの?」
「そうなのか。んじゃ行くべ」
そう言って立ち上がったのだが、そう言えば少しと言うかかなり気になることがあった。
それは、
「ノア、お前も入るのか?」
「んむ? もちろんじゃが?」
いや、ノアが幼女の姿である以上、一緒に入るというのは抵抗があるんだけど………。
「まぁ気にするな」
気にするっつーの。
とりあえず結果的に、なんとか説得して別々で入った。その説得に1時間ほどかかったのはなぜだろう。絶対楽しんでやがったぞ、この猫幼女。
◆◇◆◇◆◇◆
「しかし、こんな豪奢な宿だとはなぁ………」
風呂から上がってから、あらためて周りを見回す。床はフカフカの絨毯が広がり、アンティークな調度品が自己主張をしない程度に置かれている。ただのドアにまで精緻な彫りが入り、ベッドは天蓋付き。いうまでもないが、シャンデリアもある。しかし電気ではなく、魔術的な構造らしい。
この宿は、この町一番の宿とのこと。さすが、王女様。
「さて、寝るのはいいけど、一緒に寝るの?」
「どうせダブルベッドくらいの大きさはあるんじゃし、向こうの世界では一緒に寝ておったろ」
“猫”のお前とな。
「はぁ………。ま、いいや。俺に幼女趣味はないからな」
「わらわは別に襲われてもよいぞ?」
「!?」
「うそじゃ」
「………ほぅ」
こう、さ。青少年の純情を弄んだ報いは受けてもらわないといけないよね?
「うふ……ふふ……うふふふふふ………」
「ユ、ユーリ? 非常にあくどい顔なのじゃが………」
「俺の若き情動は押さえきれねぇぜ………ッ!」
「な、なぜか身の危険を感じる………! とう! 変ッ身!!」
ノアは猫形態になった!
「ふふん、これでどうじゃ」
「………いつか仕返ししてやる」
そんな感じでその日の夜はふけていった。
とりあえず、野宿じゃなくてよかったな、と思った。
と、俺はここで気を抜いたのだが、異世界初日の夜はまだまだ長いことを知るのは、もう少し後になってからだった。
こんにちは。芍薬牡丹です。
いよいよストックがなくなりました。ちょっと書いてきます。
なんかヌルッとした旅の始まりでスイマセンm(_ _;)m
ユーリは割と負けず嫌いです。攻撃されたら数倍にして返します。騎士のスィード達涙目です。カワイソウに。ふひひ。
さて、書こう。
2010/08/26 23:49
内容に一部の話を追加