表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/64

7−2

 明神署の小さな会議室に、生駒と凛はいた。

 凛は吹雪と通話をしており、生駒は隣で聞き耳を立てている。


「秋月くんが、学校に来ていない?」


 凛が、自身のスマホに向かって言った。


『はい。あたしも心配で連絡してみたんですが、反応がなくて』


 彰からの情報提供を受け、捜査本部はにわかに活気づいていた。

 進展状況について、話せる範囲で共有するのと、追加情報がないか探る目的で、生駒たちは彰に連絡をとろうとしていた。


 しかし、彼からは何の反応もなく、不安に思った2人は、吹雪に事情を伺ってみた、というわけだった。


『――そうなんですか。ドラゴンの仲間には、前科があったんですね』


 凛からは、日向と長門の身元が判明したこと、長門に窃盗の逮捕歴があることを伝えていた。

 もっとも、2人の氏名や居所については、伏せてある。


「秋月くんには、引き続き私たちも連絡をとってみるが……

 もし彼から何か応答があれば、私たちに教えてほしい」


『わかりました』


 そこで、生駒が凛のスマホを奪う。


「森さん。秋月くんは、また何か危ないことをしようとしているんじゃないっすか?」


 電話の先の吹雪が、少しの間、押し黙る。


『……危ないことって、何ですか?』


「ドラゴンは、森さんのお姉さんを、ナイフで刺した男かもしれないっす。

 秋月くんはそれを恨んで、自分の手で犯人をどうにかしようと、企んではいないっすかね?」


 凛が、生駒に非難の目を向ける。

 そんな話を、未成年の吹雪にするべきではない。生駒も重々、わかってはいた。


 しかし、彼の不安は消えない。

 ここ数日のやりとりで、彰の持つ危うさを、生駒は切実に感じていた。


『……わかりません。少なくとも、あたしには何も言っていませんでした』


「もし、彼から連絡があったら、絶対に危ないことはするなと――

 ドラゴンについては、くれぐれも警察に任せるよう、きみからも言い聞かせてほしいっす」





 吹雪が、スマホの終話ボタンを押す。

 学校の屋上にいた彼女は、次の授業に間に合うよう、教室へと急いだ。


(彰、本当にどうしているんだろう……)


 昨日の話では、彰は登校前に、消滅予定者の下見をするとのことだった。

 その後、教室で合流し、2人で領域取得に向かうという約束をしていた。


 しかし現在、彰は学校に来ておらず、連絡もつかない状況だった。


(何か、トラブルがあった? それとも……)


 生駒の言葉が、吹雪の脳裏をよぎる。

 彰が、日向を恨んでいるのではないか、という話だ。


 実のところ、吹雪にもその不安はあった。

 なぜ彰は、タトゥーの情報を、今まで隠していたのか。それは、復讐を考えていたからではないのか。


(彰ならやりかねない、か)


 彰に尾行されていたことを知り、深雪は昨夜、そう言った。

 彼女といい、生駒といい、皆が口を揃えて、彰の危うさを指摘している。


 その上で、吹雪は1つ、ある懸念を抱いていた。


(今日の消滅予定者――橘出雲の居場所って、九頭町よね)


 それは先日、日向に会うために、彰と向かった場所だった。


 これは、はたして偶然なのだろうか。

 今日、彰が学校に来ていないことと、何か関係はあるのだろうか。


 その時、吹雪のスマホが振動した。

 画面を見ると、彰からのメッセージを受信していた。


『学校が終わったら、九頭町に来てほしい』


 今日は土曜日であり、学校は半日授業だ。

 あと1つ授業を終えれば、放課後となる。


(もし彰が、何か無茶をしようとしているなら、あたしが止めないと)


 たしかに、彰の深雪に対する想いは、度を越していると感じる面もある。

 しかし、皆は知らない。深雪が今も無事でいられるのは、誰のおかげか。そのために、彰がどれほどの苦労をしているのか。


(彰は、あたしが守る)


 そう決意し、吹雪は教室に入った。

「面白い」「続きを読みたい」「作者を応援したい」と思ってくださった方は、ぜひブックマークと5つ星評価をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ