4 わたしは給仕人
ある昼下がり、わたしはお茶屋で給仕をしていた。
「花茶と黒糖漬けおねがいね」
「私にも同じ物を」
目の前には常連の婦人二人。
「かしこまりました」
ここにきて八日目、仕事にも大分慣れてきた。
腑に落ちないことはあるけどね!
衝撃の出会い後、
こちらに三回ほど来て常識や文字を勉強(半ば強制的に)。
文字はこちらの地上の国で一番使われているものを教えてくれた。
漢字に似ているが見たことの無い文字で読めなかった。
今でも読めない文字は多いけど、言葉は通じるから
まぁいいかな〜。
勉強はあの男の部下がみてくれた。恐ろしく無口な少年で質問しても勉強に関係ないことに答えはなかった。あの蝋燭の部屋に机を入れ二人っきりで顔を合わせたていたのに
結局少年の名前は分からなかった。
「柚以ちゃ〜ん」
厨房の奥にあるお茶専用の作業場から琳さんの声。
「これ運んでくれる?終わったら上がってもいいからね」
「はーいわかりました」
琳さんはここ月季楼のことを一通り教えてくれたこともあって
わたしの中で頼りなるお姉さん的位置付けの人。
お世話になってる月季楼はここ牡丹の国の城下町にあり、
国で一、二を争う規模のお茶屋さんらしい。一階には楽器が演奏できる舞台もある。
値段は高め。
昼はお茶がメインで女性のお客様が多いが、夜は一転、男性メインの酒場になる。夜の給仕の女の子は綺麗どころばかりで華やか。初めてここに来たときは食事以上のサービスも提供する店かと思ったほど。
今のところそんな気配はないから気のせいかな。
まぁ夜のことは昼番のわたしにはよく分からないけど〜。
衣装部屋で生地の厚いアオザイちっくな制服を脱いでると
住み込み仲間で寮が同室の桃花がやってきた。
「柚以ちゃん今日も何処か行くの?」
「そのつもり。早くここの土地にも慣れたいしね」
普段着のアジアンちっくな着物を着つつ答える。
「そっか。…柚以ちゃんてえーと、夜、起きてること得意?」
「早起きよりは得意だと思うよ」
徹夜上等!な学生生活送ってましたから。
「本当!?じぁあ私行くね。柚以ちゃん気を付けてね〜!」
今の質問なんだったんだろ?
満面の笑みで手を振る桃花に見送られながら外へ向かった。
夕暮れまであと60分くらいかな。
空に雲はあるが晴れている。
例の件を果たすため独りぼっち、な人を探すがなかなか上手くかない。
独りぼっちてことは孤独な人ってことだと思うけど、
精神的なのか状況的なのかいまいち判断つかない。
そもそもイキナリ孤独な人認定して、話し掛けるのも怪しい人よね。はぁ。
切れ長の目男は
その時にそれなりの事を感じた方がそうです、って
あやふやな事しか言わなかった。しまいには気長に頑張ってください、って薄笑いで言われるし!
あれこれ考えながら歩いてると、表通りを外れていた。
しかも目の前に知らない若い男。
「へぇ〜ねぇちゃんひとりか」
下品な笑いにいやな予感。
「急いでるんでっ…」
言い終わる前に腕を掴まれる。
「離して!」
男は顔から胸元に視線を移す。
こうなったら…
「おい何をしている」
「少しぐらいいいッイテェ!」
腕を掴んでいる男の言葉と同時に深い男の声がした。
が、わたしも同時に男の足の甲を思いっきり踏みつけ逃走体勢に入っていた。
「はぁあ〜結構走ったよね…」男の姿は見当たらないからどうにか撒けたようだ。
深い声の男は気になるが、下品な男の知り合いかもしれないし戻るのは躊躇われる。
結構好みの声だったなー。顔見とけばよかった。
辺りを見渡せばこの通りには見覚えがある。
いつの間にか日が暮れてきてた。
とりあえず帰途につこう。
「クソッ痛てー」
思いっきり踏みつけやがって。
「今の女は知り合いか?」女が走り去った後を見ながら側の男が口を開いた。
「知らねーよ。テメエは誰だよ」
「お前に関係あるか?」
視線変えず発した言葉に妙な威圧感があった。
「…いや、ねぇよ」
返事を聞かずに男は立ち去っていた。
1、2話の誤字を修正しました。




