109.家族もどこか特化してる
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MTはもう無理
「判決を言い渡します、被告お母さんは有罪。情状酌量の余地なし、お父さん監視のもと食事の準備をするように」
「異議なしなの!決して許されない事をしたの!」
「弁護のしようが無い、負けを認める」
「あら~味方がいないわ~でも彩音ちゃんの継承が止まっちゃうわよ~」
「わしがするから問題ない、グダグダ言わずにはよう作るんじゃ」
手術が終わって入院の手続きが終わって帰ってきた私達は、とりあえずお母さんを断罪した
お父さんは手術を受けて全治4か月だったよ、利き腕じゃなかったから3週間くらいで台所に復帰できる見込みだよ
お母さんは必死に反抗を試みていたけど、味方が全くいなくて台所に向かっていった
珍しくお母さんはビクビクしてたけど、台所にいるときのお父さんは怖いからね
言葉数少ないけど優しさを感じるお父さんは、台所という城にいるときは恐ろしい独裁者になるんだよ
妥協のだの字もないからね、私も料理してる時のお父さんには近寄りたくないもん
普段はお母さんのが強いけど、この状況はお父さんのが強いね
「お姉ちゃん、お母さん大丈夫なの?お父さんちょっとでもお台所汚すとはすっごい怖いの」
「剣の鬼ではないけど料理の修羅」
「なんて妥当な評価なんじゃろうな、ワシも正直婿殿怖いからの」
「お、お祖父ちゃんまで恐れさせるなんて・・・」
「ずいぶん寡黙で大人しいのを連れてきたと思うとったんじゃ最初はの。挨拶に来た際に料理が得意だとかぬかし寄ったから作らせたんじゃが、婆さんも唸る腕前じゃったからのぅ」
「お婆ちゃんも料理の修羅だもんね、可愛らしいって言葉が合うような人なのに料理してる時は怖いもん」
「わしゃぁ隠し子かなんかかと本気で思うたものよ」
「あれ?そう言えばお婆ちゃんに来てもらえばよかったんじゃない?」
「婆さんは出かけとるんじゃ、どこだったかのぅ?あれじゃほれ、あっちに行っとる」
「全く分かんないの!危ない所にはいかないと思うけど不安なの」
「思い出すから少し待つんじゃ、ここまで出て来とるんじゃ」
「頑張って思い出して」
「婆さんの人気に嫉妬しそうじゃのぅ・・・思い出したぞ、オリ〇ピックの選手に気を入れた料理を作ってくるとか言っておったわい」
お婆ちゃんどんな繋がりでそんな仕事することになったのよ、ただの主婦のはずなんだけど選手村に料理つくりに行ってるのかぁ
お祖母ちゃんの料理もすっごい美味しいんだよね、お父さんと一緒に作るときは真剣の立ち合いかなって緊張感出るけどさ
そういえば涼音と幸音は皆で混乱してたから気が付けてなかったけど、学校さぼっちゃったよ
ちゃんとそれぞれ連絡させて理由を説明させたよ、明日からはちゃんと学校に行ってもらわないとね
「彩音ちゃん!ちょっとこっち来て手伝って!」
「お母さんの口調が変わるぐらい余裕ないのが怖いよ」
「早く来て冷蔵庫の中見て頂戴」
「は~い今行くよ」
作る物思いつかないから冷蔵庫の中見てって事かと思ったら、野菜とかお肉がいつも目いっぱい入ってる冷蔵庫が空だった
「お母さん一人で食べちゃったの?」
「馬鹿なこと言わないで~お買い物行く日だったみたいね~」
「・・・私が運転するって事?」
「しょうがないでしょ~お母さんは免許証ないし~お祖父ちゃんは返納してるんだものぉ」
私は一応免許持ってるんだけどさ、私と基本いっしょにいたい涼音と幸音が遠慮するんだよ
MTなんだもん家にあるのが、クラッチとか普段運転してない人間には無理だって
ガッコンガッコンってな感じになっちゃうんだよね
事故まで行かないけど、渋滞は出来るんだよね
「さぁ行くわよ彩音ちゃん!たまにはお母さんの料理がおいしいって思い知らせてあげるのよ~!」
「が、頑張ってみる・・・」