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4.彼女の親友と呼ぶに値しなかった女

作者: 永丘麻呂

僕は、コンビニに立ち寄りハクセキレイでもついばめそうな白い錠剤をごみ場へ放った。

それは僕らにとって、もう必要のないものだった。

そして、僕は目的地が書かれた一枚紙をポケットから取り出した。


チャイムを鳴らすと、一人の女性が扉を開けた。

「どなた…? あ、加奈子の…」

僕は無言で頷いた。

「突然申し訳ない。あの時の話をちゃんと聞きたくて。」

女性は、一瞬顔をしかめたものの、僕を家の中へ通してくれた。

一人暮らしの女性の家へ上がり込むというのに、もはや今の僕は何の抵抗も抱かなかった。

家の中は就活に関する書類が散見できた。と言っても女性が就職浪人であることを僕は知っていた。

「手、大丈夫ですか?」

女性は僕の左手を見て言った。

「あ、これ? 大丈夫、気にしないで。」

女性は怪訝な表情で、僕の全身を舐めるように見た。

「早速だけど、加奈子はあの事について君に相談していた。なのに何故、君は」

「そんな言い方はやめて!」

僕の言葉を遮り、女性は声を荒げた。

「知っていて黙認した。この事実に間違いないんだね?」

僕は同じ口調で淡々と聞く。

「あの時は、本当にどうしようもなかったの。怖かったの…」

女はうつ向き、涙混じりの声で言った。

細く白い身体が小刻みに震えている。

「…ほんとにごめんなさい。」

そう言って、女はトイレへ駆け込んだ。

しばらくしても、女は出てこなかった。

出てこられるはずもなかった。

「突然押し掛けてごめんね。僕、もう帰るから。」

僕はそう言い残し、女の家を後にした。


「今さらなんだって言うの?私にどうしろと?あの状況で何ができたって言うの?私はただのバイトだったのよ。男も大勢いたし怖いわよ。逃げるに決まってるじゃない。誰だってそうよ。私は悪くない悪くない悪くない…」

女は一人嘆く。

散々、嘆いたあと、トイレの扉を開く。

もう、あの男はいない。残るのは微かな匂いだけ。


「ちょっと、な…に…これ」


女の視界は真っ暗になった。

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