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Summer Life  作者: ゆっくん
2/9

First Day -The day of the encounter-

ここから長くなりますので、どうぞよろしくお願いします。

8/16 ルビの修正

「あっつ……」

外は暑い。

それも夏の夏休みといえば、一番のピーク時のはずだ。

そんな暑い真夏のコンクリートの上を歩くのは、ある意味砂漠を歩いているようなものだ。

「ったく、罰ゲームにしちゃ荷が重過ぎるっての」

学校で俺――井上ワタル-イノウエワタル-は、仲間の五人と夏休み中の部活をする生徒か補習を受けている生徒、その他教師などしかいない学校に集まり、誰にも使われていない物置部屋と化した教室を勝手に使って遊んでいた。

俺とその仲間の五人はこの高校――時雨高校に入ったときからの友達だ。

幼馴染なんて奴は一人もいない。だが、この高校に入ってからそれぞれの友達になるまでの生い立ちは違うものの、自然と俺と五人は集まって、この三年間過ごしてきた。今では大親友といってもいいぐらいの仲である。たった三年間、されど三年間である。それにしても、同じ町である時雨町に住んでいたというのに高校生になるまで出会わなかったというのはどういうことだろうか? たぶん、みんなの家が見事なまでにバラバラな位置にあるからだろうと俺は思っている。だとしても、小、中学校も一つしかないのに、やはり会ってないのはこれまたどういうことだろうか。

まあ、そんなことはおいといて、以上の説明でわかったかもしれないが、俺たちは俺たちは高校三年生。

中学のときの進路とはまた違い、いろいろと進路について考えなければならない学年なのだが、そんなのは無視して俺たちは遊んでいた。

高校生活最後の夏休み。それも残りは一週間。

進路だとか勉強だとか難しいことを考えるなんて面倒だ、なんてだらけきった考えで俺たちは使われてない教室にあったものを使って遊んでいたのだが、唐突に五人のうちのリーダー格でもある奴――安東一哲-アンドウイッテツ-が罰ゲームを提案した。

罰ゲームはとりあえず勝負がついてから、ということで、シンプルにもババ抜きでビリになったやつが罰ゲームを受けることになった。

そして、その結果がこれである。

つまり、俺は何か一発芸をやるとか次の授業で意味もなく大声で叫ぶ、とかその程度のものだと思っていたのだが、案の定、そんな安易な考えは外れて、学校から一番近くても片道十五分はかかろうというところまでアイスを買いにいくことになったのである。

学校は坂の上にあり、行きは下り道で楽といっちゃ楽なんだが、帰りは上り坂である。

はっきりいって、今の外の気温は半端ではない。

アイスを買って全速力で上り坂を登って十分ぐらいだろうか?

たぶんアイスはほとんどどろどろの状態になっているか、完全に液状と化しているだろう。

「考えろよ、あの馬鹿ども」

ぶつぶつと愚痴をこぼしながら、坂道を下ってゆく。


ミーンミンミンミーーン……。


夏の象徴でもあろう蝉が鳴いている。


ツクツクホーシ、ツクツクホーシ……。


夏の象徴でもあろう蝉が鳴いている。


カナカナカナカナカナカナカナ……。


夏の……象徴でもあろう蝉が……鳴いている。


ミーンミンミンツクツクホーカナカミーナカツクナカナ……。


「うるせええ!!」

そんな俺の怒りが蝉たちの五月蝿い鳴き声に届くはずもなく、蝉は構うことなく鳴き続ける。

ここで俺は一個の説を思いつく。蝉の鳴き声を聴いていると、俺は暑くなるような気がする。

つまり、蝉の声には、少量ではあるが気温をあげる何か特別な音波を出しているのではないだろうか?

その音波が大量の蝉たちにより次第に大きくなり、本当なら三○度のところを、さらに五度上げているのではなかろうか、と。

よって、この音波の名を“ミンミン波-ミンミンハ-”と名づける!

「……くだらねぇ」

自分で説をあげておきながら、悲しくなってきた。

だが、そんな説をあげていた時間も無駄ではなかったのかもしれない。

何も考えずにいけばまだまだ長かったと感覚的に思えるコンビニまでいつの間にか着いていた。


「ありがとうございましたー」

夏バテだろうか。中はクーラーが効いているというのに。

店員の張りのない声が店の中から聞こえる。

俺は目的のアイスを人数分買ってコンビニから出た。

「この世は天国と地獄か」

コンビニの中ではクーラーが効いていて、なんとも快適な空間だった。

もうアイスを選ぶふりをしてずっといてもいいくらいだった。

だが、それではきっと一哲たちが後々過酷な罰ゲームを与えてくるかもしれないからと俺は目的のアイスを選び、買うとそのままコンビニを出た。

もちろんクーラーの効いていた店内と効いてない地球温暖化が進んでいる地球とでは、天と地ほどの差がある。

もう一度店内に入ろうかと考えたが、用もないのに入るのは冷やかし客というものである。

俺はアイスの入ったビニール袋を適当な場所に置いて軽く準備運動を済ますことにした。

今から歩いて十五分相当の上り坂を走って上るのは簡単なことではない。さらに今の暑さではすぐに体力が切れてしまいそうだ。

「よっしゃ! いくか!」

最後に威勢良くそういって、ビニール袋を置いたところを見た。

「あーん」

「………………」

そこには、真っ白いワンピースを着て、麦わら帽子を被った華奢-キャシャ-な少女がいた。

何も悪く思ってないように、ビニール袋からアイスを取り出してうまそうに食べている。

「ん〜、冷たくておいしい〜」

「おい、ちょっと」

「あ、こっちはまた違うのかな?」

「ちょっと」

「あ、これもおいしい〜」

「おい!!」

「!!」

少女は喉を突然の声に驚いたのか、木製のスプーンに乗っていたグレープ味のアイスを熱いコンクリートの上に落とした。

「あ、落ちちゃった……」

「落ちちゃった、じゃねえよ」

オーバーなリアクションで落ち込む少女。

コンクリートの上で溶けてゆくアイスを見つめて落ち込んでいる。

よく見たところ、少女は“少女”というには、少し身体が大きいような気がした。

「君、高校生?」

「え? わたし?」

「そう」

「えっと……」

しばらくの間沈黙の時が流れる。

蝉の鳴き声だけがやけに響いていた。

「……たぶん、高校生?」

「たぶんって何だよ? 今は春でもないから、そんな曖昧な時期でもないだろ?」

「んー。それじゃ、高校生」

「それじゃって……あぁ、もういい。それよりアイス。どうしてくれんだよ」

俺は本題を思い出して、少女を少し睨むようにして言う。

「あいす? それってなに?」

「なにって、さっきお前が食ってたもんだよ。そんぐらいわかんだろ」

「へぇ〜、あの冷たくて甘くて、口の中で溶けるような食べ物って、アイスっていうんだ〜」

駄目なグルメレポーターのような感想を言いながら、心底納得したようにうなずきながら納得する少女。

まさかアイスを知らないわけではないだろう。

だが、それが本当か嘘なのか少女は本当に始めて知った言葉のようにまだビニール袋に入っているアイスを見ながら言う。

「ねえ」

「ん?」

「もう一個食べていい?」

「駄目に決まってんだろ!!」

怒鳴ると少女はうるうると目をを涙ぐませ、俺を見つめてくる。

「うっ」

どうにもそういう目になれない俺は目をそらす。

「ささっ。うるうる」

それを追って俺の目の前に涙ぐんだ瞳を向ける。

「ぐっ」

また目を逸らす。

「ささっ。うるうる」

また目の前に少女が現れる。

「んんっ」

目を逸らす。

「ささっ。うるうる」

少女が現れる。

「っ!」

一度違う方向に顔を背けたと見せかけて、また違う方向に顔を背ける。

「さっ、ささっ。うるうる」

だがそんなフェイントにも引っかからず、少女は俺の目の前に現れる。

「……はぁ」

俺はため息を吐き、自分がいつの間にか汗でびっしょりになっていることに気づいた。

こんな暑い中、少女を相手にしていたのでは、どうやら俺の身体がもたないらしい。

「もう食っていいよ。今からじゃ間に合わないし」

「ありがとう! お兄ちゃん!」

「!」

お兄ちゃん、と呼ばれて少し赤面する。

さっきまでの涙目は何処へ行ったのか、少女は早速ビニール袋の中にあったストロベリー味のカップアイスを木製のスプーンを使って食べ始めていた。

そこは日陰でもあったので、俺は休憩でもしようと思って少女の横に腰掛けた。

「そういえば聞き忘れてたけど、君の名前は?」

「知らない人には教えられません」

どこか非常識な少女が常識的になって、俺は拳が飛びそうになるのを堪える。

「アイス食わしてやってるだろ。それにいまさら知らない人とか言うな」

「アイスで買収したつもりですか!」

「殴るぞ、お前」

「うっ! で、でも、人の名前を聞く前に自分から名乗るのが礼儀だと思います!」

「変なところに礼儀あるな。えっと、俺の名前は井上ワタルだ」

「いのうえわたる?」

「そうだ。で、お前の名前は?」

「えっと、わたしの名前はね」

そこで詰まる。そして考え始めた。

しばらく待ってみたが、なかなか少女の口から言葉は発されない。

「お前、自分の学年もわからなけりゃ名前もわかんねえのか?」

少女は俺の言葉が聞こえていないのか、真剣に考え込んでいる。

日陰で話しているといっても、真夏の気温は日陰に入っただけでは防ぎきれない。

もうそろそろこの暑さと今までの苛立ちに我慢しきれなくなってきた。

「そうだ! 夏樹瀬美-ナツキセミ-! わたしの名前は夏樹瀬美っていうの」

もうそろそろ我慢の臨界点を超えようとしたところで答えが出た。

「夏樹瀬美? 珍しい名前だな」

それを褒め言葉として受け取ったのか、少女――夏樹瀬美は、えっへん、とでも言わんばかりに胸を張る。

「この町じゃ聞かねえ名前だけど、最近引っ越してでもきたのか?」

俺の生まれ育ったこの町――時雨町は意外と小さい。

全部見るのでも一日あれば足りるぐらいだ。

それほどにまで都会というわけでも田舎というわけでもないこの町の人たちの名前ぐらい、十八年間近く暮らしてりゃ、覚えようとしなくても覚えてしまえる。

そして、俺の頭の中にあるこの時雨町の町人名簿には夏樹瀬美。夏樹などという町人は存在しなかった。

「えっと……うん、そうだよ」

夏樹は一瞬戸惑い困るような顔を見せたが、それは俺の杞憂だろう。

いくら会って間もないとはいえ、そんな顔を見たら少し心配してしまう。

少しの間沈黙の時が流れる。

その自己紹介をし終えた後に話すことは、少なくとも俺にはなかった。

夏樹はうまそうに学校まで一哲たちに届けるはずだったカップアイスを食べている。

その顔は本当にうれしそうな顔で、見ていてこっちまでうれしくなりそうだった。

「んじゃ、このアイスの分はいつか絶対に払ってもらうからな」

俺は立ち上がり、ズボンについていた砂を軽く払い落としながら言う。

「ん? なんのこと?」

一瞬さっきまでのうれしそうな顔を見ていてうれしくなりそうだった自分に嫌気が差した。

「だから、今お前がうまそうに食ってるアイスの分だよ」

「え、なにか払わなきゃいけないの!?」

「当たり前だろ! だいたい、それは俺の金で買ったんじゃねえんだから!」

真剣に驚いている夏樹はおろおろとし始めた。

普通に金を返してくれればいいのだが、何をおろおろしているのだろうか?

「そ、それは、か、体で……!」

「違うわ! 何を変な方向に話を進めてんだよ」

それを聞いてほっとしたのか、夏樹は胸をなでおろす。

「普通に金で返してくれればいいんだよ。できるなら今すぐ」

「うーん……今すぐには返せないかな。わたし、お金持ってないから」

「つまり食い逃げする気だったのか」

「ち、違うよ! ただ、おいしそうでひんやりしたものがビニール袋に入ってたから、私は神様からの贈り物だと思って」

「言い訳はいい。とにかく、今日はいいから明日にでも持って来いよ? じゃねえと俺がどうなるか」

一哲は金にうるさい。

それ以外のメンバーもそりゃ金にうるさいといったらうるさいのだが、その中でも一哲は一円たりともなくしたら嘆く。

もちろん一円貸したとしても、絶対に返してくれないとそれなりの代償がやってくる。

それなりの代償というのは、俗に言う利子をつけて金を返してもらう、というものだ。

俺も一度金を百円ほど借りて、一時間につき百円増えるという無茶なことで五百円を返すはめになった。

なんだかんだいえば許してくれる、なんてことは一哲にとってありえないことだ。

「んー。それじゃ明日返すよ」

明日にはどんぐらいの金を払うことになっているのだろうか? そんなことを考えていた俺だが。

「わかった。それじゃ明日絶対に返せよ?」

あっさりと俺は夏樹に対して、そう言った。

「うん!」

「じゃ、明日の昼にここに来い」

夏樹は大きくうなずくと立ち上がって俺の前に出る。

「じゃあね、ワタルおにいちゃん!」

そう元気に言って、夏樹はぎらぎらと太陽のぎらつくコンクリートの上を走っていった。

果たして、あの少女はこれから何処へ行くのだろう? なんてことを思いながら、俺も夏樹とは違う方向、学校の方向へ、とりあえず言い訳をするための証拠品としてビニール袋を持って行くことにした。

「無駄だろうけどな」

ため息をついて、俺は坂道を走って上ってゆく必要もなくなったから歩いてゆくことにした。



「と、言うわけだ」

「………………」

学校の親友五人の集まる教室に戻り、俺は事情を説明した。ちなみに、おにいちゃんと呼ばれたことは伏せておいた。

だが、やっぱり無駄だったらしい。みんなの目は白々しい。

「で、アイスはあんたが食べたと?」

少し苛立ちを隠せずにいる女子――桶上ミナツ-オケガミミナツ-が俺に問い詰める。

「いや、だから夏樹っていう子が」

「だから、そんな子知らないっていってるでしょ! 最近引っ越してきたっていう人も知らないし、どうせあんたが食べて、帰るまでに時間がかかったのはその口実を考えるためなんでしょ?」

「あのな、よく考えてみろ。一人で六人分のアイスなんて食えると思ってんのかよ!」

「だったら、その夏樹って子も一人で食べれるわけないじゃない! しかも女の子なんでしょ? だったらなおさらよ」

「んなのわかんねえだろ! 世界は広いんだぞ!?」

「まま、そういう喧嘩はいいから。ワタルも正直なこと話せって」

俺とミナツの口喧嘩の間に入ったのは、何でも物事をポジティブに考える前向きな野郎――木谷光介-キタニコウスケ-である。

「お前も信じてないのかよ」

「いや、俺もよくあそこに運動代わりに行ったりするからさ。そんな女の子見たことないし」

ちなみに、光介の運動とはパシらされることだ。パシらせられても自分のための運動やらなんやらと、なんでもポジティブに考えている。ある意味恐ろしいぐらいの前向き精神だ。

「つっても、最近越してきたらしいから、まだ知らないかもしれないだろ?」

「でも、みんなこの町にバラバラに住んでるんだ。どこかに越してきたやつがいるなら、わかるようなもんじゃないか?」

確かに、と納得させられるようなことを言ったのは、美形でクールな顔をしている男子――天峰透-アマミネトオル-である。

「それよりワタル」

「ん?」

「そんなに僕にアイスを買いたくなかったのか?」

「いや、違うから」

一つ忘れていた。

透は極度なネガティブ野郎だ。どんな些細なことでも後ろ向きに考えてしまう。

俺の話を信じていないのと同時に、自分のぶんも買ってきてといってしまったばかりに俺がそれを嫌だと思い、みんなの分も買わなかった、というようなネガティブ理論でも立てているのだろう。

「嘘なんて慰めはいい! 真実を教えてくれ!」

「だから違うっつってんだろ!」

「そうか……ならいいのだが。ところで、ワタルの話は僕もあまり信じられないぞ」

「結局そうなるのかよ」

ため息混じりに俺は言う。

「それにしても、人の買ったものを食べるなんて、あまり礼儀がなってない子ですね。その子は」

やけに一人だけ落ち着いた口調で喋る女子――小野川こずえ-オノガワコズエ-が少し怒ったような声で言った。

「ワタルくんも、もうちょっと叱りつけてやらないと駄目ですよ。そういうのは、一回身に着くとなかなか離れないんですから」

「は、はい」

なんだか親か教師にでも説教されているような気分だが、あまり悪い気はしない。

こずえは元からそういうことにはうるさい。

普段は読書をしていたり、室内で遊ぶときはみんなと楽しそうに笑って遊ぶ女子なのだが、どうも細かいところにうるさいところもある。

学生が一回はかっこいいと思ってやったことであろうシャツ出しも、ちゃんとした理由がなければ出してはいけないのである。

友達の前でもそんなことを律儀に守るというのは、それなりの骨が折れるのだが、ちゃんとした理由というのは、今の季節で言うと、暑いから、というようなことだけで許してくれる。

どうもわかり辛い。

「………………」

一人だけさっきから黙りこくっている人物が一人いる。

一哲だ。大体黙っている理由はわかる。金のことだろう。

アイスは俺の金ではなく、みんなのそれぞれの金で買ってきたのだからな。

これが嫌だったから、今日中に夏樹には金を返して欲しかったのだが……。

「とにかくだ」

一哲が口を開く。俺はとりあえず過酷な利子がつかないことを祈る。

「次に夏樹という子に会ったときに、その金を返してもらえ。アイス六人分ともなると相当な額になるだろうがな」

「……えっと、それだけでいいのか?」

意外と優しかった言葉に、俺は一哲に聞いてしまう。

「いいんだ。なに、三年間とはいえ、お前は嘘をつくことはあまりないからな。嘘をついていたなら、目を見ればわかるさ」

一哲は笑ってそう言った。

あまりリーダーらしきことはしてないが、なんだかんだいって一哲は俺を含めたこの親友六人の中のリーダーである。

そういうことは、一哲にはお見通しというわけだ。

「んじゃ、明日会う約束したからそのときに返してもらっとく」

「わかった」

一哲は頷くと、みんなのほうを見て了承を得る。

みんなは嘘だとまだ思ってるみたいだが、どうやら許してくれるらしい。

「なーんか納得いかないなー」

「まあまあ、ミナちゃんもいいじゃん。明日ワタルが払ってくれるんだからさ」

「うー……」

訝しげな顔をしながら、光介になだめられるミナツ。

「そうだな。明日返してくれよ? ワタル。じゃないと俺の中の考えが納まらないんだ」

たぶん未だにネガティブな考えが残っているんだろう透が、俺を見ながら言う。

「もしもその話が本当だったなら、ちゃんと言っといてくださいね、ワタルくん」

「わかったわかった」

「わかったは一回でいいですよ」

「わかった」

どうも説教くさいが、憎めない。

こずえは、それを聞くと笑って返してくれた。笑顔は可愛い女子である。

将来、しゅうとめ姑のようにうるさくならないことを祈ろう。

「それでは、ゲーム再開とするか!」

一哲の一言にみんなが頷く。

「いまさらだが、高校生活の夏休み、最後の一週間だ! 今は存分に遊ぼう!」

みんなが「おー!」と威勢良く言って、今度はババ抜き以外のことが始められることにした。


そんな、高校生活の夏休み、最後の一週間は始まった。

時間的にいったものではない。俺とあの夏樹という少女が出会ってから、始まったのだ。

夏の短い物語が。


一気に投稿しますので、時間があるときに続きを読んで下されればうれしいです。

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