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出発前夜

 王城に到着し、リーヴァは馬車を降りた。隣には父ガウェインが付き添っている。


「はあ……」

「まあ、お前の気持ちも分かる。ルージズの奴は寮で謹慎中だから会うことはない。安心しなさい。」

「分かっています、お父様。」


リーヴァがここを訪れるのは王子との婚約やそれに関係したこと以外ではまだ2回目である(国王たちを蘇らせるために1度訪れた)。故に嫌なことしか思い出せないのだ。

 ルージズは学園寮で謹慎中である。婚約者がいながら他の女性に手を出そうとしたことや、平民出身で政治に疎いアリスを王女にしようとことが問題となったのだ。



 長い廊下を抜け、リーヴァとガウェインは国王の待つ部屋に到着した。部屋に入ると、中には国王以外にはほとんど誰もいなかった。


「久しいな、リーヴァ。ガウェインも元気そうだな。」

「お久しぶりです、陛下。リーヴァ・マグリットにございます。」

「同じく、ガウェイン・マグリット、ただいま参上しました。それで陛下、この度はリーヴァにどういったご用件が?」

「うむ、座りなさい。順に話そう。」


国王が話し出す。


「まずリーヴァよ、息子の件はすまなかったな。今回の件はあいつの行動にも問題があった。」

「とんでもございません。結局は私の愚行が問題だったのです。それに、今はアリスも幸せそうにしています。私が気にするようなことはありません。」

「そうか、あの平民の少女には迷惑をかけた。彼女が救われたのはお主のおかげた。礼を言う。」

「とんでもございません。」

「うむ、では今回の用件について話そう。お主の復活魔法についてだ。」


こうだろうとはリーヴァも予測していた。自分の力はそれだけイレギュラーだ。そして大体何を命じられるかも予想はついている。この国人間を全員生き返らせろ、だろう。


「諸国を巡り、全ての国の住人を生き返らせてほしい。」

「……え?へ、陛下、それはつまり世界中を回って全ての人類を生き返らせるということですか?」

「いかにも。無理難題とは思うが、成し遂げてほしい。」

「お、お待ちください!ということは、このような事態になっているのはルードス王国だけではないということですか⁉︎」

「そうだ。ガウェインよ、やはり最終兵器の件は話していなかったのか?」

「あのような国家機密の存在を自宅でペラペラ話せるものですか。陛下の口から直接説明してください。」

「うむ、その通りだな。リーヴァよ、今から余が話すことをよく聞いてほしい。」



 そして国王はリーヴァに、最終兵器のことを包み隠さず話した。そして、調査の結果と王都に滞在していたおかげで生き返った学者の考察から、最終兵器は全人類を滅ぼしたと結論づけられた。



「……という訳だ。ガウェインとも話し合った結果、今回の件は完全に我が国の責任だ。他国を生き返らせないというのは無理があるが、かといって全てが戻ったとき、我らが受けるのは恐らく称賛でなく非難だろう。」

「そんな……」


リーヴァとしては、少しでもこの国の役に立てればと思っていた。しかし自分の魔法で全てを取り戻したとしてもこの国に明るい未来はない。この事実が彼女に覚えさせた無力感は計り知れない。


「だがこの国が犯した罪は精算しなければならない。リーヴァ・マグリットよ、この罪深い余に力を貸してくれ。」

「……分かりました。謹んでお受けいたします。」


こうしてリーヴァは世界中を巡ってその力を使うこととなった。




2日後の夜

明日の朝、リーヴァは出発する。どれくらい長い旅となるか分からない。もしかしたらこの屋敷ともこれでお別れかもしれない。


「もっと、居たかったわね。」


アリスは隣の部屋で寝ている。この旅のことは必要最低限の人間しか知らない。マグリット家に仕える身とはいえ平民の彼女にこのことを知らせるわけにはいかないので、とある用事で暫く留守にするとだけつたえてある。


「ごめんなさいアリス、もう会えないかもしれないわ。」


そんなことをリーヴァが呟いていたとき、ドアがノックされた。


「お嬢様、まだ起きていらっしゃいますか?」

「……?起きてるわよ。どうしたの?」

「失礼します。」


そこにいたのはアーテだった。

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