終末世界(?)の日常
アリスがリーヴァと同棲することになってから1週間後。
「さて、今日はこの辺ね。」
「うん、他の地区は貧民街も含めて済んでるからここで最後だよ。頑張って、リーヴァ!」
「うん。まかせて。」
リーヴァは意識を集中させ、復活魔法を行使する。王都の一角を彼女の魔法の光が包み込み、住人たちが蘇っていく。
「あれ、俺は一体何を?」
「私…確か買い物に行こうとして、」
「ああっ!急がねーと100億ゴールドの商談が!」
「ふぅ、終わったわね。」
「うん、これで王都の住人みんな生き返ったよ!リーヴァ、お疲れ様!」
リーヴァとアリスは屋敷へと戻って行った。
あれから1週間、リーヴァは王都の住人を生き返らせまくっていた。だいたい1回で全体の1〜2割程が復活していた。これほど短期間で王都が蘇っているのも、リーヴァの底無しの魔力故のことである。
「お父様、ただいま戻りました。」
「うむ、今日はどうだった?」
「はい、残りの地区の住人たちも無事蘇らせることができました。これで王都の住人全員復活しました。」
「よくやったぞ我が娘よ。アリスも付き添いご苦労だったな。」
「いえ、リーヴァのためですから。」
アリスは道案内としてリーヴァに同行していた。貴族であるリーヴァは下町に関しては全く土地勘がないのだ。
「今日は午後から家庭教師の先生がいらっしゃるからそれまではゆっくりしていなさい。」
「分かりました。失礼します。」
「失礼します。」
自室に戻り、流石に疲れたのでベッドに横たわったリーヴァだったが、
「…にしても、何であなたもいるの?」
「リーヴァと一緒がいい。」
何故か隣に寝そべり抱きつくアリスがいた。
あの後、アリスがリーヴァと一緒に住むことになったので、まず彼女は両親を説得、彼らは快く受け入れた。次にリーヴァが向かったのはアリスが王立学園に入学するまで暮らしていた家である。アリスの母親に事情を説明するためだ。
そして、リーヴァの復活魔法でアリスの母を生き返らせ、リーヴァの元で魔法を勉強させたいという旨を伝えた(但し王子からのプロポーズを断った件や自殺の件は流石に伏せている)。アリスの母も、名のある公爵家が娘を気に入ったことをいたく喜んでいた。
ちなみに、アリスの父は随分前に逃げているらしく、アリスの母は女手一つでアリスを育ててきた。そんな母を目の前で助けてくれたことが、アリスのリーヴァに対する好感度をさらに底上げしたのだが、リーヴァはその事を知らない。
かくしてマグリット公爵家のもとで暮らし始めたアリスには自分の部屋も与えられたのだが、何故か彼女は事あるごとにリーヴァの元へやって来るようになり、一緒に寝ることも少なくなかった。
リーヴァも少し抵抗感があったが、あれほど精神的にボロボロだったアリスがあまりに嬉しそうにしているので次第にまあいいかと考えるようになっていた。
「リーヴァってさ、髪綺麗だよね。」
「……!そ、そんなことないよ!アリスだって綺麗な金髪でさ、私なんか地味な黒髪だし。」
「でもリーヴァみたいにさらさらのストレートじゃないし。それにリーヴァの方が可愛いし。」
「可愛いって、アリスの方が可愛いよ!」
「んふふ、リーヴァ、ありがと」
「どうしたの?急に。」
「リーヴァがいてくれたから、私今幸せなんだよ。」
「アリス……」
「リーヴァ……」
その時、ドアをノックする音が聞こえる。
「お嬢様、アリス様、失礼します。」
入って来たのはアーテであった。
「あら、アーテ、どうしたの?」
極めて無垢な目で尋ねるリーヴァ。
「家庭教師の先生がいらっしゃいました。中庭で魔法の実践練習をなさるとのことです。」
「そう、ありがとね、すぐ行くわ。」
「かしこまりました。ああ、それとアリス。」
「えっと、何?」
「ここでの生活には慣れたようですね。」
「うん、だってリーヴァ優しいんだもん。」
「もちろんです。お嬢様ですから。」
「私たちももうすっかり仲良しだよ。」
「左様ですか。世話係としてずーっとお嬢様のお側に仕えてきた身として、嬉しい限りです。」
「ありがと、私も毎日ずーっとリーヴァと一緒にいられてすっごく幸せだよ。」
「おやおや、左様ですか。ふふふふふ。」
「うふふふふ。」
(アーテとアリスもすっかり仲良しになってる。嬉しいわ。)
2人の間で飛び交っている火花が見えていないリーヴァであった。
中庭にて、少し離れた場所にある的へ目掛けて火の玉が飛んでいき、寸分の狂いも無く命中する。
「お見事ですわ、アリス様。王立学園にての鍛錬もあってのことと存じますが、それでもこれほど早く炎を操るようになるとは。しばらくは火属性魔法について教えるつもりでしたが、水属性魔法の授業も考えておきましょう。」
「はい、お願いします!」
アリスは魔法を順調に身につけていた。持って生まれた才能に加えて、転生者ならではの魔法への好奇心が彼女の能力を驚くほどの勢いで高めていた。
「すごいじゃないアリス!貴族でもここまでできる人間なんて滅多にいないわ!」
「うん、リーヴァに褒めてもらえたらもっと頑張れる気がする!」
「リーヴァ様、近いうちに試験を実施しますので、くれぐれも勉強を怠ることのありまんせんように。」
「まかせて!学園にいた頃から座学は頑張ってたから。」
リーヴァは基本的にアリスの授業風景を見学しつつ、座学の勉強という形になっていた、
復活魔法という他に類を見ない魔法の使い手であるリーヴァに実践で教えることはまず無理なので、学力に特化したカリキュラムとなったのだ。
そうしてほのぼのとした授業をこなしたリーヴァはガウェインに呼び出された。
「お父様、何かご用でしょうか?」
「ああ、よく来てくれた。実は国王陛下からお前に呼び出しがあってだな。」
「陛下が、私に⁉︎」
「そうだ。残念ながらここでは話せない内容故、詳細については明日、陛下から直接伺ってくれ。」
「か、かしこまりました。」
こうして、リーヴァは国王に謁見することとなった。そしてこれが、リーヴァたちの新たな物語の始まりでもあった。
目指せ日常回で書きました。
リーヴァは無自覚です。