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笑顔で決心

「ねぇ、俺の話をしても良い?」


 今度は俺が沈黙を破る。突拍子のない話題に、葛西さんは戸惑いながら、


「東雲さんの話……?」と聞き返した。


「そう。俺のことをもっと知ってもらいたいから」


「……聞きます」


 少しの間を置いて、葛西さんが頷く。俺は息を大きく吸い込んで、語り始めた。


 俺の人生は野球道だった。だから俺は、俺と野球についての話をした。俺の野球を始めた時の頃。小学校の頃の、町内会の野球部での思い出、中学生の頃のシニアチームでの思い出、そして高校での思い出。それらを順々に話した。上手くいかなかったこと。上手くいったこと。苦痛。苦労。歓喜。達成。包み隠さずに全部話した。俺はどっちかと言うと話の上手くないタイプだが、それでも、葛西さんは相槌を打ちながら真剣に聴いてくれた。時に笑って、時に悔しそうにして、俺の話を盛り上げてくれた。


 気が付けば、窓から日が差していた。思ったより長々と喋ってしまっていたらしい。うっすらと明るくなっている空を見上げて、俺は照れ笑いした。


「おしまい」


 話を締めると、葛西さんが拍手をしてくれる。


「すごいですね! もう少しでプロに……! それで、甲子園に出られるかという決勝戦の前日から私の身体に?」


「そうそう。だから、自分の身体に帰ったら、すぐに決勝戦だな」


 すると俺はタイムスリップもしていることになるのか。と改めて思った。


「じゃあ、次は葛西さんの話だね」


「え、私……?」


「うん、俺のこと話したんだし、次は葛西さんの番だよ」


 言うと、葛西さんは唇を引き絞った。何かを決心するような、そんな表情に思えた。


「知ってるんですか? その……私の、」


 言いかけて、言葉を詰まらせる葛西さん。


「知ってる」俺は短く答える。


 葛西さんは息を呑んだ。そうして、彼女は俯き加減になって、目を閉じた。突然目の前が真っ暗になって俺は驚いたが、葛西さんの話してくれるのをゆっくりと待つことにした。


「……私は、学校でいじめに遭っています」


 葛西さんが目を開く。ぽつり、ぽつりと語り始める。俺は彼女から紡がれる言葉を一言も逃してなるものかと、真剣になって聴いた。


 中学校の時、些細なきっかけで同級生の女子からいじめを受け始めたこと。それを苦にして不登校になったこと。そして、不登校ながらも頑張って入学した高校に、またいじめの加害者がいたこと。葛西さんは時々、言葉を探すような、自分の過去の重みに耐えかねるような、そんな風に口をつぐみながらも最後まで話してくれた。


 話し終えると、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。葛西さんの心の痛みが俺にも伝わってきているのだ。そう思い、俺も深い感傷に陥る。


 なんて不憫な子だろう。彼女自身は何一つとして悪くないのに、とてつもない不幸が彼女に降りかかる。世の中は理不尽なものだと、誰かが得意げに言いそうだが、彼女のそれはあまりにもひどい不合理だ。


「私……もう学校行きません」


 目が熱くなってくる。雫がテーブルの上に落ちた。一つ、また一つ。降り始めの雨のような小さな水滴が、テーブルの上に重なっていく。


「どうして?」


「……だって私は普通の学校生活を送る資格がないから。神様がそう決めたんです、きっと」


 そう言って、葛西さんは嗚咽を漏らしながら机に突っ伏した。涙が止まらない。胸が苦しい。彼女の感情の全てが俺の心へと伝染するようだった。なんで、私だけ。なんで、幸せになれない。恥ずかしい。東雲さんが見ているのに。彼女の心の声が俺の心に流れ込んでくる。俺も泣きそうだった。なんでこの子が、こんなに辛い思いをしなくちゃならないんだと本気で落ち込んだ。でも、俺まで泣いてしまうわけにはいかないので、ここはぐっと堪える。


 俺は口を開いて、葛西さんを励まそうとした、しかし、俺の脳が命令を出しても身体が反応してくれない。どんなに強く思っても、身体が動かない。そこで俺は気づいた。今は葛西さんがずっと嗚咽を漏らしているから、俺が口を動かそうとしても彼女の、いわば身体の操作権が優先されて、俺の脳の命令が却下されているのだ。


 そうなれば俺は、黙って見ているしかなかった。目の前で俺より二つ歳下の女の子が泣いているのに、と自分の無力さを呪いながら、彼女の気持ちが落ち着くのを待つしかなかった。


 俺がここにいる理由。それは葛西さんを救うことだと、昨日思った。今日、俺が葛西さんをいじめている犯人にガツンと言ってやって、場合によっては鉄拳制裁を加えて、いじめを抑制することは可能だ。しかし、それが根本的な解決になるとは限らないし、相手を逆上させる可能性もある。いや、それよりもなによりも、俺が解決してしまって良いのか? これは葛西さんの人生なのに。部外者の俺が、葛西さんの身体を借りて、この子の運命を大きく変えるような行動をして良いのか?


 俺は葛西さんが泣き続けている間、一生懸命に考え続けた。昨日とは状況が違うんだ。今、ここには葛西さん本人がいる。だとすれば、俺の本当の使命は————。


「ごめんなさい。取り乱して」


 顔を上げて目に溜まった雫を拭いながら、葛西さんは俺に謝った。


「大丈夫だよ。……あのさ、学校行ってみない?」


「い……嫌です!」


 俺の誘いに、葛西さんは激しい拒絶反応を見せた。よほどのトラウマなんだろうと、同情する。


 がちゃり。突然にドアが開かれる。葛西さんのお母さんがリビングへと入ってきた。


「あ、陽菜乃。おはよう」


「……おはよう」


 挨拶を交わすと、葛西さんはテーブルにあったコップを持ち上げてキッチンへと歩いた。慣れた手つきでコップを洗うと、次に、葛西さんは料理を始める。これもまた手慣れたもので、テキパキと、五分も経たないうちにスクランブルエッグと食パンを用意してみせた。


「はい、朝ごはん」


「ありがとう」


 葛西さんが皿に盛られたスクランブルエッグと食パンを、テーブルに座っている母親に差し出す。たぶん、朝ごはんはいつも葛西さんが作っているのだろう。二人の様子を見て、俺はそう感じた。 


 泣き腫らした目を隠すようにしながら、葛西さんは部屋を出て行こうとする。その背中に、葛西さんのお母さんは声を掛けてきた。


「陽菜乃! 今日は学校行くの?」


「……行かない。調子、悪いから」


 葛西さんは即答する。すると、意外にも、葛西さんのお母さんはそれ以上、何も言ってこなかった。「そう」とだけ、とても寂しそうな声音で、それだけを発した。


 リビングから出て行くと、葛西さんは一目散に自室へと戻る。


「本当に、行かないの?」


 自室に戻ってすぐ、俺は葛西さんにもう一度問うた。


「行かないですって……!」


 葛西さんが声量を上げる。少し苛立ちを覚えているような声に、俺は一瞬怯んだが、決心して、再度口を開いた。


「なんで行かないの?」


「さっきも言ったじゃないですか。どうせまた、いじめられるんです。もう耐えられないんです……!」


「でも、そいつらは悠々と登校して、葛西さんは登校できなくて……そんなの悔しいだろ?」


「良いんです!」


 半ば叫ぶようにそう言って、葛西さんはベッドに登った。布団を頭から被って目を瞑ってしまう。外界をシャットアウトするように。


「葛西さんの大切な人生が、そいつらのせいでめちゃくちゃにされてるんだぞ」


「そんなもんです、私の人生なんて。別に良いんです。この部屋の中で一生過ごして、朽ち果てるんです」


「本心で言ってる?」


 葛西さんは答えない。けれど、俺は止まらないで喋り続ける。


「そんな悲しいこと言うなよ。そんな諦めたこと言うなよ……! 高校に行って、やり直したいって言ってじゃないか! 中学校で楽しめなかった分、高校では楽しい生活を送るんだって! さっき俺に話してくれたよな? その気持ちを諦めちゃっていいのかよ!?」


 言いながら、感情的になり過ぎて。今度は俺の涙がこぼれ始める。葛西さん瞑っていた目を開いた。確認するように、両手で両目の雫を触る。


「な、泣いてるんですか……?」


「……ごめん。でも、葛西さんがかわいそうで」


 葛西さんは何か言いたげに口をぱくぱくさせて、それからまた口を閉じる。俺も、これ以上は何も言えなかった。学校に行って欲しいけど、それを強要するのは違う気がする。無理矢理身体を動かして登校させるなんてもってのほかだ。俺の使命は、葛西さんを勇気付けること。彼女の運命は彼女自身で切り開くべきなんだ。


 突然に、一思いに、葛西さんは自分の被っていた布団を取っ払った。部屋のライトが眩しく目に突き刺さる。


「もう一回だけ、行きます」


 葛西さんが立ち上がった。覚悟を決めたような強かな声音が印象的だった。


「お、俺が泣いたから……?」


「あはは……それもありますけど、やっぱり、悔しいんです。東雲さんの言った通り」


 葛西さんは小さく笑った。なんか、泣き落としみたいになっちゃったかな、と思いつつ、それでも、葛西さんに登校する勇気が出たのなら、なんでも良いかと思い直す、


「それに、今日は大切な日ですから」


「そうなの?」


「はい……! 部活動の、仮入部が始まる日です」


 明るめな口調で葛西さんが言う。目元が笑っている気がした。


「何か、入りたい部活あるの?」


 単純な興味から、俺は訊いてみた。運動部でも文化部でも、あの学校は生徒数も多いから色んな部活が充実していそうだ。


「野球部です」


「ええええ!?」


 あまりにも予想外なその名前に、俺は食い気味で叫んだ。


「待って待って。俺に気を遣ってない? 自分のやりたい部活入りなよ!」


「違いますよ。私は本当に野球をしたいんです! 東雲さんの話を聴いて、野球って面白そうだなって思ったし、あと、実は昨日もちょっとやったんですよ。優衣ちゃんに『リベンジだー』って言われて。勝負しました」


 そういえば、一昨日の夜に、優衣ともう一打席勝負する約束をしたんだった。まさか翌日は俺の意識がどこかに消えて、葛西さんの意識が帰ってくるなんて思ってもみなかったから。


「その勝負が面白かったってこと?」


 もしそれなら、偶然だけれど、野球の面白さを知ってもらえて良かった。


「なわけないじゃないですか。優衣ちゃんの球、すごい速くて怖くて……もうアレはやりたくないです」


 それな。素人に120㎞の速球を投げてくるバカ女。誰かあいつを止めてくれ。


「でも、ちょっと野球に興味が出ました。全然やったことないけれど。優衣ちゃんもいるし、東雲さんにも教えてもらいたいです」


「教える! 全力で教えるよ」


 熱っぽくなって答える俺を、葛西さんは「お手やらかに」と笑った。その笑い声は未来への希望に満ちている気がした。俺は、この笑顔を守れるのだろうか。


「そういえば、一つだけごめんなさい。東雲さんが優衣ちゃんから勝ち取ったアイス、私が食べちゃいました」

 思い出したように葛西さんはそう言った。ごめんなさい、と言われたからドキッとしたが、なんだそんなことか。確かにアイスは食べたかったが、他でもない、葛西さんが食べたのなら、俺が何かを言う筋合いはないだろう。むしろ嬉しいくらいだ。


「いいよ、いいよ。美味しかった?」


「美味しかったです! あ、そろそろ着替えないと」


 確かに、もうそろそろ学校に行く準備をしないとまずいかもしれない。葛西さんが部屋の時計を一瞥する。時刻は七時半を回ったところだった。


 着替え、という単語を聞いて、ふと俺も謝らないといけないことがあるのを思い出した。けれど、これはとても難儀な内容であると言えるだろう。許してもらえないかもしれない。であれば、策を講じなければならない。


「やっぱ許せないわ! アイス食べたこと!」


 なるべく不機嫌な声を装って言ってみる。すると葛西さんは俺が本当に怒っていると思ったのか、急に気の変わったような俺に異常を感じたのか、慌てた様子になった。


「す、すみません……」


「……まぁ、いいけど。俺も謝らなきゃならないことあるし」


 声のトーンを落ち着かせながら、俺は切り出した。これぞ巧みな話術。この会話の流れで俺が謝れば事実上の交換条件が成立し、したがって、俺が許される確率が高くなるのだ。


「なんですか?」


「ええと……葛西さんの、お風呂で見ちゃった」


 その瞬間、空気が固まる。呼吸すらも躊躇われる凍結した空気。神様に祈るような気持ちで、俺は葛西さんの様子を伺った。


「な、何をですか……?」


 ぎりりと、葛西さんが奥歯を噛み締めた。その顔は——もちろん、俺が直接に見ることはできないのだが——静かな怒りを感じさせるような、そんな顔つきになっていると感じられた。


「ごめんなさい! だって、お風呂は入らなきゃいけなかったし」


「だから、何を見たんですか!」


 俺の言い訳を遮って、葛西さんは声を荒げた。口に出したらあからさまになるから、言いたくなかったのだが、俺は観念する。


「ぜ、全部」

 俺が答えるのを皮切りにして、顔が熱くなっていくのを感じた。加えて、わなわなと、肩が震え始める。


「さ、最低です!」


 どわー、最低と言われてしまった。


「すみません。本当にすみません」


 こうなったら平謝りをするしかない。せっかく良い雰囲気だったのに、このままでは嫌われてしまう。それは嫌だ。


「特に! 『アイスの件を許すから俺のも許して』みたいな見え透いた魂胆がもう最低です。私がアイスを買って弁償したら、私の純潔は返って来るんですか!? そういう話になりますよ!」


 まくし立てるように言う葛西さんは今日一番の饒舌だ。俺の巧みな話術はどうやら裏目に出てしまったらしい。見え透いた魂胆とか言われてしまった。そして葛西さんの言っているのは完全な正論だ。


「でも! 風呂の中のシャンプーとかを見るための最低限しか見てないし、ガン見したわけじゃないし! どうにか勘弁してください」


 必死の自己弁護をする。さながら裁判長に減刑を求める被告人のような。


「ほんとうに……?」


 裁判長は喉を唸らせながら、厳格な声色で俺に問いただす。


「本当に!」


 俺が頷くと、葛西さんは考えるように黙して、はぁ、とため息を吐いた。


「……たしかに、目を瞑ってお風呂なんて、危ないですよね」


 そう言って、納得してくれた。ちょろいぜ。とか思っちゃいけない。裁判長ありがとう。


「ありがとうございます。ありがとうございます」 


 何度も、心の底からお礼を言った。さながらお医者さんに子どもの命を救ってもらった母親のように。なんでここだけ医者なんだよ、とセルフ突っ込みもしておこう。


「私がいるときは! 一切見せないので、ご安心を」


 言うと、葛西さんは朝の準備をし始めた。シャツや制服を用意して、器用に目を瞑って着替えると、洗顔や歯磨きを機敏に済ませていく。抑制されると見たくなるのが人間というものなのだろう、そう言われると、もう一度見たいなという気持ちに駆られた。もちろん、口には出さないけれど。


「ずっと人に見られてるって、緊張しますね」


 鏡を見て髪の毛を整えながら葛西さんは言った。昨日俺が見たのは「俺の入った葛西さん」だったが、今俺が見ているのは「葛西さんが入った葛西さん」である。つまり、今俺が見ているのが、真正の葛西陽菜乃さんだ。華奢な身体に似つかわしい弱気を纏った瞳が二つ輝き、黒く長く伸びた真っ直ぐの頭髪はいかにも真面目そうだった。


「陽菜乃? 何してるの?」


 不意に、葛西さんのお母さんに話しかけられる。見ると、葛西さんのお母さんはばっちりと身支度みじたくを整えており、今から仕事に向かう風だった。


「や、やっぱり、学校に行こうかなぁーって」


 照れ笑いしながら、葛西さんは少し気まずそうだ。


「ほんとう!? 学校に行くの!?」


 葛西さんのお母さんが持っていたカバンを落とした。そして、彼女の目にはすぐに涙が溜まって行く。


「あー、もう。お母さん、お化粧落ちちゃうよ」


 手ぐしを止めて、葛西さんが母親の元へ駆け寄る。カバンを拾い上げ、お母さんに持たせる。そして背中を押して、泣きべそをかいているお母さんを玄関まで連れて行った。


「お、お弁当……作らないと!」


「いいから、いいから。お仕事遅れちゃうよ」


 葛西さんはリビングの方へ歩き出そうとする母親を捕まえて、半ば追い出すような形で仕事に送り出す。去り際に葛西さんのお母さんはこちらを振り返って、


「陽菜乃、頑張ってね」


 と微笑んだ。その目には、やはり涙が浮かんでいた。


「泣き虫は遺伝?」


 葛西さんのお母さんの背中を見送りながら、少しからかうように言ってみる。すると、葛西さんは「そうかもしれません」と小さく笑った。


「私が生まれる少し前に、私のお父さんが死んじゃって、だから私はお母さん一人に育てられたんです。お母さんはそれをすごく気にしているみたいで、事あるごとに『片親でごめんね』って謝ってきました」


 少し目を潤ませて、葛西さんは話し続ける。


「私が不登校になった時も、きっとお母さんにも思うところは沢山あったと思うんですけど、何も言わずに見守ってくれて。でも、やっぱり、お母さんとしても私に学校言って欲しいんですよね」


「うん……お母さんのためにも頑張ろう」


 俺はそれしか言えなかった。親娘二人のことには、二人にしか分からないものがたくさんあるし、それに対して、下手に口を出すことはできない。


 片親か。葛西さんの話を聴いて、俺は心の中で呟かずにはいられない。今、この未来の世界でも俺の母さんはいるはずだ。元気だろうか。この、未来の世界の俺はプロになって、母さんに恩返しできているだろうか。


「さ、私たちも行きましょうか」


 気を取り直して、という感じで葛西さんは言った。すごいな。と掛け値無しに思う。過酷な環境の中で生きる彼女に俺は尊敬の念を抱いた。


「ねぇ、タメ口でいいよ」


「え、でも二つも年上ですし」俺の言うことに躊躇いを見せる葛西さん。


「良いじゃん。俺たち、運命共同体ならぬ人生共同体だろ?」


「あはは……人生共同体かぁ」


 俺がたった今つくった、少しチープな造語に葛西さんは笑ってくれる。


「じゃあ、いいの?」


 少し気恥ずかしそうに葛西さんが微笑む。少し距離が縮まった気がして、俺の心がそわそわと騒めく。


「陽菜乃って呼んでも?」


「いいよ。私はタツベーさんって呼ぼうかな」


「いや、りゅうへいだってば!」


 突っ込むと、あはは、と陽菜乃が笑った。別になんでもいいか、と俺も笑い返した。


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