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賢者から怪盗に転職しました  作者: レオナールD
第3話 ホーンテッド・キャッスル
32/62

 その少女、ルリア・サブロナはサブロナ伯爵家の次女として生を受けた。

 家族構成は父親と姉、ルリアの3人家族で、母親はルリアが物心つく前に病でこの世を去っていた。しかし、年の離れた姉が母親代わりになってくれていたため、ルリアがそのことを不幸に思うことはなかった。

 3人の家族は信頼できる使用人達に囲まれて、仲睦まじく暮らしていた。


 しかし、そんな一家に、ある日、悲劇が襲いかかった。

 同盟関係にあった隣国が突如として同盟を破棄、スレイヤー王国に宣戦布告をしてきたのだ。

 国境にあったサブロナ伯爵領はまっさきに戦火にみまわれることになり、戦いの中で父親のサブロナ伯爵も戦死してしまった。残された伯爵家の兵士達の抵抗もむなしく、とうとうサブロナ城は敵に包囲されてしまった。


「ルリア、あなたは宝物庫に隠れていなさい」


 城の四方を敵に囲まれ、頼れる父親も戦場に散った。絶望的な状況の中で、ルリアの姉、サリア・サブロナは妹に向けてそう言った。


「私は残った兵士を集めて、もう一度、敵と戦います。あなたは宝物庫に隠れていなさい。安全が確認できるまで、絶対に出てきてはいけませんよ」


「やだ! 私も戦う! 私だって姉さんと戦えるもん!」


 当時から、ルリアにはアンデットモンスターを呼び出して使役する「死霊術」の才能があったらしい。その力を使って姉とともに戦おうとするルリアであったが、サリアは悲しそうに首を振った。


「ダメよ。あなたまで死んでしまったら、サブロナ一族が滅んでしまう」


「でも……」


「私だってそう簡単に死ぬつもりはないわ。敵を突破して、援軍を連れて戻ってくるから。あなたは私が帰ってくるまで、宝物庫にある家宝を守ってちょうだい」


「う~~~~~」


「大丈夫。絶対にまた会えるわ。待っててね」


 おそらく、サリアは最初から死ぬつもりだったのだろう。

 仮に姉妹がそろってどこかに隠れていれば、敵も死に物狂いで二人を捜索するだろう。しかし、サリアが敵の目を引きつけて戦死すれば、幼いルリアは見逃されるかも知れない。

 あえて打って出ることで敵の目を引きつけ、城から意識がそれるように仕向ける。サブロナ城の宝物庫は隠し通路の先にあるため、たとえ城を占領されたとしてもルリアがすぐに見つかることはないはずだ。


「またね、ルリア」


「お姉ちゃん、待ってるからね! ずっとずっと、待ってるから!」


 その言葉を最後に二人は別れた。サリアは残った兵士をかき集めて敵陣へと討って出て、そのまま行方知らずとなった。そして、サブロナ城は敵の手に落ちてしまった。


 城が占領されてからも、残されたルリアは姉の言いつけ通りに宝物庫に隠れていたのだが・・・ここで予想外の事態が起こった。

 スレイヤー王国の王都から送り込まれた援軍によりサブロナ城が奪還されそうになり、焦った敵国は城を取り返されないように火を放ったのだ。

 火のめぐりは早く、ルリアが隠れていた宝物庫まで炎と煙が襲いかかった。幼い少女は逃げることもできず、幼くして命を落とすことになってしまった。


 まさに悲劇の物語。

 しかし、悲劇はそこでは終わらなかった。


 炎によって命を落としたルリアであったが、もともと、死霊術の才能があったこともあり、レイスとなって甦ったのだ。

 レイスとなったルリアは戦死したサブロナ伯爵領の兵士や使用人、領民をアンデットとして呼び寄せて、廃城となったサブロナ城を不死者の巣窟へと変えてしまった。


 そして、彼女はいまだに城の宝物庫で姉の帰りを待ち続けている。

 姉と交わした約束通り、家宝の財宝を守りながら・・・



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