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賢者から怪盗に転職しました  作者: レオナールD
第2話 ゴブリンの秘宝
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 シルバー、ブロンズの冒険者達は5~10人ほどの部隊に分かれて、複数のルートから森に突入した。狭い森の中では大勢で固まっていたとしても、身動きがとれなくなってしまうからだ。


 南側のルートから突入した冒険者は、シルバーランクのパーティーである『銀翼の乙女』と『黄金の剣』の合同パーティーである。

『銀翼』のメンバーは、サブリーダーであるメルティナという銀鎧の戦士を筆頭に、細剣使いのライム、魔法使いのカティの2人が続いている。3人とも若い女性だった。


「はあっ!」


 メルティナが剣を振ると、目の前にいたゴブリン3体が一瞬で両断される。


「水よ、滝となって降り注ぎ、我が敵を包み押しつぶせ! 第3階梯魔法【水方陣ウォーターフォール】!」


 白いローブ姿の魔法使い――カティが呪文を発動させる。数体のゴブリンが降りそそぐ水の柱に押しつぶされた。


「ん・・・ゴブリンは殺す」


 ライムが音も無くゴブリンの間をすり抜けた。彼女が通り過ぎると、ゴブリンの緑色の肌が切り裂かれて血が噴き出し周囲の木を赤く染めていく。


 鮮やかな手際でゴブリンを倒していく『銀翼』の冒険者。一方で、『黄金』の冒険者も負けてはいなかった。


「はっはっはっ、僕の剣の前にひれ伏すがいい! 邪悪な小鬼共め!」


『黄金の剣』のリーダーは黄金に輝く剣と鎧を身につけた戦士、レオン・ボナパルト。

 彼が黄金の剣を振ると、剣から輝く閃光が放たれてゴブリン数体をまとめて切り裂く。『黄金の剣』の名前の由来である魔剣の力だった。


「まったく! 数が多くて面倒なことだ!」


 文句を言いながら、サブリーダーである黒鎧の戦士が大槌でゴブリンを叩き殺す。いったいどれほどの力で振り下ろしたのか、潰されたゴブリンはミンチのように全身の骨が砕けている。


「はあっ!」


「ふんっ、はっ、やあっ!」


 他の二人のメンバーも剣を振って、危なげなくゴブリンを倒していく。

『銀翼』と『黄金』、合わせて7人の合同パーティーは、全員がギルドの主力であるシルバーランクの冒険者達である。彼らにとって、ただのゴブリンなんてどれだけ数がいても脅威にはなりえなかった。

 すでに7人に倒されたゴブリンは200体以上になっている。しかし、ゴブリンの数はいっこうに減ることはなく、森の奥に進むほどに増えている。


「カティ、ライム。二人ともケガはないかしら」


『銀翼』のサブリーダーであるメルティナが、仲間を振り返って訊ねる。


「ん」


「問題ありませんわ。サブリーダー」


 ライムが短い返事をしてうなずき、カティと呼ばれた魔法使いもしっかりと答えた。


「それにしても、リーダーが不在の時にこんな事が起こるなんて、ついてありませんわね・・・」


 彼女達、『銀翼の乙女』は女性だけで構成されたパーティーである。そのリーダーであるゴールドランク冒険者は王族からの依頼を受けており、数人の仲間を連れて他国に出かけていた。

 不在なのは『銀翼』のリーダーだけではない。偶然にも王都に在住しているゴールドランクの冒険者は全員、留守にしていた。

 そんなときに限ってゴブリンの大量発生が起こるなんて、運がないとしか言いようがない。


「あなたも弱音を吐かないの。文句を言ったって、目の前のゴブリンは消えないわよ」


「その通りだとも! 愛らしい乙女達よ!」


 メルティナの励ましの言葉に対して、返答が明後日の方向から飛んできた。金色の鎧を身につけた戦士レオンが『銀翼』の少女達の前に進み出る。


「僕たちの肩には、スレイヤー王国の人々の命がかかっている! 口を動かす暇があるのなら、一匹でも多くの敵を倒したまえ!」


 キラーン、と白い歯を輝かせて言い放ってゴブリンの群へと剣を向けた。


「輝け、魔剣ゴールデンイーグル! ゴールドフェザースラッシュ!」


 金鎧の冒険者が持つ剣がいっそう強く輝いて、放たれた閃光が無数の矢となってゴブリンの群れへと降り注ぐ。


「キシャアアアアアアア」


「はっはっはっ! 我が金色の剣の前にすべての悪は滅び去る!」


「おい、レオン! 雑魚相手に大技を使ってんじゃねえ! 魔力が持たねえぞ!」


 黒鎧の冒険者がレオンに注意するが、レオンはふっと鼻を鳴らした。


「たかだかゴブリンごときに大げさな。さあ、麗しの乙女達。僕が血路を開くからから安心して進みなさい!」


 『銀翼』の冒険者達にキラリと微笑みかけ、レオンはズンズンと森を進んでいく。その後ろをパーティーメンバーが慌ててついて行った。

 先行して進んでいく『黄金』の冒険者の背中を見ながら、ライムがぽつりとつぶやく。


「・・・暑苦しい」


「ライム、聞こえるわよ」


 そこにいる全ての女性の声を代弁するかのようなライムの言葉に、メルティナはため息をついてたしなめる。


 金鎧の冒険者、レオン・ボナパルトは、シルバーランクの冒険者のなかでもっともゴールドランクに近いといわれている男である。性格はともかくとして、実力は指折りである。

 しかし、その実績は貴族である実家の潤沢な資金により購入したマジックアイテムが要因であることを、多くの冒険者達は知っていた。

 また、暑苦しい性格から女性冒険者からは距離が置かれることが多かった。悪い男でないとわかっていても、一緒に行動するのは面倒だった。


「顔は悪くありませんけど、性格で損をしていますの」


 ローブ姿の魔法使い、カティはレオンをそう評価した。メルティナも同意する。


「そうね。でも、面倒な相手と行動するのも仕事のうちよ。二人とも我慢してちょうだい」


「ん・・・別にいい。ゴブリンを殺せるなら」


「わかりましたの」


 メルティナの言葉にライムとカティが頷く。『銀翼』の3人も『黄金』の後を追って森を進みだした。


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