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賢者から怪盗に転職しました  作者: レオナールD
第2話 ゴブリンの秘宝
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『怪盗シャドウ、トラヤヌス侯爵邸へと盗みに入る!』


『トラヤヌス侯爵の謎の病死。はたしてシャドウとの関係は!?』


『財務大臣の突然の免職。その原因は?』


「おーおー、ずいぶんと騒いでいるじゃって」


 スレイヤー王国王都。冒険者ギルドにて。

 カゲヒコは壁に張られた新聞を見ながら、のんびりとした口調でつぶやいた。


 カゲヒコ――怪盗シャドウがトラヤヌス侯爵邸から『聖竜の瞳』を盗み出した事件をきっかけとして、王都では様々なスキャンダルが生じていた。


 侯爵が宝珠を使って弱みを握っていた人間の中には財務大臣もいたらしく、彼の不正が表面化したことで政治的な混乱も生じていた。


「さすがに王族のスキャンダルは揉み消されたか・・・ま、俺には関係ないけどな」


 そう言ってカゲヒコは新聞から視線を外して、隣の依頼ボードへと目を向けた。

 怪盗として夜の闇を駆け回っているカゲヒコであったが、昼間は何もしていないというわけではない。表向きの仕事として冒険者ギルドで仕事を請け負っていた。


 冒険者ギルドの依頼ボードには様々な依頼が張り出されている。

 森での薬草採取。ゴブリンの討伐。畑を荒らす熊の退治。行方不明者の捜索。


「それに怪盗シャドウの捕縛か。金貨千枚とは安くみられたもんだぜ。俺もまだまだだな」


 金貨1枚あたりの価値は、日本円でおよそ1万円ほどである。賞金1千万というのは、はたして天下の大泥棒の値段として高いのか安いのか。

 依頼ボードには怪盗シャドウの手配書が似顔絵付きで貼ってあるが、その似顔絵はカゲヒコとは似ても似つかない。無用なトラブルを避けるため、カゲヒコが魔法を使って仮面の下の顔を変えているからだ。

 認識阻害の魔法も使用しているため、賢者をしていた頃の知り合いと顔を合わせても、カゲヒコと賢者クロノを結び付けられる者はまずいない。


「そこ・・・邪魔・・・」


「ん?」


「・・・どいて」


「おっと、こりゃ失敬」


 いつの間にか背後に立っていた少女が、カゲヒコに文句を言ってくる。

 年齢は15歳くらいだろう。赤毛の髪をショートカットにした小柄な少女は、首に銀色のタグをぶら下げている。


「シルバーランクか。若いのにずいぶんと優秀なんだな」


 冒険者はその功績と強さによってランク付けされており、上からオリハルコン、ミスリル、ゴールド、シルバー、ブロンズ、アイアン、ストーンの7段階に分けられている。

 オリハルコンが伝説に残る偉業を成した人間に与えられる名誉ランク、ミスリルがギルドマスターなどの要職に就いた者だけに与えられるランクである。そのため、シルバーは現役冒険者としては上から2番目といえる。


「・・・あなたは、アイアン」


 カゲヒコの首にかかったタグを見て、少女がぼそりとつぶやく。


「ああ、そうだよ」


「そう・・・弱いのね。年上なのに・・・弱い人は冒険者、やめたほうがいいよ・・・」


 さらりと暴言を吐いて、少女は依頼ボードに張られている紙を一枚はがして受付へと持っていく。「ワーウルフ討伐」というそれなりの難易度の依頼だった。


「手厳しいなあ。別にいいけど」


「はは、お前もあれにひどく言われたみたいだな」


 ギルドに隣接した酒場から男が声をかけてきた。友人というほど親しくはないが、カゲヒコにとっても顔見知りの冒険者である。


「ああ、そうみたいだ。誰だい、あの生意気なお嬢さんは」


「なんだよ、知らないのか? 『銀翼の乙女』の新人だよ。すごい速さでメキメキとランクを上げてるらしいぜ」


「ふーん、生き急ぐのは感心しないな」


『銀翼の乙女』は王都を拠点にしている冒険者パーティーの中でも、特に有望株とされているものの一つである。

 メンバーが全員女性という異例のパーティーは、リーダーの女傑が男嫌いという事でもよく知られていた。


「名前はなんていうんだ?」


「たしか、ライムだったな。『銀翼』のリーダーのお気に入りだよ」


「へえ、覚えておくよ」


 そう言って、カゲヒコも依頼ボードから紙をはがす。

 依頼内容は、「迷い猫の捜索」という子供のお使いのような内容であった。


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