アフターエピソード1・プロポーズの言葉
俺の腕の中で眠る彼女。
ふと、目が覚めた時彼女の顔を見つめる。
カーテンの隙間から朝日が差し込み、彼女の顔を照らしている。
俺の大切な人は、俺の腕の中で幸せそうな顔で眠っている。
ただ、それだけで俺は安心することができる。
彼女の目がゆっくりと開く。
「……んっ、おはよ。何見てるの?」
「寝顔」
「そんなに見つめても何も出てこないよ?」
微笑む彼女の唇をそっと塞ぐ。
「なぁ、今幸せか?」
「私? 十分幸せだよ。一緒に起きて、一緒にご飯食べて、一緒に寝る。それだけで十分幸せ。純平は?」
「俺か? 俺も十分幸せだな。なぁ、一つだけ聞いてもいいか?」
「何?」
「何で地元を離れてまで、追いかけてきたんだ? 就職の条件って、地元から離れないって事じゃなかったけ?」
「初めはね。私さ、一度入院した事あったでしょ?」
あれはまだ雅が学生の頃、事故にあって入院していた時があったな。
あの時の傷も後遺症もなく、雅はすっかり元気になった。
「随分昔の話だな」
「車にぶつかった瞬間、時間がゆっくり流れたの。あの話、本当だったんだね」
「走馬灯でも見たのか?」
「ちょっと違うかな……。そのときね、家族でも武本先輩でもなく、純平が出てきたんだ」
「俺?」
「そう。私の人生がここで終わるかもって思ったとき、私は純平に一番会いたかったんだと思う」
「そんな事があったんだ……」
「純平と会わなくなって、実家にいて、仕事して。気が付いたらいつも純平の事を考えてた。元気かな、ご飯食べているかなって」
雅はそんな事を考えていたのか……。
仕事に追われていた俺とは違うんだな。
「私、どうしても純平の側にいたかった。純平がつらい時、悲しい時、いつでも純平の側にいて、力になってあげたかった。たとえ、純平が私を信じなくても、私の事を裏切っても、私は純平の側にいたい。だから追いかけてきたの」
「雅……」
「だから、私は今幸せだよ。純平が誰かと結婚して、家族を持ったとしても、私はずっと純平を見守っている」
そんな決意までしてきたのか。
俺は、その雅の決意の上にただ、胡坐をかいて座っているだけでいいのか……。
「雅」
「なに?」
「俺はきっと雅を幸せにできない。苦労もかけるし、悲しませることもある。それでも俺の側にいてくれるのか?」
「もちろん。純平の苦しみも、悲しみも半分私が貰ってあげる。その代り、私の幸せを半分純平にあげるよ」
笑顔で答える雅に迷い話無いようだ。
雅、俺はお前とだったら一緒にいる事ができるのか?
例えこの先、どんなに困難な事が待ち受けていたとしても、一緒に乗り越えられるのか?
「……結婚しようか。俺と家族になってくれるか?」
「喜んで……」
――
……随分昔の夢を見たな。
俺の、あの時の選択は正しかったのか?
だけど、俺はきっと幸せなんだと思う。
愛する家族と、帰る家があるのだから。
「パパ! 起きてよ! 今日は遊園地に行くんでしょ!」
娘の声で布団から起きる。
味噌汁のいい匂いもしてきた。
よし、起きますか。
「起きてるよ。今日は晴れかな?」
「快晴だよ! 絶好の遊園地日和!」
俺の選択した答えは俺にしかわからない。
ただ一つ言える事は、今の俺は幸せなんだなって事だな。
アフターエピソード。
ちょっとだけ更新していきます。





