互いの呼び名
「あ、思ったよりさっぱりしていて、おいしいかも」
「だろ? 見た目はこんな店だけど、仲間内じゃ有名な店なんだ」
軽い会話をしながら食事が進む。
うーん、やっぱりうまいね。
そして、食事開始から数十分。
「先輩、そろそろ限界なんですが……」
「ここに来る前にクレープ食べたからなかな? ギブアップするのか?」
「無理です。女の子にこの量は多すぎます」
「そっか。次来たら小盛りにするんだな」
「そうします……。では、お願いしますねっ」
俺の皿におかずを。
そして、茶碗に米が引っ越しされてくる。
「ちょ、何してるんだよ!」
「残したらもったいないじゃないですか。この店に決めた先輩が頑張ってください!」
「おまえなー」
「あと、一つ気になる事が」
「なんだよ?」
「私の事『おまえ』って呼ぶの禁止です。私の名前は『おまえ』ではないです」
「じゃぁ、何と呼べばいいんだ?」
「優希」
「優希でいいのか?」
「はい名前でお願いします」
「はいはい、わかりましたよ。優希」
俺が名前で呼ぶと、優希は微笑む。
ほっぺにご飯粒を付けて。
「先輩のフルネームってなんですか?」
あれ? 教えた事無かったけ?
「俺か?」
「他に誰か?」
「片岡純平だ」
「片岡、純平……。純君ですね」
いやいや、純平だってば。
「なんでそうなる」
「ニックネームですよ、ニックネーム」
なんだかこいつといると疲れるな。
ま、呼び名なんてどうでもいいか。
「好きにしろ」
「好きに、なります」
ん?
「今、なんて言った?」
「『好きに呼びます』って言いました!」
「あぁ、好きに呼んでくれ」
こうして、なぜか互いの呼び名が変わり、俺の懐は少し寂しくなった。
最終的に俺の腹は満腹となり、限界突破しました。
「もぅ、無理……」
「純君、何言っているんですか! 次は何か甘い物食べたいです!」
「ちょ、お前なー」
彼女の指が俺の脇腹をツンツンしてくる。
「くすぐったいんですけど……」
「な、ま、え!」
「……優希」
「それでいいです! あ、ケーキ屋さん発見! 純君いこうっ」
俺は満腹のお腹をおさえながら、優希に連行される。
優希はどんな性格なんだ?
俺はなんでこんなに振り回されるんだ!