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浴衣美人


 そして花火大会の日。

会社の皆と花火大会へ行く為、駅で待ち合わせしている。

んー、周りを見てもみんな花火を見に行くことがわかる。


 浴衣を着た子がやたらに多い。

そんな中、一人の子に目が映る。


「浴衣で来たのか?」


「折角だからね」


 雅も今日の花火大会に来てくれた。

成瀬さんは色々な人に声をかけていた様だ。


「お待たせしました! 会場の場所取りは終わっています。集まったら移動しましょうね」


 店長も他の講師陣も徐々に集まってきた。

こうしてみるとうちの店って結構人が多いんですね。


 成瀬さんや雅、女性陣は浴衣姿が多い。

一体どこで着替えたんだろうか?

仕事着のまま来た俺って、もしかしてダメだった?


「はーい、揃いましたね! では、移動しますよー」


 成瀬さんはまるでバスガイドのように先頭を歩いている。

俺と雅も成瀬さんの後について行き、花火会場へ移動し始めた。


 転勤の事、まだ誰にも言っていないんだよね。

店長の耳にも入っていないのかな?


 会場に着き、予め準備されているブルーシートに座る。

先行で場所取りしてくれた新人さん、ありがとうございます。


「片岡君、ビールは?」


「はい?」


「ないのか? よし、一緒に買いに行くか!」


 店長に道連れにされた。

別に俺は飲まなくてもいいんだけど……。


「さて、つまみも手に入れたし、戻るか」


「そうですね、しかし、すごい人ですね」


「このあたりで一番大きな花火大会だからね。片岡君も最後のいい思い出になるんじゃないか?」


「……知っていたんですか?」


「それはね。一応私は店長だよ? 本社でも頑張ってくれ。期待してるよ」


「はい。任せてください!」


「もし、何かやり忘れている事があれば、しておくといい。後悔しないようにね」


 先に歩いて行ってしまった店長。

やり忘れた事、何かあるかな……。


――ヒューン ドーン


 花火が打ち上がる。

みんなで見る花火も悪くない。


 隣には空を見上げている成瀬さんと雅。

二人共浴衣を着ており、とても綺麗だ。


「ちょっとトイレ行ってくる」


 俺は一人席を立ち、その場を離れる。

このままでいいのかな? 俺はこのままこの地を去っていいのか?


 不意に袖を掴まれた。

ん? なんだ?


「片岡さん、本社に行くんですか?」


 成瀬さんだ。


「知っていたの?」


「店長が本社の人と話をしているのを聞いてしまって……。いつですか?」


「この秋に移動するよ。話せなくてごめんね」


「もうすぐですね……。戻って来るんですか?」


「それは分からないな。人事は俺が決める訳ではないし」


「そうですよね……。私、待ってますね。片岡さん、戻って来るの待ってます」


 そう話した彼女はそのまま俺に背を向け、戻っていった。

戻ってくかも分からない。俺を待つ必要なんてないんだよ。


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