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変な先輩


 向かえた年末。今年も武本先輩たちと年を越すことになった。


「先輩もいよいよ卒業ですねー」


「そうだね……」


 何となく先輩がそわそわしてる。

やっぱり卒業とか就職とか不安な事も多いのだろう。

早く俺も正社員として自立しなければ……。


 台所でおそばを茹でている雅。

俺と先輩はこたつにみかん、二人でテレビを見ている。

そしてゆっくりとした時間が流れる。


 結局成瀬さんとも雅とも以前の関係を保ったまま、数日が経過している。

俺の心に残ったこの気持ちはどこに向ければいいのだろうか。


「おそばできたよー」


 出てきたおそば。

今年もエビがでっかいですね!


 鐘の音を聞きながらみんなで食べるおそばも今年最後か。

何となく寂しい気もするな。


 去年と同じように一緒に神社へ行き、お参りをする。

みんなで引いたおみくじ。


「お、今年は大吉だ!」


 二人は何を引いたのだろうか?


「私も大吉!」


「……今年は末吉か」


 内容を見ると『待ち人きたる』。去年も同じこと書いていなかったか?

財布におみくじを入れて甘酒をみんなで飲む。

今年もいい事ありますように!


――


「雅、本当にいいのか?」


「うん。武ちゃん今実家に帰っているの」


「じゃぁ、雅は先輩の家に一人なのか?」


「うん。だからこうしてこんな時間に純平の所に来ているんだよ」


「何で先輩に内緒なんだ?」


「だって、恥ずかしいじゃん。ほら、早くして」


「いいんだな……」


 無言で頷く雅。

俺も心を強く持ち、身構える。


「大きいね」


「そうか? 普通だと思うけど」


「だって、武ちゃんの二倍はあるんだよ」


 雅はまじまじと見ている。


「入れるぞ」


「うん。大丈夫かな?」


「大丈夫、俺は何回もしているし、失敗しないよ」


「分かった。純平の事信じてるよ」


「任せろ。いくぞ……」


 ゆっくりと入れる。


「は、入った……」


「どうだ? いい感じだろ?」


「うん。初めはどうかなって思ったけど、大丈夫そうだね」


「どれ、じゃぁ動かすぞ」


「壊れないかな?」


 雅が少し不安そうな顔になる。

確かに今まで入れた事の無い物を始めて入れる時は不安になるな。


「大丈夫だって。ほら、ここポチッと押して」


「うん。いくよ」


――ウィィィン


 パソコンが起動し始める。

雅が俺の家に持ち込んだパソコン。

そして、新しいクラフィックボードを組み込む。

メモリが先輩の倍以上。

先輩が使っているボードよりも高性能だ。


「でも、なんで先輩に隠すんだ?」


「だって、武ちゃんのパソコンよりもスペックが高くなるでしょ?」


「そんな事気にしてるのか?」


「気にするよ……」


 パソコンのモニタに初期画面が映る。

後は各種設定していけば作業は終わる。


 ……はい終わり!

超簡単!


「終わったの?」


「終わり。簡単だろ?」


 雅もバイトをしているが、もう少し色々な仕事をしてみたいと申し出があった。

店長に話したら俺が教えればいいんじゃない? と言う事になり、時間外で教えている。


 雅も自分のパソコンを持っており、先輩とゲームをしているようで新しいボードを手に入れた。

そこで、俺の登場。自分のパソコンに組み込みをしてほしいと。

初めは怖いので、作業を見たい言う事で家に持ち込んできた。


 気が引けるのか、先輩には中々言えなかったようだ。

そんな事気にする必要なさそうだけどね。


 つか、雅さん良い物手に入れましたね!

このボードだったら俺も欲しい!

オーバースペックですけどね……。


「あのね、最近武ちゃんの様子が変なんだよ」


「変?」


「後期は授業が無いはずなのにコマを取っていたり、毎週通ってる。理由を聞いてみたら『その授業だけはもう一度受けたいから』だって」


 空いた時間で講義を受けるのは別に問題ないんじゃ?

それにしても先輩は勉強家ですね。

俺だったら絶対に行かないのに。


「きっと就職関係で必要な事なんじゃないか? 専門知識とかさ」


「そうなのかな……。それに、今年は実家に帰っているし。今までそんな事、一度も無かったんだよ?」


 むしろ、今まで帰らないのがおかしいのでは?

学生最後の正月だし、来年から社会人だしさ。


「今まで帰らなかったんだろ? 学生最後位、親の所に行くのは普通なんじゃないか?」


「そうなのかな……」


 そんな話をして、雅のパソコンと雅を車に乗せ先輩の家に送っていく。


「純平、やっぱり根は真面目なんだね」


「何だそれ? 俺はいつだって真面目だぜ?」


「……もし、私が純平の部屋に泊めてって言ったら?」


「家まで送り届ける。俺はもう……」


 微笑みながら雅は車を降りた。


「だよね。そんなところ、結構好きだよ。またね」


 雅の背中を車内から見る。

なんで、そんな事聞くんだよ。

俺は雅に、何か期待しているのか?

期待するだけ、無駄だろ?


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