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それぞれの想い


――ピンポーン


「はい」


『純平? あがってもいい?』


 救世主きたー!


「直ぐに入ってください!」


 俺はダッシュで玄関に行き、鍵を開ける。

やってきた救世主。


「誰かいる?」


「成瀬さんが……」


「まさか、純平……」


 疑いの眼差しで俺を見てくる雅。


「違う! そんな事無い! そんな目で俺を見ないでくれ!」


 雅をリビングに案内し、出来上がった彼女を見てもらう。


「西川さん! お元気ですか! 元気ですね! 飲みますか? 食べますか!」


 あかん。彼女を止められないし、泊められない。


「純平、これどうするの?」


「逆に聞きたい。どうしたらいい?」


 おいしそうにたこ焼きを食べながら成瀬さんはニコニコしている。

何だか楽しそうですね。


「……あれー? 何で、西川さんがここに?」


「えっと、サークルの打ち上げの帰り。ちょっと寄ってみただけ」


「そうなんですね。二人は本当に仲が良いんですね。うらやましい……」


 少し寂しそうな表情になる成瀬さん。

さっきまでの笑顔が消えた。


「純平。何で成瀬さんがここに?」


 成瀬さんと同じような質問をしてくる。

ですよね、気になりますよね。


「いやー、最近忙しくてさ。息抜きに文化祭に行ったんだよ。で、遊びに来たいって言うから、家でちょっとだけ飲んだらこのざまですよ」


 成瀬さんが立ち上がり、雅に向かって歩き始める。

そして、雅の手を取り真剣な眼差しでゆっくりと口を開いた。


「西川さん。片岡さんの事どう思っているのですか? 西川さん、彼氏いますよね? 片岡さんと随分距離が近くないですか?」


 成瀬さんは予想外のことを口にした。

俺と雅の距離が近い。確かにそうかもしれない。


「純平とは付き合いが長いから……」


「それにしても近すぎます。はたから見たら恋人に見えますよ? 意識してます?」


「それは……」


「いい機会なので、はっきりさせてください。私、片岡さんの事気にしてます。私が片岡さんに想いを伝えてもいいですか?」


 俺の目の前で何かが始まった。

え? なにこれ? 俺はこのまま聞いているだけでいいの?


「……それは、私には関係――」


「ありますよね? ないとは言わせませんよ?」


 普段温厚な成瀬さんが怖い。

これが酒の力なのか……。


「……」


 雅が黙ってしまった。

先輩と同棲し、付き合いも長い。

俺と雅は親友。そこに恋愛感情はない。

雅もそうだろ? 『俺に恋愛感情はない』って一言いえばいいだけの問題だ。


「………帰ります」


 荷物をまとめて成瀬さんが玄関に向かう。


「私も帰るね……」


 二人が玄関から出ていく。

送っていこうかと思ったけど、その場から動けなかった。

雅は何で否定しないんだ?


 いつもの様に親友だからって、言えばいいのに。

何か言えない事情でもあるのか?


 それにしても、成瀬さん。もしかして俺に気があるのか?

あるんですよね、きっとそうなんですよね………。


 テーブルに残ったお好み焼きを口に頬張りながら、余った酒を飲む。

一人で飲む酒も悪くない。

その日はモンモンしながら布団に入り、なかなか寝付けなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 純平よ何テンション上げてるの? 誰も信じないんじゃなかったっけ?ヤバイ純平が優希と変わらんクズに見えてきた。
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