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送ってくれたお礼に


 俺の住んでいるアパートと大学の横を通り、まだ歩いている。

『すぐそこ』の定義はいったい何なのか。


「まだつかないのか?」


「もうそろそろですよ」


 春なのに夜は若干冷える。

腕に絡まった彼女は、ほんの少し暖かい。


「夜の大学って何だか不気味ですね」


 昼間は感じないが、誰もいなく明かりもない大学。

確かにちょっと怖いかも。


「そうだな、少し怖いかもな」


 大学の近くはアパートだらけ。

もちろん住宅街があったりスーパーがあったりもするが、この大学付近にアパートを借りる学生が多い。どこを見てもアパートが視界に入ってくる。 

ま、俺もそのうちの一人なんだけどね。


「つきましたー」


 大学から徒歩数分。

ちょうど大学をはさんで俺のアパートとは真逆。

しかも、このアパートは……。


「ここか?」


「そうです、このアパートの二階です」


 階段を上がっていく彼女。

比較的新しいアパートは同じような建物が数棟立っている。

正確な数は分からないが、十以上は同じ見た目のアパートが並んでいる。

そして、その一番奥の二階が彼女の部屋だ。


「じゃ、俺は帰るぞ。また学校でな」


 階段を途中まで上がっていた彼女は走って戻ってきた。

ん? なにか預かっていたっけ?


「帰るんですか?」


「帰るだろ。俺だって暇じゃない」


「そうですか。少し上がってコーヒーでも飲んでいきませんか? 送ってくれたお礼しますよ」


 街灯が照らす彼女の顔は微笑んでいる。

普通の男だったら上がり込むだろう。


「いや、遠慮しておくよ。知り合ってまだお互いの事良く知らないんだ。俺だって男だぞ?」


「先輩なら安全だと思ったんですけどね」


「そう言う軽い気持ちで男に声をかけるな。勘違いする男が増えるぞ?」


「分かりました。肝に銘じておきます。送ってくれてありがとうございました」


「おう、じゃぁな」


 ふと彼女の手が俺の袖をつかむ。


「連絡先、教えてください」


 同じサークルだし、学科も同じか。

これから連絡も取りあう事はあるかもしれんな。


「夜中に電話するなよ?」


「しませんよっ」


 こうして彼女と連絡先を交換し、別れる。

帰りながら、彼女が部屋に入ったところを確認する。

あの軽そうな性格、何となく危険だな。


 彼女のアパートから徒歩数秒。

俺は電話を取り出し、コールする。


「もしもし」


『どうした? こんな時間に』


「部屋、いるだろ。今から行ってもいいか?」


『別にいいけど、何か用事でも?』


「特に無い。近くを通っただけだ」


 用件も早々に話電話を切る。

彼女のアパートの隣の棟。

階段を上がり、インターホンを鳴らす。


 玄関の扉を開け、出てきたのはタンクトップの男。

そして、その手には鉄アレイを握っている。


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