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9、異世界二日目

 恋のキューピッドなどと言っても、正直離婚という最大の失敗をしている私では、どうして良いのかよく分からない。

 あらすじ通りでいけば、私がヒロインのエミーリアに意地悪をすると、デジレ王子が助けに入ってきて、二人の仲は急速に縮まる、というのが一番手っ取り早い。

 であれば、どうしても意地悪はしなくてはいけないのだろうかと、私は重い気持ちで教室に入った。

「おはようございます、エミーリア令嬢、良い朝ですわね。」

私はとりあえず、先に登校していたエミーリア令嬢に挨拶をした。

「お、おはようございますっ!セレナ様っ!」

エミーリア令嬢は、緊張した面持ちで椅子から立ち上がると、私に向かって深々とお辞儀をした。

 昨日よりかはマシだけれど、ずいぶん怖がられている。

「そんなに畏まらなくて結構よ、お楽になさって。」

私はなるべく優しく微笑むと、エミーリア令嬢を席に座るように促した。

 ふと手元を見ると、エミーリア令嬢はずいぶんと可愛いぬいぐるみを机に乗せていた。

「あら、これはなあに?ずいぶんお可愛らしいのね。」

それは古布で作ったような、可愛いうさぎのぬいぐるみだった。

「はい、母が作ってくださったのです。」

エミーリア令嬢は嬉しそうに、そのすでにボロボロのうさぎを掌で包んだ。

「そう、それは大切なものなのね。」

母が作ったということは、伯爵が手を付けたという街の女性だろう、今は一緒に暮らせているのかも怪しい。きっと今のエミーリアにとっては、何より大切なものだろう。

 ここでこのうさぎを貶めたりすれば、悪役令嬢として合格点なのだろうけれど、親からのプレゼントを大切にしているような良い子を苛めるなんて、そんな鬼畜の所業できるわけがなかった。

 もしも愛息子が、私からのプレゼントを大事に常に持っていたりしたら、可愛い可愛いと頬擦りしたいぐらいに愛しいと思う。


 でも、とにかくなんとしてでもデジレ王子からのヒロインの好感度は上げないといけない。

 私はデジレ王子の席に視線を投げると、ちょうどこちらを気にして見ていたデジレ王子と目が合った。

「おはようございます、デジレ殿下。」

ひとまず目が合ったので、私は丁寧にお辞儀をした。

「おはようございます、デジレ殿下。」

後ろでエミーリアも私に習って挨拶をした。

「何かあったのか?」

挨拶をされたことて、デジレ王子もこちらに歩いてきてくれた。どうやらあちらも、こちらに話し掛ける隙を伺っていたらしい。良い兆候だった。

「いえ、エミーリア令嬢は、お母様からいただいた品物を大切にしているようでしたので、拝見させていただいていただけですわ。」

「ほう。」

言外にエミーリアが良い子であることをアピールしつつ、私はデジレ王子とエミーリアが近付けるように、少し端に避けた。

「このうさぎか?」

「左様でございます、殿下。」

王子と公爵令嬢に話し掛けられ、エミーリアはすっかり萎縮していた。

「そなたの母はとても器用なのだな。可愛いうさぎだ。」

「殿下…!」

うさぎを褒められ、エミーリアの王子への好感度が上がった。同時に王子のエミーリアへの好感度も+1上がっている。

 ひとまずこれで千円ゲットか、と私は頭の中で計算した。

 けれど今のは意地悪ポイントには数えて貰えていないので日給の五千円は貰えないだろう。

 最低1日六千円は欲しいので、残り五千円分は、後で街で稼がないといけないな、と私は考えていた。


「ねえ、きなこ、具体的に二人の好感度がどれだけ上がれば、二人は結婚になるの?」

私は小声で、腕の中で抱かれているきなこに声をかけた。

 この学校は魔法に関する授業がメインのため、自身の使い魔である動物同伴で授業を受けても良いのがありがたかった。

「結婚には他の要素も必要になるけど、具体的にはお互いの好感度が+50以上じゃないと無理だにゃ。」

「+50以上か…、」

慧眼で確認すると、まだお互いの好感度はそれぞれ+2にしかなっていなかった。あと+48、まだまだである。

 でもこの調子で毎日+1ずつコツコツ積み上げていけば、あと48日で+50になる計算である。

 あと2ヶ月足らず、そう思えばそう遠い先でもなかった。

「二人の好感度はあと2ヶ月として、じゃあ問題はその間の私の生活費ね…。」

 

 こちらの世界での学費や食費は、セレナの親である公爵家が出してくれているので心配はなかったけれど、それに胡座をかいて勉強しかしていなかったら、可愛い息子の食費と将来の学費が稼げない。

 私は一限目の魔法薬学の授業を無事履修を終えると、さっそくまた街の課外授業という名前のアルバイトに繰り出すことにした。

 



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