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5、王子とヒロイン


「はじめまして、私はセレナ・リファイディングですわ。あなたがエミーリア・アーレント伯爵令嬢、でよろしくて?」


 私はとりあえず、『主人公』であるエミーリアに話しかけることにした。

「ひゃ、ひゃいっ!」

いきなり公爵令嬢に話しかけられたことで、エミーリアはビックリしたのか、変な声で返事をしてしまっていた。

 その純朴な様子に、私は思わず微笑んでしまう。

 しかし、そこは流石に悪役令嬢、私の微笑みは、無様な声を嘲笑う意地悪なものに見えたらしい。

「ひいっ…!」

そんな私の悪役令嬢らしい表情に、エミーリアは目に見えて怯えた。

「あら、どうされまして?何かお気に触ることでも?」

私の普通の心配も、見る人には、公爵令嬢が話しかけてるのに、まともな受け答えもできないなんて、頭おかしいんじゃありませんの?という風に聞こえているようだった。

 恐るべき悪役令嬢補正である。

「ごごごごめんなさいっ…!!わわわ私こんな場面での礼儀も何も存じ上げませんでっ…!」

エミーリアは、可哀想なくらい青ざめて震えてしまっていた。


 可哀想な純朴な少女を苛めるなんて良心が咎めていたけれど、この調子であれば、ただ普通に話し掛けただけで、いじめたことにできるのかもしれないと思った。

「何の騒ぎだ?」

私に怯えるエミーリアの声が大きかったようで、教室の外からものすごいイケメンの貴公子が入ってきた。

「あのイケメンが、『王子様』だにゃ。」

茶トラのきなこが、小さな声で私に教えてくれた。

「なるほど。」

つまりこれから、なんとかしてこのエミーリアと、この王子様を結婚させなければいけないということだった。

「ふむ。」

どんな振る舞いをすれば、他人同士を恋仲にすることができるのか。

 キューピッドの矢でもあれば簡単だけど、流石にそこまでのチート能力はないだろう。

「セレナ、ステータスを確認するにゃ」

「あ、そうね。」

三毛猫のミケに促されて、私はまずエミーリアのステータスから確認することにした。


【エミーリア・アーレント

総合レベル1

HP:15

MP:10

職業:ヒロイン

特技:癒し系

好感度:→セレナ1+1】


「ふむ。」

慧眼を使うと、周りの時間が一時停止してくれるのは、本当にありがたかった。

「この、好感度1+1ってどういう意味なの?」

慧眼発動中は、周りの目を気にせず、きなこ達と会話することもできた。

「エミーリアは元々セレナに1の好感度を持ってて、今この瞬間に好感度がまた1アップしたって意味にゃ。つまり今のセレナのエミーリアからの好感度は、2にアップしてるにゃ。」

「あれだけ怯えられてて、好感度がアップしてるのっておかしくないの?」

「エミーリアがどう感じるかはエミーリアの自由にゃ。たぶん、話し掛けて貰えただけでも嬉しかったんだと思うにゃ。」

「そうなんだ…。そして、最初から1あるのはどうして?初対面のはずなのに。」

「たぶん、エミーリアは大抵の人に、最初から好感を抱いてるにゃ。人が好きなのかもしれないにゃ。」

「え?何それ良い子!」

基本的に周りの人間を好いているなんて、なんて心の綺麗な子なんだろうと、私は胸がキュンとした。

 私なんて、急いでいる時には人混みが障害物にしか見えないくらい心がささくれている時もあるというのに、さすがにヒロインは違う。

 しかしそんな良い子相手では、ますます意地悪をするのは気が引けた。

 ひとまず、エミーリアと今後どう付き合うかについては今後考えることにして、私は王子様のステータスも確認することにした。


【デジレ・ベルナドット

総合レベル1

HP:50

MP:40

職業:王子

特技:剣技

好感度:→セレナ0-1

    →エミーリア0+1】


「ふむ。」

私は慧眼発動中の時間停止をフル活用して、デジレ王子をじろじろと見た。


 美しい金の髪に、青い瞳。筋肉のついた均整の取れたスタイルは、非の打ち所もないイケメンだ。

 そして、今のこの場面を見て、苛めているように見える私への好感度が下がり、苛められているように見えるヒロインへの好感度が上がっている。

 スタートとしてはまずまずだった。


 

 私は自分が生き返るためには、このまま何とかして、王子とヒロインの相互好感度を上げていき、一年後に結婚まで漕ぎ着けなければならない。

 更に、息子の育児費生活費のためにも、日々それとは別に稼がないといけない。


 なかなかに難しいミッションではあるけれど、愛する息子のためには、何が何でもこなさないといけなかった。


 愛する息子を母無し子にさせないためにも、どうか二人には恙無く愛し合っていただけますように、と、私は自分のために、王子とヒロインに向かって願ったのだった。

また書き始めることにしました。

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