守護者のお仕事
2月14日はふんどしの日! ふんどしプリンセスの物語。再開します。
リデルタ軌道上に敵性艦隊接近を確認! SFXー0イクスショアラ緊急発進!
空間を切り裂いて押し寄せる侵略者の艦艇。迎え撃つは星の守護神SFXー0改めイクスショアラだ。イクスショアラという名前は未知なる未来という意味を込めて、前世で好きだったニュージェネのほにゃららやら、ライガーなんとかやらの要素を掛け合わせて私が名付けた。ヘキサ様も、この世界の守護神として相応しいと言って気に入ってくれている。
『グリッド305。ワープアウト反応。戦艦12、巡洋艦87、駆逐艦396』
イクスショアラのレーダーが敵艦隊を捕えた。それを管制AIが解析し、惑星リデルタを中心に999のエリア(グリッド)に分割しディスプレイに表示する。
「プラズマインパクトガン、ホーミングフェイザー射撃開始。グリッド200~300方面に機雷デリバリー用意! 発射」
『了解。弾頭を機動機雷にセット。デリバリー発射します』
デリバリーとはその名の通り、各種弾頭を運搬する為のミサイルだ。私は敵の奇襲に備えてデリバリーに機雷を搭載し発射をイクスショアラの管制AI命じる。
『グリッド276にワープアウト反応』
「ビンゴ!」
『機雷の着弾を確認。前衛の駆逐艦隊3割消失』
予測的中!! 敵が機雷原に突っ込んで吹っ飛んでいく。爽快な気分だね。
「よし! このまま艦隊中央へ切りこんで戦艦を叩くよ!」
イクスショアラは、第七次元にまで達した超高度文明によって建造された機動兵器だ。そこいらの星間文明の兵器とは桁違い性能を持っている。
腕部の大口径プラズマインパクトガン。尾部の80連装ホーミングフェイザーからは絶え間なくビームが放たれ、小型の艦艇は一撃で、1000メートルを超えるような大型の戦艦でも、雨の様に放たれるホーミングフェイザーに瞬く間にハチの巣にされて爆散する。
瞬く間に数百の敵艦を沈めるイクスショアラだが、決して戦いは楽ではない。リデルタ防衛用にアスラネットワークサービスが与えた守護神は、イクスショアラ一機だけ。いくら高性能なイクスショアラでも、数千単位で押し寄せてくる艦隊への対処は厳しい。駆逐艦一隻。いや、揚陸艇一隻なりともリデルタに侵入させたらこちらの負けだ。リデルタに住む人々には、星の海を越えて侵攻できる文明に対抗する術が無いのだから。
は? 神様? 神様に祈って助かるなら戦争で国や星が滅びたりしないよ!
圧倒的物量にたったひとりで対処する。少しのミスでリデルタに住む数千、数万の人が死ぬのだ。私は神経をすり減らしながら、押し寄せる大艦隊に対処する。だが、そこに新たな脅威が姿を現した。
『グリッド838。ワープアウト反応。時空怪生物バルババイラを確認』
「こんな時に!? 近接で仕留める。スターキャリバーにトランスフォーメーション!!」
攻めてくるのは侵略を目的としたエイリアンだけではない。宇宙には惑星を破壊する危険な生物も存在する。
巨大なヒトデのような姿の時空怪生物バルババイラは、惑星に張り付くと内核にまで達する針を突き刺してマグマを吸い尽くしてしまう。まあ、惑星ひとつ分のマグマを全部吸い尽くすまでには1万年くらいかかるみたいけど、地殻変動とバルババイラが噴き出す高温の二酸化炭素によって、地上の生物は数日で死滅するとされている恐ろしい怪物だ。
スターキャリバー形態になったイクスショアラは、機首を形成するラピッドエッジをドリルのように回転させてバルババイラをずたずたに切り裂いた。その間もホーミングフェイザー、プラズマインパクトガンの連続発射で、エイリアンの艦艇への砲撃の手は緩めない。しかし、敵艦の数は多く、イクスショアラは熾烈な砲火に晒されて流石に無傷とはいかない。
『機体にダメージ。砲撃力2割損失』
「ダメージコントロールスタート! 機動力の維持を最優先。足だけは絶対殺すな!」
ワープやタキオン兵器が飛び交う超光速戦闘は10万分の1秒の中での戦いだ。僅かでも足が止まればたちまち集中砲火の餌食となる。
突然目の前にワープアウトしてきた敵駆逐艦。火砲を使わず鋭い衝角で体当たりしてくるつもりのようだ。至近距離でのワープアウトを予測する警報は出ていたが、乱戦の中では流れてくる情報量に頭の処理が追い付かず対処が遅れる。
幸い直撃はせず機体をかすめるに止まった。体当たりしてきた駆逐艦はラピッドエッジで切り裂かれて爆散する。だが、左腕部のプラズマインパクトガンがもぎ取られていた。
『機体にダメージ。左腕プラズマインパクトガン使用不能』
「ちぇっ!」
主砲をひとつ失って私は舌打ちする。プラズマインパクトガンだけでなく、尾部のホーミングフェイザーの砲門やラピッドエッジも幾つか破損している。
『グリッド444に宇宙鮫の群生が出現しました。数1309……修正。26872』
「にゃっ!?」
鮫だと!?
まったく! 次から次へと!?
宇宙鮫は亜空間を泳いでくる肉食の次元生物だ。体長は20メートル程度で決して強くはないが、亜空間から突然襲ってくるから対処が難しい。
いけない! 一匹でもリデルタに侵入を許せば、B級鮫映画が現実となって、世界が恐怖と絶望に包まれてしまう!
『戦術具申。エリクシルの起動を推奨』
「却下!」
AIがおすすめしてきたエリクシルとは、世界を3次元世界に修正するイクスショアラに搭載された機能である。
簡単に言えば、エネルギー保存の法則を無視するような魔力だの気力だの超能力だのを全て無効にできる対チートシステムだ。3次元物理法則に基づいたテクノロジーと、勇気とガッツでの勝負に持ち込むことができればイクスショアラに敵はいない。神や精霊、バルババイラや宇宙鮫のように、通常あり得ない謎パワーで生きる宇宙生物はその場で消滅させることが可能である。
チート消滅機能エリクシル。私はこれをチートモンジャマーと密かに呼んでいたしするんだけど、私がこの便利なチートモンジャ……エリクシルを使いたくないのには理由がある。例えば、ここが地球なら別に問題ない。摩訶不思議な力が消えたところで社会に影響は無いだろう。
たぶんだけど。
だけどね。ここリデルタは神様や精霊や悪魔が存在する3.2次元世界なんだよ!
次元隔離を行った瞬間、世界から神様や精霊は消滅し魔法も使えなくなる。そして、その力を借りて生きている亜人種や魔獣は全て死滅してしまう。神様や精霊ならエリクシルを解除すればまた復活するだろうが、死んだ生物は生き返らない。フィンレに保護されている分には助かるが、他にも多くの亜人種や魔獣がリデルタには生きている。私は守護者としてそれらを最後まで護り抜く義務がある。
魔獣や亜人種が人と共に生きる世界がリデルタだ。守護者としてでなくても、私はひとりの住人としてこの世界を護りたい。
「対亜空間爆雷用意……投下!」
『対亜空間爆雷投下します』
イクスショアラには、亜空間に潜む潜界艦や次元生物に対抗するための武装も当然装備されている。
投下された爆雷は次元振動波で亜空間に穴を開けて、範囲内の異物を強引に通常空間に放り出す。
爆雷によって通常空間に打ち上げられた宇宙鮫。すぐに動かないのは、次元振動波をうけて麻痺しているようだ。
「広範囲に広がってるね。プラズマボムで殲滅がよさそうかな?」
プラズマボムは広範囲をプラズマの嵐で焼き尽くす兵器だ。効果は広く浅くで、艦艇相手には装甲を焦がす程度だが、艦載機や宇宙鮫を纏めて焼き尽くすには丁度いい武装である。
『デリバリーの残弾がありません』
しまった……機雷撒くのに使っちゃったんだ。
『戦術具申。エリクシルの使用を推奨』
「却下っ!!」
私は突っ込んできたエイリアンの駆逐艦をキックで破壊すると、宇宙鮫の迎撃に向かう。
「対空砲一斉射撃!」
機体各所に計12基搭載された、対空迎撃用の収束フォトンレーザー砲から発せられた光の糸が宇宙鮫薙ぎ払っていく。しかし、如何せん数が多い。麻痺から回復した宇宙鮫が、レーザー砲から発せられた光の糸をかいくぐって嚙みついたり体当たりしてくる。鮫に破壊されるようなイクスショアラではないが、鬱陶しい。
その時機体が大きく揺れた。宇宙鮫に気をとられているところに、エイリアン戦艦から良い一撃を食らったのだ。
「いったぁ~~!」
『機体にダメージ。第5スラスターに被弾。機動力低下、ダメージコントロール開始。複数の艦艇からのロックオンを検知しました』
まずっ!
宇宙鮫を片づけたが、エイリアン艦隊の攻撃は続いている。なんとか生き残っている他のスラスターで体勢を立て直したが、敵は機動力が低下した一瞬の隙を見逃してくれなかった。駆逐艦と巡洋艦がイクスショアラを取り囲んで砲門を向ける。
やられる。そう思った時……
『敵ビーム兵器の量子周波数暗号の解析が完了しました』
エネルギー兵器は強力だけど、実は荷電粒子砲をはじめとした非実体弾兵器っていうのは簡単に曲げられるし消すことが出来る。そこで、敵に無効化されないように、発射されるビームには量子的な暗号がかけられている。
次元兵器とか重力兵器とか反物質兵器とかは、この暗号化が出来なかったり、非効率だったりでほぼ廃れたっぽい。イクスショアラの武装は荷電粒子砲といったビーム兵器が基本だ。結局シンプルなのが発展して生き残るんだね。
そんなわけで、もし暗号が解析されてしまったら……
敵艦隊が一斉に主砲を放つ。
「反射開始!」
『敵ビーム兵器を反射します』
放たれた火線はイクスショアラに届く前に反射され、周囲を取り囲んでいた敵艦は自分が撃ったビームを受けて爆散する。
「ふぅ、間一髪だった!」
包囲を突破するイクスショアラ。敵はすぐに暗号を変えてくるだろう。この手が使えるのは一度だけだ。
『第4惑星裏側に機動空母を確認』
戦術AIがエイリアンの母船を発見したことを告げる。葉巻型で全長は惑星リデルタの3分の1といったところ。どうやらお隣の第4惑星の影に隠れていたようだ。
「ほんと次から次へと……」
『戦術具申……」
「却下」
これ以上敵を増やされないためにさっさと潰してしまおう。私は有象無象を無視して敵空母を殲滅することにした。
イクスショアラの最高速度は光速の12倍。光速でも約3分かかる第4惑星までの距離を10秒程で移動して空母をプロミネンス砲の射程に収める。
「ヒステリックエンジン出力最大! 目標敵空母!」
高次元宇宙と3次元宇宙との矛盾に宇宙が叫び狂い、女性の金切り声のような甲高い音が響き渡る。有り余るエネルギーが機体の外に溢れ出て、イクスショアラの全身が光り輝く。頭部のポニテ状のパーツが逆立って、まるで超サイ……何でもない。
背部に折りたたまれて懸架されていた二門のプロミネンス砲が前方に展開する。私はチャージがを完了したのと同時にトリガーを引く。
「プロミネンス砲デュアルフォーメーション! 発射!」
プロミネンス砲の火線は第4惑星の軌道上を沿うようにぐにゃりと曲がってエイリアン空母を撃ち抜いた。燃え上がりながら第4惑星の重力に引かれて落ちていくエイリアン空母。
その破片のひとつが不自然に砕けた。そこから飛び出して来た何かが、イクスショアラの装甲をかすめる。
「何いまの?」
『データベースに無い機動兵器を確認しました』
空母の残骸の中に何かいる。モニターに映るその機影は人型をしていた。イクスショアラと同格の巨大ロボットだ。だがそのロボットには右の前腕が無い。と思ったら、何処からともなく戻ってきて合体する。
ロケットパンチだと!?
機体は満身創痍。そこに現れた強敵。
熱い展開じゃないか。
「やれるね。イクスショアラ!!」
そしてスロットル全開。敵のロボットに向けて鋼の拳を振りかぶる。
「えりゅたんぱぁぁぁぁぁんち!」
光速の鉄拳。だがそれは最小限の動きで躱された。次の瞬間、モニターいっぱいに映し出される敵ロボットの拳。
クロスカウンター!?
衝撃、暗転。
そして……
『本機は撃破されました。戦闘シミュレーションを終了します』
✤✤✤
「戦闘時間3分11秒。撃破は戦艦8、巡洋艦98、駆逐艦628。バルババイラ1体。宇宙鮫26869……3匹逃がしましたね。評価はD。反省会をしましょうか。守護者様」
芳しくない成績に肩を落とす私にヘキサ様はにっこりと微笑んだ。
読んで頂きましてありがとうございます。




