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先生! ぽにみゅらさんがまた性癖を満たそうと暴走しています!

 太陽が丁度真上に差し掛かった頃、捕えられていたウェアウルフ処刑が行われた。


 私の指も食い千切り、カノンのお母さんも殺したというあのウェアウルフだ。名前はポチローというらしいが、流石に今は笑う気にはならない。


 手足を切断され、大量に血を失ったポチローは、もう長くはないということもあって、この場での処刑が決まった。今は地面に打ち付けた杭に縛り付けられてその時を待っている。


「言い残すことはあるか?」

「に……く……そいつの……肉を……」


 最後に何か帝国側の情報を漏らすかもしれないと期待したオバリー大尉だが、ポチローはうわごとの様にエルフの肉を求めるのみ。


「ふん。まぁいい。よろしいですか? カノン様」

「はい」


 ポチローの処刑にあたって、カノンは自ら執行人となることを志願した。


 当然6歳の少女にやらせるような事ではない。オバリー大尉を始め、護衛部隊の隊長達も最初はそれに反対した。しかし、ポチローがカノンにとって母親の仇であること。カノンが精霊を通じてその一部始終を目撃していた事をセフィリア様から説明されると、皆沈痛な顔をして、カノンによる処刑を認めた。


 幼いからと言って仇討ちの権利を奪うことはできないという理由だ。


 私は遠くからカノンの背中を見守る。


「私の……私のお母さんはおいしかったですか?」

「……ああ?」


 生気の無い、虚ろな目がカノンを見た。


「1年前に、おまえが殺して食べたエルフです。そんなにおいしかったんですか?」

「あ、ああ……お前あのエルフの娘か……ああ、最高に美味かったぜ……俺は忘れられねぇんだ……あの味がよぉ」


 当時の記憶を思い出しているのだろう。だらしなく緩んだポチローの口から、血の混じった涎が垂れる。ポチローは尋問中に特徴である犬歯をはじめ、多くの歯を失っている。


「血の一滴でいいからくれよ……なぁ……頼むよ……その後、殺してくれていいからよぉ」

「いや!! おまえなんかに、もう何もあげるもんか!!」


 その声はまるで悲鳴のようだった。カノンの手に炎が生まれる。一度は暴走しカノンを取り込んで暴れた炎の精霊王(サラマンドラ)だが、今や主導権は完全にカノンにある。


 灼熱の火焔が迸り、ポチローを包み込む。一瞬で内蔵まで焼かれたポチローは、悲鳴を上げることさえできなかった。


「……カッ……カッ」


 全身が炭と化し、数度咳き込んでポチローは息絶えた。縛り付けていた縄も杭も焼け落ちて、亡骸は乾いた音を立てながら地面に崩れ落ちる。


「カノン!!」


 処刑は終わった。私はカノンの元へと駆け寄ると、その場に膝をついて、大粒の涙が溢すカノンを、ぎゅっと胸に抱きしめる。


「やりましたよ。シーリアさま。私、お母さんの仇を討ちました」

「うん。見届けたよ。頑張ったね。本当に頑張ったね……」


 カノンの嗚咽を聞いてるうちに、私も瞼が熱くなって涙が流れてきた。抱き合って泣く私とカノンの肩をオバリー大尉がそっと抱く。


「しょうがねぇなあ。ほら、こんなとにいつまでもいるもんじゃない。行くぞ」

「ん。行こう、カノン」


 オバリー大尉に手を引かれて、私達は死臭の漂うその場を離れる。


 するとそれを待っていたかのように、背後から幾つもの鳥の羽音が聞こえてきた。早速ポチローの亡骸を啄もうしたのだろう。だが、炭しか残っていないと抗議するかのように、鳥達は情けない声を響かせた。



✤✤✤



 夕刻。昨日の戦闘の勝利と餞別を兼ねて、ささやかながら宴が催された。


 明日には精霊の森に入るが、精霊信仰の聖地である森に大人数の護衛は入れない。寂しいけど護衛の皆さんとは森の手前でお別れだ。彼等は私がフィンレでの滞在を終える半年後にまた迎えに来ることになっている。


「よいしょぉぉぉぉぉ!!!!!」

「ふぬっ!! なんのぉぉぉぉぉ!!!!!」


 力自慢の兵士ふたりが、がっぷり四つの大相撲を繰り広げる。


 センチュリオンの宴に相撲はつきものだ。筋肉を愛するこの国の民はとにかく力比べが好きなのである。特に騎士や兵士といった輩は事あることに褌一丁になって鍛え上げた肉体をぶつけ合う。


 屈強な兵士による相撲は迫力十分で、見応えがある取り組みが続く。特に今日は私やセフィリア様といったVIPが観戦していることもあってかいつも以上に熱が入っているようだ。


 前世で日本人だった私だけど、元々そんなに相撲が好きだったわけではない。勝負事が苦手だったし、まわし姿の男の裸にも興味はなかった。でも、この世界に転生してそれが変わった。今や立派なセンチュリオンっ子である私は、相撲は見るのもとるのも好きになっていた。


 一番のきっかけはこの間の相撲大会でカノンに負けたことだろう。あの時、無茶苦茶悔しくて、それから頻繁に勝負を挑むようになって、私は全力で競い合うことの楽しさを知った。


 レノア達や兵士達の取り組みを見るのも面白い。


 男同士の力強い相撲。激しくも美しい女相撲。矜持をかけた男女相撲。


 見ても()()()()相撲は楽しい。


 センチュリオン王国は男も女も関係なく、皆褌一丁になって相撲を楽しむお国柄だ。日本人の魂と、センチュリオン人の血が流れる私が相撲を好きになるのは必然だったといえる。


「どうだ坊主。俺と一番やらないか?」


 やがて、ひとりの兵士が、またもやメイド服姿でレノアと給仕係をさせられていたリオン君に絡み始めた。


「え? い、いや僕は仕事がありますので……」

「いいじゃないか。勝負を挑まれて逃げるなんて男らしくないぞ?」

「えっと、大尉!? 姫……じゃない……ブレイウッド二等兵!?」


 相撲で勝負を挑まれたら特別な理由がない限り、受けるのがセンチュリオンっ子の常識だ。実際、センチュリオン人にとって相撲をとることは相手を知るためのコミュニケーションのようなもので、公式の試合でもなければ勝敗はあまり気にしない。逃げたらヘタレ呼ばわりされたり、やましい事があるのではと疑われたりすることもある。


 あと、八百長は最も嫌われる行為である。


 リオン君が助けを求めるような視線を向けてくるが、私もオバリー大尉も笑顔で彼を突き放す。


「揉まれてこい」

「ブウンヲイノリマス」


 私達のお許しが出ると、兵士達はそれは良い笑顔をして、リオン君の身ぐるみを剥がす。こうして、あれよあれよという間に、彼は地面に線を描いただけの即席の土俵に上げられてしまった。


 まあ、とって食われたりはしないだろう。


「負けるなリオン!」

「頑張って!」

「う、うん。恥ずかしくないように精一杯頑張るよ」

「フハハハハ!! 覚悟はいいか? グランス二等兵」

「男爵公子殿。次は俺とやろうじゃないか」


 無理やり土俵に上げられて腰が引けていたリオン君だけど、可愛い婚約者の応援を受けてやる気になったようだ。同時に独身の兵士達の殺る気も跳ね上がる。兵士達の大半は独身だし仕方ないね。我ら最果て警備隊。月と星と荒野に咲く花が恋人なのさ。


 案の定、リオン君は嫉妬に燃える兵士達によって散々可愛がられた。


 兵士達も本気は出していないし、リオン君も頑張っているが、狼とチワワ程の体格差はいかんともしがたい。リオンくんは何度も土俵に転がされて、あっという間に全身土まみれだ。


 だけどその姿を無様とは思わない。今のリオン君は、相撲大会で女の子の裸を直視できずにあっさり負けた時の彼ではないのだ。倒されても何度だってぶつかっていくリオン君の目は輝いていて、心から相撲を楽しんでいるのが伝わってくる。


 そうなれば当然応援する側にも力が入る。だけどレノアやファーファが応援すればするほど、兵士達は嫉妬の炎を燃え上がらせる。


 こうして一皮も二皮も剥けたリオン君を狙うのは、なにも男性兵士だけではなかった。


「あら、男ばかりで彼を独占するなんてずるいじゃない」

「そうよ! ねぇ、お姉さんともやりましょう?」


 女性兵士のお姉様達である。


 リオン君は女性兵士から密かに人気がある。見た目は可愛いし、普段ちょっと頼りなさそうなところが母性本能をくすぐるのだろう。それでもやるときはやる子だから、ギャップでキュンとなってしまうってのは、私もよくわかる。


 とはいえだ。リオン君は婚約者のいる貴族令息。おいそれと手が出せる相手ではない。普段は遠目に眺めるだけで満足していた彼女達も、褌一丁で頑張るリオン君を見てついに辛抱たまらなくなったらしい。肉食獣のような目をした彼女達に、男性陣もドン引きだ。


「ちょっと待てや!! おばさん達!!」


 ・


 ・


 ・


 レノアである。


「年甲斐もなく、人の婚約者に手を出さないでください」

「リオンには触れさせません!」


 婚約者を護るべく、女性兵士達の間に割って入るレノア。それにファーファも続く。


「オバリー大尉。いいんですか?」

「ああ。あいつらは目立つからな。こういったトラブルは避けては通れなかっただろうさ」


 混沌としてきた状況に、私はオバリー大尉に止めるべきか伺いを立てたが、どうやらオバリー大尉は止めるつもりは無いらしい。


 確かに婚約者を連れて同期入隊というのは珍しいし、3人とも美形だ。それぞれに少なくないファンがついており、オバリー大尉の言う通り、トラブルは避けられなかっただろう。


 厳しいようだが、このくらい自分達で解決できなければ、今後3人揃って兵役をこなせるとは思えない。


 レノアとファーファは見た目よりずっと強い。だからきっと大丈夫だと私は信じることにした。


 女性兵士のふたりははいずれも騎馬隊に所属する、レノアとファーファの先輩だ。


 女性の活躍が著しいセンチュリオン軍だけど、多くは結婚を期に退役する。既婚女性の兵士がいないわけではないが、大抵は事務職など後方に回され、現場に出ることはほとんど無い。その為、現場に出ている女性の兵士は若い子ばかりで、絡んできたお姉様達も10代後半の女の子である。


 12歳のレノアにとってはおばさんなのかもしれないけれど……いい度胸だ。


「ふふふ、いいわ。まずはあなたから可愛がってあげる」

「望むところです!」


 精鋭部隊にいるだけあって、お姉様達は揃って長身で威圧感が凄まじい。


 先輩兵士の圧力に一瞬たじろいだものの、レノアもファーファも後には引けない。男達に代わり、彼女達が服を脱ぎ捨てて土俵に上がると兵士達から歓声が上がる。結局男というのはメイド服よりも裸が好きなのだ。


 私? 私は着衣派だよ? 可愛く着飾った女の子から、ちらりと見えちゃいけないものが見えるのが良いんじゃないか。


 向かい合ってお互いを睨みつける、レノアと女性兵士。


 170センチを超えるお姉様達に対して、レノアの身長は160センチくらい。ファーファは150センチ半ばだけど、胸のサイズは十分張り合えてるから、体重はそんなに変わらないだろう。リオン君と男性兵士の皆さんと違って、レノア達とお姉様達との間には、そこまで大きな体格差は無い。


 はっけよい!! 行司を務める兵士の掛け声。その瞬間バチンと音を立てて、お互いの頬を張り手で撃ち合う。


 凄いよレノア! 気迫で負けてない!


 だけど、組みつかれた後は一瞬だった。地面に叩きつけられるように吊り落されるレノア。だけど、レノアと入れ替わるように、今度はファーファがぶつかっていく。


 喧嘩相撲は相手が降参するまで何番も行われる。実力で上回る先輩兵士を相手に、レノアとファーファは何度倒されても立ち向かっていく。私は手に汗握って彼女達を応援した。レノアがふらふらになりながらも、うっちゃりを決めて勝利した瞬間なんて声を上げて喝采を送った。それが決め手となって、ついにお姉様達が白旗を上げた。


 相撲での勝率は圧倒的に負けていた。でも、勝ったのはレノアとファーファだ。土に塗れ、痣だらけになりながら見事リオン君を守り抜いたのだ。


 すごい。レノアもファーファも、相手をしていた女性兵士達も皆かっこよかった。やっぱり、相撲って楽しい。


 興奮冷めやらぬ私は、カノンを勝負に誘おうとする。見ている間に自分も相撲がとりたくなったのだ。ところが隣にいたはずのカノンはいつの間にか姿を消していた。


「あれ? カノンは?」

「あ? そういえばさっき向こうの茂みの方に行ったが、小便にしては長いな。クソの方か? 痛っ!?」


 そりゃ、エルフだろうが王女だろうが出すもんは出すけどさ。


 私はデリカシーの無いオバリー大尉の脛を蹴り飛ばすと、盛り上がる兵士達の環から離れてカノンを探す。見張りをしていた兵士は把握していたようで、彼に聞くとすぐに茂みにいるカノンを見つけることができた。


「カノン? ここにいたんだ。探したよ?」

「シーリアさま。心配かけてごめんなさい。獲物が罠にかかったと精霊が教えてくれたので」


 カノンの言う通り、草の弦で作った括り罠に野兎がかかっている。薄茶色の毛並みはもふもふで、肉付きも良い。


「うわぁ、可愛い」


 可愛らしい姿に私は目を輝かせる。だけどそんな私を尻目に、カノンは腰から愛用のナイフを抜く。可愛らしい野兎もカノンにとっては上等な獲物でしかないらしい。


「時間をかけると他の獣に横取りされてしまいます。それに痛くて苦しいはずだから、早く楽にしてあげないと」

「カノンって本当に逞しいよね」


 狩りが好きなカノンは、捕まえた獲物を自分で捌いて、自分で調理して自分で食べる。


 でも、捌いてるときも食べているときも、あんまり楽しそうじゃないことに気付いていた。


 まあ、笑顔で獲物を捌いていても怖いし、それも普通かなって思っていたけれど、昨日、セフィリア様からカノンのお母さんの最後を聞いて理由がわかった。


 カノンはお母さんが殺された時の怒りを忘れないように、あえて狩りをしていたんだと。


 殺されて食べられたお母さんの姿を忘れないように、獲物を捕え、自分で捌いて、食べていたのだと。


 それならもう狩りは終わりでいいんじゃないか? カノンはもうお母さんの敵を討ったのだから。


「ねえ、逃がしてあげよう? お母さんのことを忘れろとは言わないけど、つらいことまで思い出さなくてもいいじゃない」

「シーリアさま……」

「ね? 食べ物はいっぱいあるんだしさ。わざわざ狩りをする必要はないよ」


 そう言って私は野兎の足に絡まった弦を外そうとする。だけど、その手はカノンによって遮られた。


「カノン?」

「いけませんシーリアさま。既に足を痛めたこの子はもう生きていくことはできません」


 カノンの言う通り、弦は野兎の足に食い込み血がにじんでいる。ここで放してもすぐに肉食の鳥や獣といった、捕食者の餌食になってしまうだろう。


「でも……」


 傷なら私が治してあげられる。そう言おうとしたが、その前にカノンがナイフで野兎の首筋を切り裂いた。迷いのない鮮やかな手並みで命を摘み取る。


 悪いとは言わない。ただちょっと悲しかった。


「カノン……」

「シーリアさま。お肉を食べないと力がつかないですよ?」

「それはそうだけど」


 カノンは野兎の首と尻尾を切り落とすと、棒に逆さに括りつけて血抜きを始める。慣れた手つき。首を落とすのにも一切の迷いも、ためらいもなかった。


「シーリアさま。私はたしかに炎の精霊王(サラマンドラ)を繋ぎとめるためにこれまで狩りをしてきました。私には炎の精霊王(サラマンドラ)の力が必要でしたから。でも、それだけのためではありません。力をつけたくて、強くなりたくて、私はお肉を食べてきたんです。この子も、責任をもって美味しくいただきます」

「カノン……カノンはもう十分強いよ」


 カノンは炎の精霊王(サラマンドラ)の守護に加えて、なんと水の精霊王の守護も得たらしい。二柱の精霊王の守護を受けたのは歴史上初めてなようで、セフィリア様はそれはもう喜んだ……と言いたいところだが、子供のように悔しがっていた。その時の様子は、ハイエルフの名誉のためにあまり語らないでおいておく。


 そんなこともあって、今やカノンは、この世界で最強の一角にあるといって過言ではない。


 だけど、カノンは全力でそれを否定する。


「いいえ!! 全然足りません!! 昨日の戦いでそれがよく分かりました!! せめて4大精霊王全ての力を使えるくらいでないとシーリアさまと並んで戦うことなんてできません!!」

「カノン……私自身は大したことないよ? お相撲だって、駆けっこだって、私はカノンに勝てないんだから。守護者の力はただヘキサ様に与えられただけ。そんなのにカノンが必死になって付き合う必要なんてないんだよ」


 『プロミネンス砲』もSFXー0も努力して得たものではない。ただ偶然、私だっただけ。それだけだ。それだけで、世界を護るっていうとんでもない責任を負わされてしまったわけだけど、そんなのにカノンを巻き込むつもりはない。カノンにはこの世界で普通に平和に生きて欲しいと思う。


 ハイエルフの普通なんて知らないけどさ。


 それでもカノンは小さく頭を振る。


「私だって偶然ハイエルフに生まれただけです。なのに色んな人から崇められて、ちょっとだけ得意になってたんです。それに、私は心の奥でシーリアさまのことも見くびっていました。私より力も弱くて、体力も無い。優しくて甘いシーリアさまを、私が護らなきゃいけないんだって思っていたんです。だから昨日、この世には精霊王すら及ばない力があると知ってショックでした。シーリアさまに負けて、私の自信は粉々に砕け散りました。だから、今度は負けません。私はもっと強くなって、必ずシーリアさまの隣に立って見せます」


 それはきっと宣戦布告だったんだと思う。ファンタジー世界からの宣戦布告だ。


 まっすぐにわたしを見つめるカノン。翡翠の瞳はまるで燃えているかのように輝いて見えた。

この時期の幼馴染3人組の身長はあまり変わりません。レノアとリオンはこれからまだ伸びますがファーファの身長はここで止まって代わりにおっぱいが育っていきます。


レノア162cm

ファーファ155cm

リオン157cm


体重はレノア>ファーファ>リオンの順。


読んで頂きましてありがとうございます。

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