アンノウン
最近女相撲界隈でまわし派とふんどし派で論争が起きています。読者の皆さんはどちらが好きですか?
わたしはふんどし派です。
まわしなら体操着の上からや、スク水の上からがいいですね。
いえ、特に関係ないですけど。
アスラネットワークサービス管制室。静寂を取り戻したその部屋で、ヘキサは事件の後始末に追われていた。
「まったく。アンドロイド使いが荒いですね~♪」
報告書の作成。
SFXー0のメンテナンスとアップグレード。
現地文明への影響のシミュレートに対策と、やることは多いが他にクルーもいないため、全て彼女がひとりで行う。しかし、彼女はそれも苦にならなかった。むしろ鼻歌を歌いながら、嬉々とした表情でそれらに取り組んでいる。
「ふんふふ~ん♪ 作戦成功。カノンも無事で生命の大勝利ですね!!」
炎の精霊王の暴走に対し、守護者もSFXー0も初陣にしては上出来な成果を上げた。守護者の状況の理解が早く、説明の手間もほとんどかからなかった。しかもカノンが無事救出された。
カノンが助かったのは本当に予想外だった。
肉体的にも精神的にも幼いカノンが灼熱の精霊王の内部で自我を保ち続けられるはずがない。救助出来たとしても廃人と化していることが予想され、医療技術が未発達なこの世界では回復は望めなかった。
ヘキサにとってエルフ、特にハイエルフは長い時を共に生きる大切な友である。しかし、だからといって守護者以外の現地人を、アスラネットワークサービスの医療技術で助けることは認められていない。
助けることができたのは、守護者エリュシアリアが闘いながら常にカノンを呼び続けていたからだ。おかげでカノンの意識は精霊王と同化することなく、消滅を免れた。それどころか精霊王の意識を跳ね除けて乗っ取ってみせた。
精霊王という上位次元の存在に対して人間の、それも年端の行かぬ少女が抗い、打ち破った。それは戦闘での勝利以上の意味がある。
おかげで地と水の精霊王の協力要請もとりやすかった。特に水の精霊王は自ら進んで協力を申し出た程だ。
「友情と絆。そしてド根性! 生命が有限だからこそ掴むことができる奇跡。いいなぁ、いいなぁ……」
ヘキサは命あるものが好きだった。そして羨ましかった。
生きるために必死になること、未来を模索し足掻くこと。幾千年の時をただ役割をこなしながら生きてきた。いや、稼働してきたヘキサには無いものだ。
彼女と同じアルコード文明に生きる人々が、より人間らしい生き方に惹かれ、自ら悠久の自由を捨てて、有限で不自由な惑星への移民を求めたのも理解できる。
私もいつか……
役目を終えたら生身の肉体を貰い、ひとりの人間として生きてみたい。
恋をして、子孫を残し、やがてこの星の土に還るのが彼女の夢である。
だからこそ……
ヘキサの顔から笑みが消えた。打って変わって悲し気な顔となりモニターへと目を向ける。
「SFDDSー6。後継機が気になって覗きに来ましたね」
管制室のモニターには衛星軌道上に潜む一隻の艦船の姿が捕えられていた。全長400メートル程の竜を意匠した漆黒の船だ。
それは護れなかった世界の忘れ形見。
漆黒の船はやがて宇宙の闇に消えていく。ヘキサは黙ってそれを見送った。
ヘキサは目を伏せると、そこにいない人物に対して頭を垂れる。
「あなたの人生を奪ってしまった私達の罪、いつか全てお話することになるでしょう。でも今は、どうか未来に囚われることなく、存分に生きることを楽しんでください。守護者……サクライアンズ様」
読んで頂きましてありがとうございます。
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