天空の剣
世界観壊れるかもしれませんがこの物語は元々こういうお話です。ファンタジーを相手にSFの力で頑張るヒロインの物語をお楽しみください。
惑星リデルタ。神がいて精霊がいて、人と魔獣が覇権を奪い合いしのぎを削りあう世界。だが1000年前。リデルタに新たな勢力が加わった。それが別の宇宙から時空を超えて現れた、アルコード文明圏からの入植者である。
時間と空間さえ操る程の文明を築き上げたアルコード文明人。しかし、彼等は滅亡の危機に瀕していた。どんな願いも叶う世界で、人々はただ生きるという苦痛だけを背負う日々。彼等は夢と希望を失っていたのである。
そこでアルコード文明人は種の存続の為、あえて文明を捨て、人間としての回帰を果たす為、他惑星への入植計画を発足させる。
彼等は夢と希望。そして浪漫を取り戻すため、リデルタへとやってきた。
入植にあたり、アルコード文明人とリデルタの神、精霊の間で約束が交わされた。
ひとつ。リデルタに住む人々に過度な技術や知識を与えないこと。
ひとつ。惑星の危機に対してその防衛を担うこと。
それらを護ることを条件に、入植が許されたアルコード文明人は、入植管理機関アスラネットワークサービスを設立。当時荒れ地だった中央大陸北西部、現在の北西諸国連合がある地域の開拓を開始する。魔獣をより住みやすい環境を整えた森へと移し、荒れ地をテラフォーミングすると、当時その地を収めていた小国家群に入り込んで力を与えた。
アスラネットワークサービスは神、精霊との約束と、他文明への武力干渉を制限する自らの法に則り、リデルタを護るための防衛システムを構築する。
あらゆる外敵を打ち破る機動兵器と、そのコアとなる存在。
神が力を与え勇者を誕生させるように、アスラネットワークサービスが力を与える人工の勇者。それが守護者であり、我らがエリュシアリア姫である。
✤✤✤
森都フィンレ。その正体はリデルタ上空を飛行する巨大なジオリウムだ。全長200キロ、表層面積3万5000平方キロメートルに及ぶ人口の大地の中央には、地上とフィンレを繋ぐ八角形のゲートが開いており、その上空にはカットされた宝石のような、多面体の建造物が浮かんでいる。それこそアスラネットワークサービスリデルタ支局の中枢でありその名をヘキサベースという。
「終末警報レベル3発令! 第一警戒態勢。ゲート封鎖! 機動ジオリウムフィンレはコマンドモードへシフトします!」
ヘキサベースが降下し、栓をするようにゲートを塞ぐ。
入植が始まってから1000年余り。その日、初めてヘキサベース管制室に警報が鳴り響いた。
炎の精霊王は現在風の精霊王によって抑えられている。だが、それは思わぬ……暴走以上の危機を生み出していた。
風の精霊王によって強引に押さえつけられた炎の精霊王だが、その膨大な熱量と質量は足元の土壌を融解させ、メルトダウンを引き起こしていたのである。
アイアンライン周辺の地下には大量の天然ガスが埋蔵されている。炎の精霊王がこれに接触、引火した場合、膨れ上がったエネルギーは地盤とマグマを押し上げ、大陸が割けるほどの地殻変動へと繋がることが判明。それは惑星全土で火山の噴火、地震、津波を引き起こし、直近で1000万人。火山灰による農作物への影響から3年以内にリデルタ全人口の8割以上が死亡すると予測したアスラネットワークサービスは、初の災害防衛行動を発動。守護者の実戦投入を決定した。
空前絶後の惑星の危機。だが、それに対処する管制室には年端の行かない少女がひとりいるだけだ。彼女の名はヘキサ。アスラネットワークサービスのインターフェイスアンドロイドである。
「現在の守護者はSFXー0本体のマニュアルがインストールされていないため、オプション兵装の一部しか使用できる状態でしかありません。そこで、SFXー0を現地に送り、その場で稼働に必要な最小限のマニュアルをインストール。直接戦闘でエレメント02を制圧します」
SFXー0。それはアスラネットワークサービスが惑星リデルタに与えた守護神の名。
惑星防衛用の兵器であるSFXー0は、本来ならば地上で原生生物が暴れる程度で使用許可が下りる事は無い。それらはそこに住む人々が力を合わせて乗り越えるべきものだからだ。だが、今回は想定される被害の大きさと、守護者であるエリュシアリアが既に現地にいることから、異例ではあるがヘキサはSFXー0の出動を決定する。
「SFXー0緊急発進!」
何重にもかけられたセーフティが解除されメインシステムが立ち上がる。
「ミッションプログラムインストール。ヒステリックエンジン起動出力へ!」
格納庫のエレベーターに乗せられて発進位置へ移動する。ゲートが開き、SFXー0の全容が陽光に照らされる。
それは全長180メートル。重量3000トンに及ぶ、剣をモチーフとしたような大型の航空機だった。
最後の拘束が外され、その巨体が浮かび上がる。
「さあ、行きなさい。あなたの半身の元へ!」
くびきを解かれ出撃するSFXー0。その速度は一瞬で亜光速に達し、青白いスラスターの残光を残して見えなくなる。
惑星最強の防衛システムを送り出したヘキサは、胸の前で手を組んだ。
彼女に出来る事はここまでだ。リデルタの運命は幼き守護者に託された。
運命はその星の人々の手で切り開かれるものであり、アスラネットワークサービスはチャンスを与えるに過ぎない。守護者が敗れ、星が滅びたとしても、それも運命だ。
けれど、1000年リデルタを見守り続けてきた彼女にとって、そう簡単に割り切れる者ではない。
「守護者よ、どうかこの星と……友人達をお救いください」
アルコード文明では既に神も精霊も科学で解明されている。神に祈っても無意味な事を彼女は知っている。それでも、誰かの為に祈ることを忘れてはいなかった。
✤✤✤
「なんだありゃ……」
空を見上げ、俺、ランド・オバリーは呟いた。
とにかく俺にとって、今日は人生で二番目に最悪な日だ。因みに一番目は王立修学院の卒業を間近に控え、当時好きだったエルドリアに告白しようとした矢先に、当のエルドリアから王妃になる事を告げられた日だ。あれはマジで堪えた。
「私、卒業したら王妃になるの」
じゃねーよ。ふざけんなまったく。
さて、ギガスクイードと遭遇するってだけでも大事だってのに、精霊王だ帝国軍だと、次から次へと厄介ごとがおこりやがる!!
炎の精霊王が姿を変えた巨大な球体の上空。そこに馬鹿でかい剣が浮いているのだ。
音も無く、突然現れたその剣は、センチュリオン城の尖塔よりも遥かにでかい。あんなもん誰が使うんだよ。
まさか……
俺はこの場で一番ちっこくて非力な少女に目を向ける。
その少女はそれを見上げてこう呟いた。
セントウキと。
それは異国の言葉だったのか俺には理解できなかったが確信した。あれはこいつの為に現れたのだ。
読んで頂きましてありがとうございます。




