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相撲大会~参~

メリークリスマス。


第四章のサブタイトルを変更しました。

 南部に来た時点で出会いは必然だったのだ。


 避けられぬ運命ならばせめて別の形で……だけどそれはもう叶わぬ願い。


 私達は戦うしかない。国を救うため、愛する人達を護るため、そして生き残るために私は貴女に勝たなければいけない。


 もし違う形で出会えたならば、普通に友達になれたかもしれないのに。


 どうして?


 どうして私達は土俵の上で出会ってしまったのだろう……



✤✤✤



 突然現れたエルフの少女に会場内が騒めきに包まれた。


勿論大会運営は知っていたし、サクラの連中も大半は知っていたようで大きな混乱は起こらなかった。


 驚いていたのは主に一般の観戦客や、選手達。


 オバリー大尉も顔を引きつらせているから知らなかった口かな? 彼は相当な達人のはずだけど、それでも気づかなかったのだからエルフの秘術というやつは本当に恐ろしい。


 一部自信を失った者もいるようだが大半は好意的な視線を向けている。


 その可愛らしさに見惚れる者……


 神秘の存在を前に涙を流して拝む者……それぞれだ。


 私はバレバレの変装で観覧席に紛れ込んでいるボルド提督に恨めし気な視線を送る。


 私の視線に気づいたボルド提督。口パクで何か伝えようとしている。


 勝て。


 どうやらボルド提督は私に負けてほしくないらしい。


 私とカノン。偶然にも同年齢の女の子ふたり。どっちが勝つかでエルフと賭けでもしたのだろうか? 


 まったく。賭け相撲は禁止されてるってのに……


 そうでなくても負けるつもりはないよ。


 いや、負けられないんだ。


 もしこの勝負がゲームのカノンイベントの再現ならば負けたらバッドエンド。私は身も心も彼女の虜となって一生を送ることになる。


 私が何もしなければ帝国を止められずセンチュリオン王国は滅亡だ。


 カノンとのガールズラヴなエンディングは好きだったけど、今ここでバッドエンドを迎えるわけにはいかない。


 私が勝った場合、ゲームではカノンの出番はそこで終わるのだが……カノンとの繋がりを失うのも惜しい。


 だって、ほんと可愛いんだよ! 10年後の成長した姿も良かったけど今のロリカノンの可愛さは反則だ。


 真っ白なお腹や柔らかそうなほっぺに無限にキスしたくなる。


 カノンは私をどう思っているのだろう。ゲームでは一目惚れしたとか言っていたけど、何分今はお互い幼い身体だ。


「あの、試合の前に少しだけ挨拶させてもらっていいですか?」

「あ、ああ。手早すませるように」


 運営の人に申し出ると意外とあっさり許可が出たので私は駆け足で彼女の元へ向かう。


「はじめまして、私はエ……シーリア・ブレイウッド二等兵であります。試合前に無粋ではありますがご挨拶に参りました」


 話しかけられるとは思ってなかったのかカノンは驚いた様子で白い肌がみるみる真っ赤になる。


「わ、私は、ハイエルフのハディス・セフィリア・イゼルダ・ルージェ・スリヴァン・セリカ・カノンと申します。よ、よろしくお願いします!」


 緊張した様子でぺこりと頭を下げる。ポニテにした柔らかそうな髪がぴょこんと跳ねた。


 なんてこった。可愛いの塊かよ!?


 しかしこの様子からすると、やっぱり惚れられちゃったのではないだろうか?


 私はこの試合が10年後に起こる筈だったイベントの再現だと確信する。


 負けられない。カノンは可愛いけど、私には他にも大切な人達がたくさんいる。


 皆を戦争で死なせるわけにはいかない。 


「よろしくお願いしますハディス・セフィリア・イゼルダ・ルージェ・スリヴァン・セリカ・カノン様。高潔なる種族の方と出会えて光栄です。しかし土俵の上では手加減はしません。お互い頑張りましょう」


 当たり障りないことを言ったつもりだったが、カノンは驚いたように翡翠の目を見開いている。


「私の名前を一度で覚えた人は初めてです」


 そりゃ、前世であなたのエンディングを何度も見ましたからね! 名前くらい2度目にはばっちり覚えましたよ!


「あ、あの……よかったらカノンとお呼びください。シーリアさま」

「では私のこともシーリアとお呼びください」

「い、いけませんそんな恐れ多い!? だってあなたさまは……」


 またしてもカノンが慌てる。


 カノンは私が王女だと知っているのだろうか? いや、知っていたとしても恐れ多いのはこっちの方だ。


 ハイエルフは最も精霊に近い種族であり、国によっては信仰対象とされている。私が一介の兵士だろうと王女だろうと、彼女は遙かに格上なのである。


「あなた達。その辺にしておきなさい」


 気が付くと、私の背後に目を見張るほどの美女が立っていた。


 カノンと同じ緑がかった白髪。そして長く伸びた耳。透けるような薄い布地で出来たドレスをすらりとした身体に纏っている。間違いなくカノンの身内だろう。


「お婆さま」


 は? この美人さんがお婆様? 二十歳くらいに見えますけど?


「驚かせてごめんなさい。私はセフィリア。カノンの祖母にして、森都フィンレにあるエルフの里の長を務めております。以後お見知り置きを」


 エルフの女性はそう言って恭しく私に礼をする。


 アモン・シルヴィ・スレイン・エステア・クロア・フォーリア・セフィリア。私もその名は知っている。ゲームで知ったのではない。セフィリア様はゲームに登場しないからだ。だが、セフィリア様の名は、この世界で知らぬ者はいないというほどに有名だった。


 風の精霊王(ウィンダム)の守護を受ける精霊の愛し子であり、御年800歳を超える生きる伝説。それがセフィリア様だ。彼女の前では国王であってもその場で平伏す。そんなお方である。


 え? なんで? なんでそんな人が私に頭を下げる!?


 唖然とする私にセフィリア様ま嫋やかな笑みを浮かべる。


「さて、挨拶はこのくらいにして、今はほら皆さん待っていますもの」


 そう言ってセフィリア様はあたりを見渡す。


 盛り上がっていた会場は水を打ったようにしんと静まり返っていた。セフィリア様の登場に皆呑まれてしまっていたのだ。


「ふふふ、お話はまた後でいたしましょう。それではご健闘をお祈りしています。小さな守護者様」


 最後にそう言い残して影の中に消えていくセフィリア様。


 いや実際にはいるのだろう。だけどその気配は完全に消えていた。


 さっきカノンが何か言いかけて、それを遮るようにセフィリア様が現れた。


 そしてセフィリア様の最後の言葉。守護者って私のことだろうか?


 カノン。あなた達エルフは私の何を知ってるの?


 もし負ければ自動的に私は彼女達の手に堕ちて、それを知ることが出来るだろう。


 だけどそれでは国を護れない。


 バッドエンドを回避し、カノンとも仲良くなるには私が勝って主導権を握るしかない。


 まずはお友達から始めましょう! これだ!


 セフィリア様が()()()()()()()次第に喧騒が戻ってくる。


「では準備してください」

「はい」


 運営の人に促されて、私は土俵に上がる。


 同じく土俵に上がったカノン。翡翠の瞳はずっと私を捕らえて放さない。ほっぺを赤くしてなんともいじらしい表情で見つめている。


 カノンの視線に負けないように見つめ返す。


 あ、目を逸らされた。照れてる? 可愛いなぁ! もう! 今すぐその場に押し倒したい!


「お互いに礼!」


 行司さんに従いお互い土俵に上がって礼をする。


 中央へ進み、仕切り線の前で蹲踞の姿勢。


 カノンの一挙一動は実に様になっている。見た感じカノンは十分な稽古を積んでいるようだ。


 背丈は同じくらい。ぷにぷに度ではちょっと勝ってるかな? できれば勝ちパターンである櫓投げを決めたいところだけど、10年後のエリュシアリアとカノンの間にあった体格的な有利が無いから難しいだろう。


 でも私には小学校5年生の時、地区の相撲大会で3位になったという実績に裏付けされた前世知識がある!


 それに王宮シナリィやお兄様を相手に相撲をとって遊んでたし、軍に入ってからは毎日厳しい訓練を受けてきたから体力だってついている。昨日は教導隊のまっちょ達に稽古もつけてもらった。


 前世知識持ちの上に英才教育を受けた私。チートじゃないか。

 

 土俵に手をつく。身体が小さいから仕切り線に触れないぎりぎりのところ。


 受けるつもりはない。お腹に向かって思い切りぶつかっていくつもりだった。


 みあって、みあって……


 絡み合う視線。今度は逸らさない。カノンも本気だ。


 いいよ。思いっきりぶつかっておいで! すぐに土俵に沈めてあげるから!


 真っ向勝負!


 はっけよーーい! のこったーーっ!


読んで頂きましてありがとうございます。


えりゅたんがんばれー! カノンちゃん負けるなー! 作者もっとやれ! と応援してくれる読者の皆様。よろしければブックマークをお願いします。

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