相撲大会~弐~
相撲大会はまだ続きます。
うぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!
会場にこれまでにない歓声が轟いた。
可憐な少女が自分より大きな男子を相手に奇麗な上手投げを決めて勝利すればそれも仕方ないというものだろう。
22試合目にして新兵側はようやく初白星を得た。
白星を飾ったのはシャーロット・ヴァロア訓練生。11歳。
銀色の髪に小さな身体。どこか気品を感じさせる少女だった。
参謀部に激震が走る!
「あの訓練生何者だ!?」
「シャーロット・ヴァロア。ヴァロア伯爵家の6女で11歳。先月入隊したばかりの訓練生です。それ以外は何も……」
「馬鹿言え! どう見ても素人の技じゃなかっただろう!?」
「そんなこと言われましても……」
言い争う参謀部の人達。ざまぁ見ろだ。
私も勝ち名のりを受ける少女に惜しみなく拍手を送る。
実は私、ゲーム知識でこのシャーロット・ヴァロア訓練生のことを知っていた。
将来王立修学院で教官になる人物でシルバーウルフの異名を持つ近接戦闘のスペシャリスト。
ロリっ娘鬼教官シャーロット・ヴァロア。
ゲームと殆ど変わらない姿だったから彼女のことはすぐにわかったよ。
シャーロット・ヴァロア教官クールなロリキャラで、戦争が始まると頼れる指揮官として私達を導く役だった。軍では私の方が先輩になっちゃったけどね。
「シャーロット・ヴァロアですと!? 銀狼姫ではごわさんか!?」
声を上げたのは大会に参加していた力士の少年だ。この国の力士は各地を巡業して回っているので結構世事に詳しい。
「銀狼姫? 知っているのかね?」
「知ってるもなにも、今年王都で行われたジュニア相撲女子の部の優勝者でごわすよ!?」
「「な、なんだってーーーーーっ!?」」
な、なんだてーーーーーっ!?
私も知らんかったわ!? シルバーウルフって四股名だったのかよ!? 戦場で付けられた異名じゃないんかーい!?
「優勝!? なんで経歴に書いてないんだ……それだけの実績があれば書くだろ普通」
「確か力士になるのが嫌で家出したと聞いたでごわす。まさかこんなところに来ていたとは……」
「まってくれ。なんで伯爵家が娘を力士にしようとするんだよ? おかしいだろ……」
「6女にもなると大変なんじゃないですかね……自分も男爵家の3男で実家に居場所なくて軍に来た口ですし。貴族だと色々ありますよ」
「だからなんで力士なんだよ……女の子なんだし器量も良い。普通に嫁にやればいいじゃないか」
「ですよね……」
「茶会の席で試しに勝負を挑んだ婚約者を派手に投げ飛ばして負かしてしまったらしいのでごわす。それでその婚約者が、人前で恥をかかされたと言い出してその場で婚約破棄を言い出したそうでごわすな。情けない男でごわす。しかし、彼女の父親である伯爵はそのヘタレ婚約者の肩を持ち、騎士として生きるか、力士として生きるか選ぶように迫まったそうでごわすよ。それが原因で家出したらしいのでごわすが……あれほどの才能。本当に惜しいでごわす」
残念そうにしている少年力士。呆れる参謀部。
私は彼等ほど能天気に彼女を見ることが出来なかった。
ゲームのシナリオと同じ歴史をたどるならば、彼女は未婚のまま戦場で死ぬことになる。それを知っていたからだ
才能を殺し、貴族の令嬢として花嫁になるのが幸せだったのか……
才能を活かして力士になるのが幸せだったのか……
はたまた軍人になるのが幸せだったのか……
どう転んでもこの国にいる限りろくな未来はない。まあ、彼女に限った話ではないんだけど。
シャーロット・ヴァロア訓練生の勝利で勢いがついたのか、次の試合でも私達新兵側が勝利した。
訓練生の女の子が一般参加者の男の子を寄り切りで下すと、参謀部が悲鳴を上げる。
「あの娘はアリスタ領の出身でごわすな。山間にあるアリスタ領の人間は足腰が強いから当然の結果でごわす」
「確かにあの訓練生はアリスタ領にある村の出身だが、なんでわかったのかね!?」
「日焼けの跡でごわす。アリスタ領では相撲をとるとき腰蓑や腕輪などで身を飾る風習があるのでごわす。彼女は村の力士だったのでしょうな。はっきりとそれらの跡が残っているでごわす」
「なるほど……ところで君、軍に興味はないかね?」
参謀部は少年力士のスカウトを始めたようだ。彼の方は首を横に振っていたけどね。
さあ、もうすぐ私の番だ……私の相手はまだ姿を見せない。
いよいよ24試合目が始まる。女の子同士の対戦。
……まだいない。
もしかして不戦勝になるとか?
それならそれでいいんだけど、あのボルド提督がそんなつまらない真似をするはずがない。それだけは確信が持てる。
新兵側の勢いは前の試合まで。負けた訓練生の女の子が土俵を去る。
そして勝ち名乗りを受ける相手側の女の子の背後に……いた。
緑がかった白い髪と長い耳。人外を現すそれらの特徴を持つ少女。ハディス・セフィリア・イゼルダ・ルージェ・スリヴァン・セリカ・カノン が幼い姿で私をじっと見つめていた。
読んで頂きましてありがとうございます。
お相撲少女シャーロットちゃん登場! 特に今後出番とか考えてないですけど……
続きが気になる。えりゅたん頑張れ! この作者変態だーーっ! とシンパシーを感じてくれましたら是非ブックマークをお願いします。




