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訓練中隊

軍隊時代の話になりますので作風が変わります。


中央要塞→インヴィンシブル要塞に名称変更しました。


サブタイトル変更しました。


章を新しく設定しました。

 アイアンラインとは人間の住む世界と魔森ヘルヘイムとの間に広がる緩衝地帯だ。


 センチュリオン王国の南部は一部アイアンラインに接している。そのため、国境を守るインヴィンシブル要塞には、1万もの兵が常駐し、魔獣の国土侵入を防ぐために日夜警戒が行われている。


 通称アイアンライン警備隊。


 人は言う。そこは地獄の3丁目。


 人界と魔界との境界線。


 英雄と愚者と死神が集う場所。


 その日もまた、魔森から迷い出た魔獣と、駐留軍との間で激しい戦闘が巻き起こる……



✤✤✤



「ブレイウッド二等兵。準備はいいか?」

「いえっさー!」


 魔獣を前にして緊張している私の肩を抱くのは中隊長のランド・オバリー大尉。私はそれに応え、気を奮い立たせるように力強く頷いた。


「デデスピオンこちらに気が付いたようです。生体30。幼体約200……報告通りです」


 冷静に敵戦力を告げるのはカール・レクソン特務曹長。ベテランの兵士であり、訓練中隊では教官を務めている。


 私達訓練中隊は、2週間の日程を終えインヴィンシブル要塞へと帰還の最中に中規模のデデスピオンの群れを発見した。


 デデスピオンとは蠍型の中型魔獣で、生体となれば戦車くらいの大きさがある。固い甲殻に覆われていて獰猛。鋏で人間や獣を捕らえて頭からばりばり齧る。また尻尾の毒針は強力で、刺されたら一巻の終わりだ。


 幼体は倒すのは容易だが数が多く鋏や毒針は十分に脅威になる。またデデスピオンのような虫型の魔獣は持久力が高く、魔界から離れても長期間の活動が可能な上、繁殖力も高い。だが知能が低く移動速度も割と遅いため、大抵の場合早期発見早期殲滅が可能だった。


 まあ、それも十分な戦力があればの話なのだが……


 訓練中隊は私も含めて新兵ばかり。けれど脅威となる魔獣を放っておくわけにもいかない。オバリー大尉はデデスピオンの殲滅を決断する。


 デデスピオンは決して弱い魔獣ではない。通常の軍隊なら生体一匹の討伐に訓練された兵士10人を必要とする。この規模の群れならば本来1000人以上の兵力で対抗するのが望ましい。


 だがこっちの数はたったの100人。しかも殆どが経験の浅い新兵である。いくらセンチュリオンの兵士が加護を持っているとはいえ流石に戦力的に心もとない。


 そこで鍵となるのは私の魔法だ。


 私はオバリー大尉、レクソン特務曹長と共に先行し、『プロミネンス砲』による先制攻撃で敵の数を削る役目が与えられた。


 聖炎は女神タグマニュエル様が我々に与えてくれたた脅威に対抗するための力だ。人の身体を焼くことは無いが、魔獣に対しては容赦のない力を発揮する。


 『プロミネンス砲』は直撃すれば巨竜だろうが一撃で屠る威力を持つ。デデスピオン程度ならまとめて消し飛ばすことが可能だ。


 これまでの訓練で『プロミネンス砲』の発射にもだいぶ慣れ、最初のときのように臆して暴発させることもなくなった。だけど実戦で使えるかはまだ未知数であり、本当は部隊との連携に組み込むには信頼性に欠けるというのが現状だ。


 後方には訓練中隊の本体が控えている。私の攻撃が成功すればそのまま生き残りを殲滅するが、期待通りの成果がなかった場合でも援軍が到着するまでデデスピオンを足止めを行う。だがその場合相応の被害を覚悟しなければならない。


 訓練中隊の運命は私の肩にかかっている。緊張するなという方が無理な話であります。サー。


「大丈夫だ。ブレイウッド二等兵は俺が命に代えても護る。だから、落ち着いて狙え」

「例え大尉が倒れても、自分がいるから安心しろ。大尉を囮にしてでもインヴィンシブルに帰してやる」


 『プロミネンス砲』による攻撃が成功しようが失敗しようが、発射後私は彼等に担がれてその場を離脱する。


 チャージに時間がかかる『プロミネンス砲』が実戦で撃てるのは先制の一発のみ。その後乱戦に入ったら私にはもう出番がないからだ。


 『プロミネンス砲』の余波は発射地点にまで確実に及ぶ。そのため馬もこの場に連れてきていなかった。


「……いや、いざって時に囮になるのは特務曹長だろう?」

「何を言ってるのです? 軍にとって重要なのは一にブレイウッド二等兵。次に後任育成に従事する自分です。いい歳こいて未婚の新米将校の若造などそれ以下で上等」


 あんまりな言い様にオバリー大尉が渋い顔をする。


 軍ではこの程度の軽口の応酬は日常茶飯事だ。オバリー大尉も本気にはしていない。


 もしもの時、レクソン特務曹長は決してひとりで逃げたりしない。オバリー大尉も彼の人柄をよく知っており信頼しているからこそ同行者として選んだのだ。


「……後で覚えてろよ?」

「ええ。無事に帰れたらインヴィンシブルの謝肉祭に間に合うでしょう。いくらでも奢らせてもらいますよ」


 オバリー大尉は20代半ばの若い将校でやはり緊張している様子が見えた。レクソン特務曹長はベテランらしい軽口で私と大尉の緊張を解そうとしているのだ。


「良いだろう。不敬罪には問わないでおいてやる」


 一応オバリー大尉は男爵位を持つ貴族で、バリバリのエリート仕官だ。実家はオバリー一刀流というセンチュリオンでもメジャーな剣術の流派の宗家らしい。


 将来有望で家柄も良く、顔も悪くない。なのに婚約者もおらずアイアンラインで命張ってる変わり者。それがランド・オバリー大尉である。


 なんでも過去に大きな失恋をしたらしいと中隊ではもっぱらの噂だった。


「教官殿、上手くできたら私にもご褒美くれますか?」

「勿論だ。好きなだけ食わせてやるぞ」

「誠心誠意、頑張らせて頂きます!」


 謝肉祭は女神タグマニュエル様に感謝を捧げるお祭りで、毎年秋ごろに開催される。


 王都を離れて3ヶ月。訓練訓練の毎日で、実は楽しみにしていたんだよね。


「いや待て。ブレイウッド二等兵への報酬は俺が出す」

「大尉殿がですか?」

「当たり前だろう。攻撃が上手くいけば勲章は当然として……」


 いや、勲章なんかよりお肉の方がいいです。とは思っても口には出さない。


 オバリー大尉は真面目な顔をする。そして……


「男爵夫人にしてやろう」


 は? 大尉殿今なんてった?


「自分の聞き違いですかな? 今大尉がブレイウッド二等兵に求婚したように聞こえたのですが……?」

「教官殿もですか? 私もであります」

「聞き違いじゃないぞ。俺は確かにそう言った」 


 待てや! 自分の母親と同年代からのプロポーズとかないわ!


 大体、この国で結婚できるようになるのは児童法の適用外になる12歳からだ。あと6年もあるぞ。


 隣では「Oh……」と、レクソン特務曹長が頭を抱えている。


「お断りします!」


 私はきっぱりとお断りする。それに彼は私の本当の身分を知らないはずだ。私、ここでは廃村で保護された村娘ってことになってるからね。私が王女だと知った時、この男がどんな顔をするか見てみたい。


「くっくっく……見事にふられましたな大尉」

「ふん。緊張を解すための冗談にきまっているだろう?」

「そうでなければ、貴方を本気で置き去りにするところでした。しかし大尉はもう少しジョークを学んだ方がいい。ブレイウッド二等兵が本気にしたらどうするのです?」

「その時は、責任をとったさ」


 オバリー大尉がどこまで本気かは分からない。だけどレクソン特務曹長のツボには入ったようだ。

声を殺して笑っている。


 つられて私も笑う。


 私達は笑う。敵を前にして私達は笑う。


 さあ! 仕事だ!


 砂煙を上げて黒光りする巨大なモンスターが迫ってくる。以前の私なら悲鳴を上げて逃げ出していたかもしれない。


 でも、今の私には対抗できる力があり、共に訓練してきた信頼できる仲間がいる。


 私は臆することなく群れの中心を睨みつけた。


 完全に殲滅できないにしてもできる限り削りたい。ここにいる愉快な仲間の為に……!


 先頭を行くデデスピオンに指先を向けると、次元の裏側で私に繋がる何か指示を出す。


 『プロミネンス砲』発射用意!


≪プロミネンス砲発射シーケンスに入ります。メインジェネレーター接続。ナノフレアチャージ開始。チャージ完了まであと8秒……6……5……4……≫


 頭の中で語りかけてくる音声ガイド。


 どうやら聞こえるのは私だけのようだ。他の人に聞いてみたら、タグマニュエル様からの神託かっ!? と、騒ぎになりかけたので適当にごまかして、今は誰にも秘密にしている。


 私にだけ使える『プロミネンス砲』。それに謎の声。わけがわからないことだらけだけど、今はありがたくその力を使わせてもらう。


 人差し指を群れに向けて照準を合わせる。


 『プロミネンス砲』の発射には最初はゲームと同じようなモーションが必要なのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。


 見えない何かが、砲身を形作る。『プロミネンス砲』はその名の通り大砲だ。それをゲームのエリュシアリアは、どういうわけか剣のモーションで使っていたのである。


 たぶん銃の無い世界観に合わせた演出なのだろうが、実際『プロミネンス砲』を撃つのに剣は必要ない。むしろ大きくて重たい剣は狙いを定めるのに邪魔だ。


≪3……2……1……チャージ完了。効果を対物限定に設定。耐ショック、耐閃光フィールド展開。セーフティーロック解除。トリガーをユーザーに譲渡します≫


 見えない砲身に凄まじいエネルギーが集まってくる。


 膨大な力に今でも恐怖はある。けれど制御を放棄しなければ基本的にこの力は私に従順だ。


 巨大な鋏を振りかざしてデデスピオンが迫ってくる。でもまだ撃たない。狙うのは最も効果的な瞬間。群れの大半が射線に入った時……


 30メートル……20メートル……今!!


 レ〇ガン!!


 と、叫びたくなるのを我慢し私は静かに解き放つ。


「ふぁいあっ」


 金色の光の奔流が大地を凪いだ。


 閃光と熱風が吹き荒れ、デデスピオンが光の中へ消えていく。


 『プロミネンス砲』の火線は群れの大半を消滅させた。生きていても瀕死であり、五体満足の個体はほんの僅か。大成功といえる成果だ。


「攻撃成功!! 攻撃成功!! 突撃!! 突撃!! 突撃ーーーっ!!」


 私を担いで走りながらオバリー大尉が叫ぶ。


 離脱する私達と入れ違うように騎馬隊が突入する。また包囲するように展開していた歩兵もそれに続き、生き残ったデデスピオンに次々止めを刺していく。


 戦闘は終結まではさして時間はかからなかった。全てのデデスピオンを殲滅し終えた訓練中隊の面々は仲間の無事を確認しあう。


 戦死者無し。重傷者も無し。大戦果に中隊中が湧いていた。


 私を肩車してオバリー大尉が声を上げる。


「皆よくやってくれた! さあ! インヴィンシブルに帰還するぞ! 帰ったら祝杯をあげよう! 勿論俺の奢りだ!」


 歓声が沸き上がった。

カノンとの出会いを書くはずが……すみません一発ぶっ放すまでの話が盛り上がってしまいました。次回にはカノン出します。


続きが気になる。えりゅたんかっけー! この変態作者ほっとけないという方はブックマークをお願いします。


次回こそ幼女相撲だ!



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