庶民の星
おかげさまでブックマーク100件を達成することが出来ました。こうして続けられるのも皆様の応援あってのことであり、感謝しきれるものではありません。
そこで今回予定にはなかったのですが、閑話的な位置づけで投稿させて頂くことにいたしました。今後とも何卒よろしくお願いします。
査察団の出発式は城門前広場で行われた。
早朝、事前の告知が無かったにもかかわらず広場には多くの王都の民が集まっている。私もテイオと一緒に見物に来ていた。
わざわざ人目に付く場所を選んだのは監察室を世に知らしめるためもあるが、大きな理由は王都に潜んでいるだろう帝国の間諜にプレッシャーを与えるためである。
怯えるがいい。帝国の手の者よ。みているのだろう?
我らはこれからお前たちの巣穴を潰し、奪われた大切な子狐を取り返しに行く。
狩られる覚悟で仲間を助けに飛び出すか? もしくは息をひそめ仲間が狩り尽くされるのを黙って見過ごすか?
さあ、選ぶがいい。もうあまり時間はないぞ?
ふははははは!!!!!!
「お前。なんかすごく悪い顔してるぞ?」
おっと。つい表情に出てしまったようだ。
「き、気のせいだよ」
「そうか? お前の本性が出てた気がするぞ?」
「う、うるさいな!」
テイオとはいつの間にか元の関係に戻っていた。相変わらずお前よばわりで朝は起こしてもらう日々。
「もっと近くで見に行こう?」
「お、おい」
私はテイオの手を取ると小さな身体を活かして見物人の最前列へ向かう。
丁度お兄様が挨拶の為に壇上に上がったところだったようで、訪れていた女性たちから耳をつんざくような黄色い声援が上がる。
「凄い人気だな」
「おに……王太子様かっこいいもんね」
「そう……だな……」
あれ? ちょっとは焼きもち焼いてくれるの期待したのに残念。
挨拶が終わったお兄様。どうやら私が見に来てるのに気が付いたようで小さくウィンクする。
「はう……」
私の傍にいた女の子が胸を押さえて倒れてしまった。いかん! ハートを撃ち抜かれている! メーディック!
「なんなんだよアレは……」
いやまったく。イケメン怖いわ……
続いてハクラが壇上に上がる。意外なことにファンは多いようでお兄様にも負けないくらいの歓声が上がった。
国土監察室室長ハクラ・エルベン。庶民でありながら貴族と渡り合える権限を持った彼は、いまや庶民の星だ。
久しぶりに見たハクラはぼさぼさだった髪型はしっかりと整えられ、眼鏡もデザインの良いものに変わっている。
ふぅん。中々見れるようになったじゃん。
これでドSでロリコンでなけりゃね……
お兄様と違いこういった場に慣れていないハクラはガチガチに緊張した様子で挨拶を行う。
「なんか頼りないな」
テイオが言う通り、これから戦に赴くにしては彼は余りにも頼りない。代表である彼が侮られれば、部下である巡察官、執行官まで侮られ、監察室が機能しなくなる。
その様子に彼の存在が面白くない貴族達からは馬鹿にするような笑みを浮かべる者も少なくない。
これはこれで面白くない。よし……
私は意を決して会場に響くほどの声を上げた。
「ハクラお兄ちゃん!! がんばってーー!!」
沢山の視線が私に集まる。当然ハクラも私に気づいただろう。
「お、お前なにやってんだよ!?」
「だって……」
「だってじゃねー! めっちゃ見られてるじゃないか!」
そりゃ、偉い人が喋ってるときに声を出しちゃいけないんだけどね。そこはほら、子供だし。
実際近くのおばちゃんにしーってされたけど笑ってるし、周囲からの視線は温かい。
お父様とか近衛騎士の皆さんが血相変えてたり、いつの間にかグレッグさんとボージャンさんが腕組んで背後に立ってますけど。
私のエールが効いたのか、その後のハクラは法廷で見せたような後堂々たる態度で挨拶を終えた。
聴衆から万雷の拍手が送られる。
これなら大丈夫だろう。もー、世話が焼けるお兄ちゃんばっかりで大変だ。
「気が済んだか?」
「さあ、帰るぞ」
「“親方”“団長”いつの間に!?」
ボージャンさんとグレッグさんは少し離れたところから見守ってくれていたのだが、私が目立つ行動をしたために今はぴったりとくっついて周囲を警戒している。
ハクラと監察室のためとはいえ、自分の行動が軽率だったと反省する。後悔はないけどね。
帝国の間諜だけでなく、国内貴族だって私の存在を知れば放ってはおくまい。
暗殺者送ってくるか、婚約者候補送られてくるか……どっちにしても面倒なことになる。
CIAに捕獲された宇宙人のようにボージャンさんとグレッグさんに挟まれて連行される私。テイオがその後に続く。
幾つかの視線を受けながら私達はその場を離れる。害のないものばかりだが、念のために遠回りしながら帰ることになるだろう。
しかし私達は気づかなかった。
人々に紛れてじっと私を見つめる視線。手練れの護衛にすら気づかせずに私達の後を追う小さな人影……
「ミツケタ……」
小さな追跡者が漏らした小さな声に私達は気づかなかった。
読んで頂きましてありがとうございます。
続きが気になる。この作者ほっとけない。女の子がお相撲する話が好きな人はブックマーク及び応援の方よろしくお願いします。
次回、幼女増えます!




