幼馴染のつくり方~なんなんだお前は!
えりゅたんの秘められた性癖が明かされます。
「姫様!? どうされまし……あちゃ~!? やっちまったか!?」
異変に気付き、剣の柄に手をかけたボージャンさんが走ってくる。だが半裸の私とひっくり返って伸びている少年を見て全てを察したようで額を抑えた。
「申し訳ございません。全て厩舎を預かる私の責任でございます」
「いえ、私は普通の子供としてここにいるんですから。ボージャンさんが気にする必要はありません」
「しかし……」
「あ、ちょっと後ろ向いててくれますか?」
「あはは……これは失礼を」
どうやら未熟な私の身体など彼の眼中に入っていなかったようだ。まあこれが普通の反応だろう。ボージャンさんが後ろを向いてくれている間に私は服を着る。
「それで、普通の子供ならこれからどうなると思いますか?」
「そりゃあ、取っ組み合いの大喧嘩になるでしょうな」
「はあ……そりゃごめんじゃ済みませんよね」
「不慮の事故とはいえ、乙女の柔肌を見てしまった罪を理解するにはまだ若すぎますからな」
まあ確かにそうだ。ラッキースケベを理解するには彼はまだ早い。
「この子が見習いの子ですよね?」
「はい。名はテイオ。歳は8つ。ワイバーンに襲われていたところを姫様に助けて頂いたのはこの子です。ですからそれを話せば喧嘩になることはないでしょうが……」
ふうん。テイオ君か……
その顔には見覚えがある。確かに南部で助けた子だ。
癖のある栗色の髪、歳の割にシャープなあごのライン。男の子らしい日に焼けた細い手足はバランスよく伸びている。これは将来中々良い男になりそうだ。
それに同い年……良い。
「ええ、それはやめておきましょう。私は彼と普通の子供同士の関係を望みます」
「しかしそれでは喧嘩になりますが?」
「私が負けると思います?」
「ワイバーンを一撃で屠る姫様が? 全く考えられませんな」
「加護が無ければ私は普通の女の子ですよ?」
「わははははは!!」
声を上げて笑い出すボージャンさん。何故?
「失礼。でも負ける気しないでしょう?」
「そうですね」
私だって同年代の普通の子供に喧嘩で負けるほど弱くないつもりだ。加護の力に頼るつもりもない。正々堂々力で組み伏せてそれから……
「ふふ……」
ずっと欲しかったモノが手に入りそう。そんな予感につい笑みがこぼれる。その様子にボージャンさんが怪訝な顔をする。
「姫様?」
「何でもありません。適当なところで止めてください」
「どのようにお止めすべきですかな?」
「大人として普通の対応で」
「わかりました!」
にかっと良い笑みを見せるボージャンさん。でっかい拳に「はぁ~」っと息を吹きかけている。
私は苦笑するしかない。
「お手柔らかに」
仲裁のタイミングを彼に任せて、私はテイオの肉の薄いほっぺたに触れる。
これが男の子の肌か。ぐりぐり……ぐにぐに……とこね回し、びろーんと引っ張ってみる。
「……んぁ? ふぁっ!?」
彼が目を開く。最初はうっすらと。次に驚いてぱっちりと。そして頬を引っ張っられている状況を理解して目尻を尖らせた。
「あ、起きた」
「ほ、ほはへ! はにしへんはほっ!?」
お前! 何してんだよ! と言っているようだ。私はにっこりと笑みを浮かべる。
「おはよ。さっきはごめんね。痛かった?」
「いははったひゃへー!! ははへ!」
痛かったじゃねー! 放せ! と言っているようだ。
「うーん、どうしようかな? あっ!?」
男の子は無理矢理私の手を振り払って私の頬をつねってきた。
「ひゃあ! やったな!」
「ふん! やられたらやり返せってのが親方の教えだ!」
彼の後ろで気配消して見てるボージャンさん。視線を逸らしました。しかしまだ止める気は無いらしい。
そうだね。この程度で大人に止められてもお互いすっきりしないだろう。ボージャンさんの目の届かないところで小さな諍いを繰り返すことになりそうだ。
つまりボージャンさんはおもいっきりやれと言っている。
よっしゃ!
私とテイオはお互いがっちりと手を掴みあう。所謂手四つの状態だ。
「ぐぬぬぬぬぬ……なんだこの馬鹿力」
「君が弱いんだよ」
「な、なんだと!」
優勢なのは私。私はテイオをじわじわと押していく。テイオは悔しそうな顔をしている。
そうだよね。女の子に力で負けたら悔しいよね。ふふん。
この子が受け身をとれそうだったら投げ飛ばしてやったところだけど、彼は全くの素人だ。たぶん喧嘩にも慣れてない。
「くそっ!」
「あいたっ!」
テイオが私の足を踏む。
こいつ……
私は彼の手を払いのけると、足を絡め体重をかけてその場に押し倒した。首に腕を回し、脇で腕を締めるように相手を抑え込む袈裟固めで拘束する。
「こら! 放せ!」
「やだ」
なんとか逃げ出そうとして足をばたばたさせながら抵抗するテイオ。だけど私はそれを許さない。身体を密着させてしっかりと押さえつける。
「放せ! 馬鹿! ゴリラ! ブーーーーース!!!!!」
「あん?」
ちょっと力を入れてやる。
「痛てててててっ!!!!!」
「私がなんだって?」
「ブス! 痛ぇぇぇぇぇっ!!!」
「ふふふ、謝って子分になるなら話してあげてもいいよ?」
「だ、誰がっ! なんなんだお前は!」
「私? 私はね……そう! 君の幼馴染になる女の子だよ!」
「わけわかんねー!」
幼馴染。なんて素敵な響きでしょう。
実は私前世の頃から異性の幼馴染に憧れていたんだよね。
『剣の国のエリュシアリア』には幼馴染キャラがいなかったのが不満だった。ゲームでは12歳まで秘匿された王女っていう立場だから仕方ないかもしれないけど、実は過去に出会ってたとかそういう設定のあるキャラがいてもよかったと思う。
だが幸い今の私はこうして外に出させて貰っているおかげで同年代と触れ合う機会が与えられている。
それを生かさなくてどうするというのだ! 生憎、南部にいたころは同年代と出会う機会が殆どなくて、その上私が普通じゃなかったものだから、人の友達はできなかったんだよね。
だから悪いねテイオ。私は君を逃すつもりはない。
ちょっとぶっきらぼうで不良っぽいけど、私にだけは優しい。そんな幼馴染が欲しかったんだよ!
それでね、最初は弱くてこっちが助けてばかりけど、だんだんたくましく成長していった彼がいつか私を助けるようになるの。きゃあ!
さあ、理想の幼馴染をレッツ・クリエイティング!
私は彼をさらに躾けるべく袈裟固めから縦四方固めに態勢を変える。
「ЖΛηБП∠£С$ДΜ!?」
私のまだまだ薄い胸を押しつけられたテイオから声にならない悲鳴が上がる。
なんていうかね……男の子をこう力尽くで組み伏せるのって……快☆感♪
「さて、そこまでだ」
「うにゃ!?」
「げ!? 親方!?」
私は後ろから抱えあげたのはボージャンさんだった。開放されたテイオが驚いた声を上げる。
そうだった。ボージャンさんいたんだっけ?
ボージャンさんは私達を引き剥がすと並べて立たせる。そして……
「全く、会った傍から喧嘩してんじゃねぇ!」
ごつん! がつん!
「「あいたぁ~っ!」」
頭に拳骨を落とされて仲良く悲鳴を上げる私とテイオ。喧嘩両成敗。とっても大人らしい止め方です。
今の絶対私の方が良い音したーー!!
✤✤✤
「わっはっはっはっはっは!!!!!」
「いっひっひっひっひっひ!!!!!」
その日の夕刻、厩舎寮は爆笑の渦に包まれていた。
酒場のようなリビングには豪快な漢の料理が並び、おっさん達が集まって酒を酌み交わす。
笑いの中心にいたのは勿論私とテイオだ。
テイオの顔には見事な青たんが出来ている。最初に私が殴ったところだ。腹を抱えて笑うおっさん達。私も笑ってしまって、またつかみ合いになりかけたが今度は最初から止められた。
「いいかテイオ。これから先絶対このことをしゃべるんじゃないぞ?」
「そうだな。下手すりゃ命が無い」
「言わないよ! っていうかそんなに可笑しいのかよ!」
酒の肴にされてテイオはずっとぷりぷりしている。当然私とは顔を合わせようとしない。
「そんなに笑わなくても……」
「まあまあ、あのお肉とっても美味しそうだよ? 持ってきてあげようか? それともジュース飲む?」
「いらないよ! 自分でやる」
「照れなくてもいいのに」
「照れてねーし」
せっかく気を使ってあげてもこの態度。でもちゃんと反応を返すあたり、私にに関心が無いわけでもないのはここにいる誰もが気づいている。
料理を頬張る仕草も、緊張を隠そうとしているのかどこかぎこちない。
良い感じのツンデレ系幼馴染になりそう。
そんなテイオを横目に私も料理を口にして顔をしかめる。漢の料理はちょっと塩気がきつかった。
ブックマークのボタンならページ上にあるよ? え? 下にもあった? 広告のバナーが邪魔だよね。
常連の方もはじめましての方も、本作を読んでくださいましてありがとうございます。<(_ _)>
第3章でメインを務めるテイオ君について設定を少々。
名前 テイオ (親は貴族だったが罪を犯し家名を剥奪されたため姓が無い)
年齢 8歳 (誕生日はエリュシアリアより数日遅い)
身長 エリュシアリアより少し低い(誤差の範囲)
体重 エリュシアリアより少し軽い(誤差の範囲)
人生の幼馴染ガチャにおいてエリュシアリアを引き当てた勝者だが、身分、実力とも上のエリュシアリアに翻弄され苦労する。
実はエリュシアリアが南部にいなければワイバーンに襲われて死んでいたため、エリュシアリアによって運命が変わった人物のひとり。




