幼馴染のつくり方~始まりは突然に~
6月24日は全世界的にUFOの日ですね!
全然関係ないけど少年と少女の夏物語。開始しますwww
「お久しぶりです姫様……おっと、シーリア・ブレイウッド嬢」
人目につかない裏から外に出たところで私を待っていたのはロマンスグレー一歩手前くらいの渋いおじさま。ゼファード様の父親であるボージャンさんだ。
「ボージャンさんもお変わりないようで何よりです」
「身体が丈夫なのだけが取り柄ですからな。それよりグレッグから聞きました。南部でワイバーンに襲われたところを助けられたと。私からも礼を言わせてください。うちの見習いを助けて頂き本当にありがとうございました」
深々と頭を下げるボージャンさんに私は慌てる。
「え!? ちょっと!? あの、頭をあげてください! 私はただ任務を遂行したにすぎません! それに元はといえば私達がワイバーンの国土侵入を許してしまったことが原因なんです。決してお礼を言われるようなことではありません!」
確かにグレッグさんとその連れの男の子を助けることが出来たけれど、あの事件では他に10人以上の人間がワイバーンに襲われ犠牲になっている。
遺族のやり場の無い怒りは大抵警備隊に向けられる。あの後、小さな開拓村の近くを通りかかった時に私達は石を投げられた。多分そこでも被害者が出たのだろう。だけど同じようなことは何度もあったから気にならなかった。
だから稀に「ありがとう」って言われるとびっくりしちゃうんだよ。
不覚にも心の琴線に触れてしまい、涙がこぼれそうになるのを見せまいと堪える。
私の反応が可笑しかったのか笑みを浮かべるボージャンさん。
「ふふ、しかし、本当に良い顔になられましたな」
「もう、南部の日差しは強いのです。揶揄わないでください」
拗ねたように日に焼けた頬を膨らまして顔を逸らす。日に焼けた肌を皆は褒めてくれるけど結構気にしているのだ。
もしかしてこの国の人間は褐色萌えなんだろうか? シナリィもモテモテだし。まぁ、こっちで暮らしていればじきに元の白い肌に戻るだろうけど。
「父上……」
「ふむ……いやしかし、まあよかろう」
ボージャンさんもゼファード様も、なんだか苦笑いしている。何かまた可笑しなことを言ってしまったのだろうか?
「父上、俺はまだ仕事が残っているので後はお願いしてよろしいですか?」
「ああ。ご苦労だったなゼファード」
馬丁であるボージャンさんだが、帯剣しているところを見るとここから先は彼が護衛を引き継ぐようだ。勿論ボージャンさんの腕に不安は無い。
「それでは姫様。自分はこれで」
「はい。今日はありがとうございました」
一礼して立ち去るゼファード様を見送る。
「さあ、参りましょう」
ボージャンさんが私の荷物をひょいと奪って歩き出す。
「あ、申し訳ないです」
「いえ、大の男が女の子に荷物を持たせて歩いていたら悪目立ちしますからな」
色気のあるウインクを決めて、ボージャンさんはすたすたと歩きだす。
やるな。これがイケオジか。
ボージャンさんは元は教導隊に所属していて、騎士の指導を務めていた鬼教官だ。その名残から普段は口の悪さが目立つが、実際には騎士の鏡のような人物なのである。
表の騒ぎは収まったが城内では未だ警戒が続いている。城の中に工作員が潜入していないとは限らないからだ。
ボージャンさんに連れられて騎士や衛士が走り回る東区画へと進んでいく。
騎士団本部は私が壊した演習場は奇麗になっていたが、城壁はまだ修理が続いているようだ。
さらに進むとそこは飼葉の匂いのする見覚えのある場所だった。
「あの~? ここって厩舎ですよね?」
「はい。姫様にはこれから厩舎で馬丁見習いとして我々の寮で生活していただきます」
はい? 今なんて言いました? 馬丁見習い? 聞いてませんよそんな事。
「仕事は明日の早朝からです。びしびし扱かせて頂きますのでそのつもりで覚悟しておいてください」
良い笑顔を見せるボージャンさん。目が点の私。
ひひーーん! ぶるるる!
馬房から顔を出したお馬さんがつぶらな瞳でこちらを見ている。
「あ、どうも」
ぶるるる~~!
これからご近所の住人さんになるらしいお馬さんに私はぺこりと頭を下げた。
軍隊から帰ってきたと思ったら今度は馬丁ですか。
あの~? 私もしかして虐げられてます?
✤✤✤
厩舎寮は丸太で組まれた2階建てで、一般的な民家くらいの大きさだ。厩舎に務める馬丁は12名と見習いがひとり。そこに今日から私が加わる。
10人以上が生活するには狭い気がしたが、馬丁の人達は朝と昼で交代で勤務しているため、寮を利用するのは朝勤務の4人と、見習いがひとりだけらしい。
「うちの連中も今は出払っているんで、また夕食の時にでも紹介します」
「えっと、皆さん私の事は……?」
「見習い以外は知っております。ここには馬好きの元騎士や兵士達が集まっていましてな。姫様がいらっしゃると聞いて張り切っていましたよ」
日本でいえば退職後に車やバイクなどの趣味に精を出すおじさんと同じだろうと私は納得する。
今は大切な馬を護るため、騎士団と協力して厩舎周辺を警戒に出ているそうだ。確かに元騎士団長のグレッグさんみたいなのが集まっているなら、並の騎士より余程頼りになりそうである。
寮の1階は共用スペース。リビングはまるで酒場のような内装で、バーカウンターが備え付けられていて、棚にはかなりの数の酒の瓶が並んでいる。台所も広い。
内装やインテリアにはおっさん共の趣味がこの上なく反映されているようだ。
2階にはふたり部屋がふたつと物置。あと厩舎長のための部屋がある。廊下の奥へと進むと屋根裏へと続く簡素な階段があってそれを上がっていく。
「使っていただく部屋はこちらになります」
まさかの屋根裏部屋だった。
向かい合わせに2部屋あって、ひとつは住み込みの見習いが使っているらしい。
屋根裏部屋……冬は寒くて夏は暑い。雨漏りすれば一番に被害を受ける場所であり、普通はゲストを招き入れる部屋ではない。
無礼者! 一国の姫を屋根裏部屋に押し込めるなんてどういうつもりなのかしら!?
などとキレられても仕方ない。そんな場所だ。
でも私はそんな文句言わないです。
きっと秘密基地みたいな雰囲気があるからだろう。屋根裏部屋とか地下室って聞くとなんだかわくわくしてくるし、それに気候的にも日本ほど湿度が高くないから、それほど不快な環境でもない。
何より個室とベッドが与えられるだけ軍よりマシです。
アイアンラインにいたころはほとんどは野営だったし、たまに宿舎に帰っても6人部屋だった。
しっかりした造りのドアは真新しいので最近付け直したのだろう。中からしっかり閂がかかるようになっている。
木の匂いがする屋根裏部屋にはベッドと棚、テーブルなどの他は何もない。
けれど私が気に入ったのはキ〇の部屋そっくりだったことだ。
このジ〇リ感あふれる空間に憧れない日本人はいませんよ!
三角屋根から飛び出した窓。あそこからあんにゅいな顔して外を眺めてみたい!
「姫様このような部屋を使っていただくのは心苦しいのですが、何分厩舎は男所帯でして……それに姫様は空を飛ぶ魔法が使えるということで都合がいいのではないかと」
なるほどね。確かに窓から『フレアフライト』で飛び出せば城や城下までひとっ飛びだ。日中は目立つが夜陰に紛れれば誰にも気づかれずに出入りできるだろう。
「いいんですか? 夜遊びを誘うような事を言って?」
「いえ……ここを選んだのは陛下でして、こっそり呼び出したり、いざというとき脱出しやすいだろうからと」
「なるほど」
確かにお父様の執務室へ行くにも空からならすぐだ。お父様。こっそり呼び出して何させる気だろうね?
「今日のところはあまり出歩かずにゆっくりなさるといいでしょう。夕食の時間にまたお呼びいたします」
「ありがとうございます。ところでできれば汗を流したいのですが井戸はありますか?」
警戒の続いているこの状況で我儘を言ってる自覚はある。けれど一応女の子ですから私はダメ元で聞いてみた。
ボージャンさんがしまった!? という顔をした。
さては私が身体を洗うことを考えてなかったな?
「はぁ、申し訳ございません。実は姫様の身なりはてっきり城の方で整えてもらえるものと思っていまして……」
ごたごたしてて忘れられたようだ。
ここにはボージャンさんやグレッグさんをを始め、馬術や剣術、実戦で必要な知識を学ぶ最高の講師が揃っている。私は馬丁の仕事をしながらそれらを学ぶわけだが、座学の勉強の方は騎士団本部や城で行うことになっているらしい。
身なりもそこで奇麗にしてもらうことになっていたんだとか。厩舎は男ばかりだし、侍女が出入りすると目立って私が厩舎にいるとばれてしまうからだ。
いざとなれば城には公衆浴場もあるけど、あいにく今日は城門前の騒ぎで閉鎖されている。
「さて、今日のところはどうしたものか……」
寮には流石に風呂までは無い。この国の人間には毎日風呂に入る習慣は無いから、普段身体を洗うのは川や井戸の水で済ませている。それも男女あんまり気にせずにだ。
でもお姫様はそうもいかない。普通なら。
「大丈夫です。軍では野営ばかりでしたから、外で水浴びをする事は慣れてますよ?」
「そ、そうですか……まあ、今なら誰もいませんし大丈夫でしょう。井戸にご案内いたします」
「ありがとうございます」
意外とあっさりOKが出た。まあ、ボージャンさん達が見張りについているなら大丈夫だろう。
私はいったん置いた荷物を背負う。着替えとかが入っているし、出来たら洗濯もしたい。まあ、当たり前のようにボージャンさんに取り上げられてしまったが。
幸い井戸は厩舎の裏手の人目につきにくい所にあった。私が以前ボージャンさんに拾われた場所のすぐ近くだ。
人気が無いのをいいことに私は服を脱ぎ捨てると。桶いっぱいに水を汲んで頭から被る。
「ひゃあ、気持ちい!」
城の地下からはそのまま飲めるくらい奇麗な水が潤沢に溢れている。水に困らないって贅沢なことなんだよ。私は2年間の軍隊生活でそれを知った。
何度かそれを繰り返して汗を洗い流し終えると、固く絞った手拭いで手早くざっくりと身体を拭く。暑いからすぐに乾くし、加護のおかげで風邪もひかない。
髪を乾かすのは魔法を使う。濡れた髪を手でふわりとすくだけで聖炎が一瞬で水分を飛ばして乾かしてくれる。
この魔法のドライヤーは乾かすだけでなく髪の毛の傷みを癒してくれる。だから前世の知識でシャンプーやリンスを作らなくても私の髪はツヤツヤのサラサラだ。
作り方なんて知らないしね。
それから私は袋の奥から新しい聖布と着替えを取り出す。
褌を締めるのにもすっかり慣れた。ぎゅっと引き締められる感覚に慣れると、普通のパンツでは不安に感じるくらいである。この世界ではまだ衣服にゴムみたいな伸縮性のある素材が使われていないからフィット感がいまいちなのだ。
服はどうしよう? 軍で着てた野戦服というわけにはいかないだろうし、やっぱりなるべく目立たない服がいい。今まで着てた旅人スタイルの服は……くんくんと匂いを嗅いで却下。これは後で洗濯だ。
私服……私服……
ごそごそと袋をあさって目的のものを引っ張り出す。向こうでたまに着てた村娘衣装だ。
貫頭衣よりもちょっと進歩した感じで、素朴な村娘の健康美を引き立たせる。そんなファンタジー衣装である。
温かい南部で好まれる服なだけあって、スカートの丈も短いうえに隙間が多くて、太ももも脇もむき出しだ。きっともろ派とちらりズム派の両方を満足させることが出来るに違いない。
開放的な衣装に私も最初は抵抗があった。しかし世間は筋肉こそが最強の鎧であるといわんばかりに上半身裸でいる世紀末戦士や、ビキニアーマーのお姉さんが跋扈する世界だったのだ。
おかげですぐに慣れてしまった。
そんなこんなしていた私は、井戸に誰かが近づいてきたことに気が付かなかった。
「だだだだだ誰だお前!? こここここで何してる!?」
「うひゃあ!?」
突然聞こえた声に驚きフン一の姿で振り返る。
そこには同じ歳くらいの男の子が顔を真っ赤にしてて立っていた。
あー、これはとりあえず……
「見るなっ!」
「どわっ!?」
私は男の子をえりゅたんぱんちでぶっ飛ばした。
ちゃんと手加減はしたよ?
ブクマボタンならページの上にあったでしょ? べ、別にまた読みに来てほしくて言ってるわけじゃないんだからね!?
調子に乗りました。ごめんなさい。読んでくださいましてありがとうございます<(_ _)>




