幕間1『初めてのF』
2月14日は全世界的に褌の日です!!
わたしはバレンタインなる謎の行事を粉砕し、褌の日を広めるために活動を続けます!!
皆さまどうか協力のほどをよろしくお願いいたします!!
話は夢魔の試練を受ける少し前まで遡る。
私は試練に関する予備知識をシナリィから教わっていた。
今年16歳になったシナリィは相変わらず私の専属侍女をやっている。
王宮の侍女務めは基本3年契約だ。3年の任期が過ぎると再契約するか選択することになるが、どうやら侍女を続けることにしたらしい。
彼女も貴族の子女だから、そろそろ家の事とか、結婚とかも考えなきゃいけない年頃だ。けれど王宮務め、それも王族の傍付きの侍女となれば、社交界に出なくてもお見合いの申し込みは向こうからいくらでも転がってくる。
まだシナリィも結婚とかは考えて無いようで、毎日楽しそうに私と遊んでいる。
勿論侍女としても優秀なんだけど、シナリィは特に子供の扱いが上手いとお母様方からの評価が高いのだ。
「夢魔の試練って寝てる間に辛いことを疑似体験するってことだよね?」
「そうですね。でも流石に姫様くらいの歳で試練を受けるのは少ないようです。陛下はよほど姫様を買っていらっしゃるのですね」
「シナリィはいくつで聖炎が使えたの?」
「私は8歳のときでしたね~。家が野盗に襲われて……」
王宮の侍女になるためには女神の加護を得ているという条件があるから、実はシナリィも聖炎を使うことができる。
結構ハードな人生を送ってきたようだ。
女神に認められて聖炎を得る方法はこれまでに本で読んであらかた知っている。
シナリィも夢魔の試練を経験したことがあるわけではなかったから、シナリィから教わるというより一緒に復習……いやむしろシナリィの勉強になってたと思う。
「姫様は本当に何でもよく知っていますね。どこで覚えたんですか?」
設定資料……というわけにもいかないので書庫の本で勉強したと答える。それも間違ってはいないから。
一通り予習を終えると、今度は儀式を受ける際の伝統的な装束を実際に着てみることになった。
「これが姫様が儀式の間身に着けていただく聖布です」
シナリィが手にしていたの小さく畳まれた布切れだった。
淡雪のように純白の生地は木綿に似て丈夫だが、衣服として縫製した様子は無い。本当にただの布切れなのだ。
「ナニコレ?」
「聖布でございます」
「わかってるけど、これのどこが衣装なのよ」
これ、褌だよね? 私、元日本人だから詳しいよ? 騙されないよ?
「心身を引き締め、肉体を最も美しくみせる最高の衣装でございます。タグマニュエル様は筋肉を好まれますから……」
まったく、脳筋女神に毒されてるなこの国は……
「私筋肉なんてないけど?」
私は自分の細い二の腕をぷにっとつまむ。
「気合の問題ですね」
聖布については知っている。聖炎でも燃えない生地でできた下着のことだ。
この国の騎士や巫女がこの聖布とか言う褌を愛用しているのも知っている。
だから私もいずれは身に着けることになるとは思っていた。
だがまさか今日その日が来るとは思わなかった。
それも野外で褌一丁とかどんな羞恥プレイ? お相撲さんじゃないぞ私は。
「どうしてもこれじゃなきゃダメなの?」
「夢魔の試練では眠っている間に聖炎を得ることになりますから、普通の服は確実に燃えてしまいますよ? お外ですっぽんぽんになってしまいます。それでもよろしいのですか?」
「う……」
確かにそれは嫌だ。全裸よりマシだろうという話でしかないのだが……
聖炎は水で消えない。通常の手段では消火できないため、身体から漏れ出た聖炎は自分で制御して消すしかない。
その間に普通服は燃えてしまうし、下手すれば家も燃える。
そのため夢魔の試練は本来全裸で野外が望ましい。聖布の褌はある意味武士の情けなのだ。
ちなみに聖布で服を作ったりした場合、聖炎で熱せられてとても着ていられない状態になるため意味がないらしい。
だから聖布で隠す部分は最小限となる。
聖布があるからセーフ! まあ、この国の言語英語だからこんなジョーク言うやついないけど。
「胸の部分は何とかならないの?」
「姫様はまだ必要ないでしょう?」
……こんにゃろう。
シナリィがにへら~と笑みを浮かべて迫ってくる。
「さあ姫様! 脱ぎ脱ぎしましょうね~」
「きゃ~~! シナリィが怖いよぉ~~!」
「姫様、待て~~!」
身の危険を感じて逃げ出した私。手をわきわきしながら追いかけてくるシナリィ。
すぐに捕まって身ぐるみ全てひん剥かれる。
追剥かよ!?
だが素っ裸の私に天使シナリィはソレを授けたもうた。
褌を。
「姫様。観念してください」
「……はい」
渡された聖布の褌を手に取って広げてみる。幅は15cmくらいで長さは大人の身長くらい。
6尺褌っていうやつだ。
「締め方わかんない」
私が言うとシナリィは少し驚いた顔をした。
「博識な姫様にも知らないことがあったんですね」
こいつ人を何だと思ってやがる。
昔相撲大会に出たときまわしの締め方は習った。もちろん服の上からだ。
けれどこれはそれより短くて、素肌に直接締める。
乙女の初めての褌体験。ならばシナリィも道連れにしてやろうではないか。
「ねぇ、シナリィ。お手本見せて」
上目づかいで目を潤ませて可愛くお願いする。最近はもう通用しないんだけどね。昔からそうだがシナリィは私を見た目通りの6歳児として扱うことはあまりない。たまに怒られるけどそれって私が悪いときだし。
だからかお姫様と侍女というより友人との関わり方に近かった。
「え? 私がですか?」
「うん。シナリィも一緒なら私も恥ずかしいの我慢する。だからお手本見せて」
「もうしょうがない姫様ですね」
意外なことにシナリィはあっさり承諾した。そしてその場で服を脱ぎ始める。
あれ? 恥じらう姿を期待したのにあまりにも拍子抜けだった。
普段からよく一緒にお風呂入ったりしてるし、今更裸を見せ合うくらい恥ずかしがるようなこともないけどね……
それに割とこの国の女子は肌をさらすことに抵抗が薄い。羞恥心が無いというより……強いのだ。
相変わらずでっかいな……
彼女の胸元で自己主張するけしからん物体は推定Fカップ。
それに艶やかな小麦色の肌と肉感的な肢体。それはまるで豊穣の大地が人の身体で表現されているかのようだった。
そして彼女の腰には既に聖布の褌がきりりと締められている。
「私も昔はよく聖炎を漏らして服を燃やしてましたからね。もうこれじゃないと落ち着かなくて」
「あ、はい……」
「姫様。しっかり見ててくださいね。ここをこうして、こうして……ここを結ぶ。ほら簡単でしょう?」
シナリィは自分の褌をいったんほどいて締めなおす。
それはただでさえ形の良い彼女の尻を引き締め、さらに魅力を引き立てる魔法だった。
タグマニュエル様。私少しわかった気がします。
「……エロい」
「何か言いました?」
「何でもない。ここをこうして……」
シナリィの真似をして私もそれを締める。またの間に通して、お尻の上から腰に回すのはまわしと同じだ。
「姫様。ゆるいとほどけてしまいますよ? ここは思いっきり。よいしょ!」
「ひゃん!」
シナリィに引っ張られ、締め付けられる。
未知の感覚が下から上へと突き抜けた。
「少しきついくらいが普通なんですから我慢してください。しっかり結んで……出来ました! あら? 姫様?」
私はその場に崩れ落ちていた。
前世のお父さんお母さん……私とうとう褌締めちゃいました……
「さあ姫様! もう一回やってみましょう!」
は?
「初めのうちは手伝ってあげますけど、ちゃんと自分で締めれるようにならないといけませんからね」
私に拒否権は無かった。
「えいっ!」
「んっ……」
「よっと」
「はうっ!」
「そいやっ!」
「ぴぎゃーっ!?」
その後幾度となく締め付けられて、私、轟沈。
「姫様。儀式まで時間がありません。そろそろ城の方に……あら? やりすぎちゃったかな?」
私の尻をつんつんするシナリィ。こいつそろそろ不敬罪で手打ちにするべきではないだろうか?
「足腰立たたなくなるまで一度聖布を締め上げるのは女性騎士の通過儀礼って聞いたんですけど……そんなにきつかったですか? 姫様?」
お前わざとか? っていうか女性騎士の通過儀礼って何? あんたは侍女で私は姫だぞ!
誰だ? シナリィにいらんこと吹き込んだのは?
私は涙目でシナリィを睨んだ。
「不敬! 不敬である! 天誅!!!!!」
私はシナリィに組み付き、褌に手をかけるとそれを思い切り引いた。
「きゃっ! 何するんですか姫様!」
「うるさい! こっちのセリフだこのFundosiカップ! これでも食らえ!」
私はシナリィの身体を吊り上げんばかりに褌を引き上げる。
「……っ!? いいでしょう姫様! 受けて立ちます!」
「こいやっ!」
「ふふふ、私が侍女相撲西の大関だということを知らないようですね!」
私だって前世では地元のわんぱく相撲で3位入賞したことがあるんだよ! 相手にとって不足は無いね!
私達の取っ組み合いは、遅いので様子を見に来たハンナさんに止められるまで続いた。
勿論、滅茶苦茶怒られたよ!
よくぞ読み切った勇者よ! そなたにフンドシストの称号を与える!
読んでくださいましてありがとうございます<(_ _)>