ぱにっく!!
主人公の魔法がどこから発射されてるのかが謎だったため聖刻の設定を追加しました。空中に魔法陣が浮かんでそこから発射される感じです。魔法陣ではなくてアスラネットワークサービスの企業ロゴなんですが。
大人って汚い。
「見損ないました大尉」
「そう言うなって。新しい事は大人より子供の方が早くできるようになったりするもんだ。あいつらは根が素直で真面目だし、腕も良い。ハンデ無しで俺が一番にその『ロア』を習得できる自信は全く無い!」
清々しい程の開き直りだった。
「あいつらには教えなきゃならないことが山ほどあるんだ。師である為には見栄も必要なんだよ」
「まったく……仕方ないですね」
「悪いな」
例え先に『ロア』を習得できたとしても、あの3人がオバリー大尉を侮ることは無いと思う。でもさ。見栄を張りたいというオバリー大尉の気持ちが分かる程度には人生経験積んでるつもりだ。身体は子共だけど頭脳は大人の転生王女だからね。それにオバリー大尉に先に教えて、レノア達で指導ノウハウを確立するのは悪くない考えだ。剣豪として名の知れたオバリー大尉が『ロア』の先駆者となり指導を行えば広めやすい。私はあまり表に出たくないからね。
レノア、ファーファ、リオン君は名目上私の侍女兼護衛だけど、私につきっきりにさせるつもりは無かった。せっかくフィンレに来ているのだから、それぞれ興味あることを学んで欲しいと思っている。その間、オバリー大尉にこっそり『ロア』を教えることはできるだろう。
「ところで、リオン君は?」
「ああ、アーマードラゴンを押し付ける餌になりそうな魔獣を探してもらってたが、もう必要ないな」
そう言ってオバリー大尉は空に向けて聖炎の火の玉を放った。火の玉は空中で「ぽん!」と音を立てて破裂する。『スタンショット』という閃光音響弾を発射する魔法だが、こうして合図なんかに使う場合の方が多いせいか、一般的に花火と呼ばれている。
間もなく森のそう離れていない場所から返事の花火が上がった。リオン君からの応答だ。
聖炎は使用者の固有のシグナルが伝わるように出来ている。その感覚は第6感的なもので、言葉では説明しにくい。
「近いな……ん?」
「大尉。この音は……」
森の方から地鳴りのような音が聞こえてくる。何かが群れを成して移動しているようなそんな音だ。段々大きくなってきていることから、近づいてきているようだ。
そして──
森の中から褌一丁の少年が飛び出して来た。
「グランス!?」
「ぶっ!」
噴き出す私。
さっきも見たぞこんな光景。オバリー大尉の時と同じである。オバリー大尉はアーマードラゴンに追われていたが、リオン君もまた追われていた。
森の中から現れたのは数十体に及ぶ頭は牛、身体はマッチョの巨大な人型生物の群れだ。
「ミノタウロス!?」
「大尉に……シーリアさん!? どうしてここに!?」
「やべぇ!! 逃げろ!!」
ラピナちゃんを抱きかかえてオバリー大尉が叫んだ。けれど私の耳には聞こえていない。
ファンタジー世界を描く漫画やアニメでは、大抵人型魔獣は腰に布まいたり、鎧を着ていたりと、最低限衣服を身に着けている。しかし、この世界の魔獣は服を着ない。何故なら獣だからだ。考えて欲しい。現実的にモンスターが衣服を着るだろうか? 人に近いとされるチンパンジーですら衣服を身に着けたりはしない。獣は服を着ない。衣服を身に着けたり宝飾で着飾ったりしていたら、その種族は獣ではない。文化、産業を持った立派な人間だ。
身長3メートルのミノタウロスの群れだ。雄もいる。雌もいる。皆全裸だ。全裸でマッチョが迫ってくる!!
ぷるんぷるんぷるんぷるん!! ぽよんぽよんぽよんぽよん!!
「ぴぎゃあああああ!!!!!」
巨大なアレが!! 豊満な復乳が!! 揺れながら、波打ちながら!! 大量に迫ってくる!!
何あの4連おっぱい!? おっぱい大好きな私でもあんなのは無理!!
目の前の光景にパニックを起こす私。
身体は子供。頭脳は大人。されど心は引きこもりJK桜井あんず。無限のエネルギーを持ってはいても、心のキャパシティはとても狭かった。
恐ろしい!! おぞましい!! 消えろ!! 消えろ!! 消えてしまえ!!
「全砲門開け!!」
周囲に多数の聖刻が展開する。私が生身で使用できる射撃兵装は、2門の『プラズマインパクトガン』と8連装の『ホーミングフェイザー』。そして2基の『対空レーザー砲』だ。
≪FCS起動。ターゲットマルチロック≫
思考停止した私に代わって、AIが自動でミノタウロスを敵性生物と判断してロックオン。
汚物は消毒だ!! 異議は認めない!!
「消えろーーーーーっ!!!!!」
≪オールウェポンフルファイア≫
『プラズマインパクトガン』が、『ホーミングフェイザー』が、『対空レーザー砲』が一斉に発射された。嵐のようなビームとレーザーに薙ぎ払われて、瞬く間に肉片へと姿を変えたミノタウロスの群れ。
否!! 肉片すら残してはならない!!
≪プロミネンス砲デュアルフォーメーション≫
「ふぁいあっ!!」
『プロミネンス砲』はFCSとの接続によって命中率が向上し、二連装で使用可能になっている。放たれた荷電粒子の炎は残った肉片すら原子の塵に還す。
ああ、世界は……浄化された……
やりきった。気分は賢者だ。
WARNING!! WARNING!!
けたたましく警報が鳴っている。どうやらフィンレに穴を開けてしまったようだ。フィンレは高空を飛行している為、気圧差から猛烈な勢いで空気が抜けていっている。
熱くなっている今の私には心地よい風だ。
オバリー大尉は覆いかぶさるようにリオン君とラピナちゃんを護っていた。命がけで子供を護る立派な大人の姿だ。美しい。
間もなく警報が止み、空気の流出も止まった。静寂を取り戻したところで、私は正気を取り戻す。目の前を見ると、そこにあったはずの森が無かった。山も無かった。大地は彼方の地平線が見えるほどに大きく抉られていた。明らかにやりすぎだ。
「やべ」
ヘキサ様に殺される。
とんずらしようとしたその時──
「やべ、じゃねーです!! この、お馬鹿!!」
「ぴぎゃ!!」
高らかに上がった細い脚が見えたと思ったら、頭上に凄い衝撃が来て私は地面に沈んだ。
痛ひ。
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