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膿燕は群青

作者: NO NAME

指先からとめどなく血が流れていって、まっしろな雪の上に緋色の斑紋を描いてゆく。


血痕から指先をさかのぼり、てのひらのくぼみをさかのぼり、やはりそれから手首と肘の裏をさかのぼって、傷口の源はちぎれかけた僕の左腕だ。


ざっくり鉈でも入れたかの様に、脇から骨まで到達していて、もはや使い物にならないであろうそれの代わりに、ひとつ吐息を吐き出した。


けふっ、と割れたヘルメットの内側に血の塊をこぼした。


よろよろと墜落した飛行機から這い出すと、そこにはもがれた肉翼の断片が散乱していて、さっそくそれに群がり始めた膿鴉たちがぎゃあと一声。アルビノの鳥たちは一斉についばみはじめた。


膿燕は群青。


僕の愛機は群青色。


行き過ぎた遺伝子工学により生み出された合成蛋白質形成戦闘機は、ルリヒタキのような美しい外皮を破られ、煙にくすぶられ、



さよなら、さようなら



一億六千時間におよぶ長いフライトを今日。ここで。ついに終えようとしている。おめでとう、さようなら。


マスクのろ過機能がとっくに失われ、もう一度けふ、と僕は咽せ。


むせび。噎せて。


累々と流れる黒い命。


オイル。真っ赤。


痰と涙も混じり合い、この腐った土地でいつか花を咲かす。


歪んだ華を咲かす。


歪んだ茎の骨。


繊細な神経網の蓮の花。


胆石の刺。ぎざぎざの。


ぬめり、とした


か弱い種子。


僕はそれを握り。絶望的24連想。


マグウェルに叩き込む。


バララン、バララン。


プラジュニャー・パラミット弾が。


小気味よく。


バララン。


世界を、呪った。

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