91話 繰り広げられた死闘
激しい死闘が繰り広げられ、俺のHPもハイドラの攻撃を一発でも受ければ死ぬくらいまできていた。
だが俺が攻撃を遅くすることは出来ない。
慎重に戦って死ぬよりも、死ぬ気で感覚で躱しながら攻撃した方が倒すのが早いはずだ。
「……っ」
ハイドラの攻撃を読み間違え、首が当たりそうになる。
ギリギリで体を捻り、躱すことが出来たが今ので少しの遅れと隙を見せてしまった。
「やっぱ狙ってくるよな……聖騎士スキルLv.1 『ハイガード!!』」
固有スキルを使いながらの違うスキルを使う。
初めての試みだが、どうやら成功したようだ。
ハイドラは見事に俺の前に出てきたシールドへとぶつかり仰け反っている。
今なら仰け反っている首を切り落とせる筈だ。
「……くっ、体が動かねぇ!」
スキルを無理やり二つ使った反動からか、体が異様に重く動けなかった。
その間にもハイドラの隙はまた無くなり、丁度のタイミングで俺も動けるようになった。
「────キシャァァァァァァ!!!!!!」
俺に攻撃を防がれたことにムカついたのか、俺の前に展開されているシールドへと全部の首を思いっきりぶつけてきた。
もちろん、俺のシールドが耐えれる訳もなく、4本目の首がぶつけられた時、シールドは破れた。
「───お前隙だらけだぜ」
シールドが破れ消えるエフェクトを使い、シールドを壊して満足気なハイドラへと突っ込む。
エフェクトから飛び出てきた俺に対し、隙だらけなハイドラは避ける術もなく俺の固有スキルを受けていた。
「これで終わりだ!!!」
固有スキルが見事に全身へと直撃したハイドラは、仰け反り、反撃する暇もなく残り体力が減って来ていた。
そして、首もラスト一本となり、お互いにHPもほとんどなくなった時、俺は今出せる全ての力を使い、最後に突撃してきたハイドラの攻撃を躱してその頭へと剣を突き刺した。
「やっと、終わったか……」
ハイドラは断末魔をあげながらエフェクトとなって消えていった。
ボス部屋にはクリアの文字が現れ、攻撃していた人には素材や報酬が配られていた。
中でも、一番ダメージを与え、ラストアタックを決めた俺には莫大な量の報酬が来ていた。
「ダメだこれ……もう立っていられねえ……」
全方位からの視線を感じる中、俺はその場へと倒れ込んだ。
「エンマ。あなた凄いわね。まさかほとんど一人で勝つなんて……」
「おい! あの固有スキルなんだよ!! チート級じゃん! 俺もう勝てる気しねえんだけど!」
「さすがだな。今回は君の勝利だ。褒め讃えよう」
クウガ達や、シズク、それに加えまさかのダンテまで俺を褒めてくれた。
それに連なって、みんながみんな俺を英雄のように扱い、拍手喝采だった。
「すまん。ちょっと寝るわ……」
「えぇ。今回は運んであげるわね」
「頼む……」
拍手喝采に囲まれる中、俺は眠りについた。
みんなから英雄のように扱われ、昔の孤独だった自分を思い出し、みんなから認められたことが少しだけ嬉しくなって泣きそうになったのは内緒だ。
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それから何時間、何日が経ったか分からないが、目覚めた時少しだけ違和感を感じた。
ベッドにしては妙に柔らかい。そして、妙に暖かいのだ。
まるで人の肌に触れているような……
「って、えぇ!?」
「……んん。起きたのエンマ……」
「起きたのじゃねえよ!! 膝枕!?? 」
「嫌だったかしら?」
「いえ、むしろ嬉しいです」
シズクの膝はなんていうかモチモチでものすごく気持ち良かった。
そんな膝を体験していた俺だが、起きた所為なのかシズクは俺のことを膝からどかしてしまった。
「ちっ……」
「まぁ起きてくれて良かったわ。まさか丸二日寝るなんてね。みんなも死んでるんじゃないかって心配してたんだから」
「丸二日……か。その間にもきっとなんかあったんだろ?」
「えぇ。事態は深刻よ。もしかしたらエデンの塔を攻略出来なくなるくらいにね」
「そうか。その話……聞きたいんだが、先にシャワー浴びていいか? 汗がやばくてな。集中して聴けねえわ」
現に、今の俺の服は汗で濡れて気持ち悪い状態になっていた。
こんなの真剣に聞ける筈もない。
「全く。まぁいいわ。早くしなさいよ」
「分かってるって」
シズクに背を向けたまま頷き、俺はひとまずシャワーを浴びに行くのだった。




