87話 有益な情報
クウガ達が洗脳された事件から数ヶ月が経ち、既にエデンの塔は90階層に到達する勢いだった。
とは言っても、毎回毎回犠牲者は増え、今や攻略する人は4桁居れば良いほうだろう。
徐々にこの世界が良いと思う人などが増え、こんな状況になってしまっている。
「はぁ、今日も見つからなかったなぁ……」
「そうね。ヒマワリちゃん……どこに行っちゃったのかしら」
あれから俺たちは全ての階層をやれる限りくまなく探した。
ボス部屋を見つけるよりも、優先して探してきたが、やはりどこにも見つからなかった。
今日も90階層を探索してきたが、気配すらなく、天使も居なかった。
「クウガ達もダメだったみたいだな」
「他の人も見つからなかったみたいよ」
クウガ達はもちろん、俺たちは他の攻略班の人達にもヒマワリを見つける手伝いをしてもらっていた。
と言っても、攻略班の人たちにはボス部屋を見つける道中で見つけたらメッセージを送ってくれと言ってあるだけだが、シズクに対しては何故か頻繁にメッセージが来ていた。
「お、噂をすればクウガ達が居るな」
メッセージを確認した後、少し歩いたところでクウガ達を見つけた。
あの事件以来クウガ達は平面上はいつも通りの仲だった。
と言っても、心の中はどう思っているかは分からないが。
「よぉエンマ!」
「おう! 塔からの帰りか?」
「メッセージ送っただろ? ま、エンマの言う通り塔からの帰りだよ。んでだ、エンマ達に報告があるんだけど……」
「ん? 報告?」
メッセージで送らなかったということは、ヒマワリや天使達以外の報告だろう。
クウガと俺以外の人たちもシズクと仲良く話している。
何の話をしているのかはよく聞き取れないが、まぁ軽い雑談程度だろう。
そんな事よりも、今はクウガの話を聞くことが優先だ。
「今のエンマ達にはあんま興味ないかもだけど、一応俺たちはボス部屋を見つけたんだよ。マップデータを渡しておこうと思ってね」
「うーん。興味ないわけではないぞ? それに、90層も粗方捜したしな、そろそろボス部屋を見つけようと思ってた所だから丁度いいくらいだよ」
「おっ! なら良かったわ! んじゃ、マップデータ送信しとく!」
「さんきゅー!」
俺がクウガからマップデータを貰った丁度くらいでシズク達の話を終わったようだった。
敢えて何の話をしていたのか詮索はしないようにしておこう。
「それじゃ、俺たちは宿に行って休むわ」
「おっけー。んじゃ、またな!」
「また会えることを願ってるわ」
クウガ達に別れを告げ、俺はシズクにボス部屋のマップデータについて話をした。
「明日はボス倒しに行く?」
シズクからの提案は良いのだが、さすがに90階層の敵となれば結構な人数が居なきゃ倒せないだろう。
「あー、確か明日だよな? 攻略班と攻略ギルドの話し合い。そん時に俺らも参加するか。クウガ達も参加するみたいだし」
「それもそうね。クウガ達にマップデータを公開していいかメッセージで聞いておくわね」
「頼むわー」
その日、俺とシズクは普通に宿へと戻り、休息を取った。
そして次の日の朝、エデンの塔前で攻略班と攻略ギルドによるエデンの塔会議が始まった。
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「それでは、会議を始める! っと言いたいところだが、なぜ君たちのようなギルドに入ってもいない人が居るんだ?」
攻略班のリーダーが俺たちとクウガ達を指差し、訊ねてくる。
「ま、俺達もエデンの塔を攻略するのに少なからず貢献してるしな、それに今日は有益な情報を持ってきたんだぜ?」
「そうか。まぁ、君たちならここにいる人たちも不満はないだろう。なーに、ちょっと理由を聞きたかっただけさ、悪くは思わないでくれ」
「気にしてねえから大丈夫」
「それで、有益な情報とは?」
俺たちは昨日クウガ達にボス部屋情報について公開していいか聞いておいた。
俺達には良いと言っていたが、さすがに見つけた人が言うべきだと思い、俺はクウガ達から話すように提案した。
結果、クウガが代表して言うことになったが、あいつは緊張せず言えるのだろうか。
「俺が見つけた情報じゃねえけどな。多分これを聞けば、今日の会議は終わると思うぜ?」
「ほほぉ。ならば代表者が聞かせてみるがいい」
俺はクウガの背中を押し、今言うべきと伝える。
どうやら、めちゃくちゃ緊張しているようだ。
「お、俺が見つけた情報っていうのは、ボ、ボス部屋のマップデータです!!」
緊張して噛みまくっていたクウガに俺たち含め、ほとんどの人が笑ってしまっていた。
場は上手い具合に和んだが、当の本人であるクウガは顔を真っ赤にしていた。
「……ふむ。ボス部屋の情報か。そうだな。確かに会議は終わりだ。これからエデンの塔90層ボスを討伐する! 死にたくないやつは来ない方が良いぞ!!」
攻略班よりも人が多く、人望がある攻略ギルドのリーダーが会議に終わりを告げ、人を集め始めた。
俺たちは、その場にいた100人程度に一斉にマップデータを送信し、俺達も攻略する仲間として集まる。
「まぁ、この程度居れば問題ないだろう」
ボスと聞いて具合悪くなった人や、怖くなった人を除いても、攻略する人は60人余り居る。
これだけ居れば、今まで通りいけば勝てるだろう。
「これより!90層ボス討伐作戦を開始する!!」
「「「うぉー!!!!!!!!」」」
さすがに人望が厚いだけあって、みんなの叫び声が聞こえた。
そして、俺たちの90階層ボス攻略が始まった。




