77話 ヒマワリ
「───二人とも、ごめんな」
勝手に人のを見るのはダメなのは分かってる。
ましてや、普段から仲の良い二人のことを鑑定するのは少しだけ罪悪感を感じた。
確かに、二人に頼めば鑑定くらい快く了承してくれるかもしれない。
ただ、正直二人に頼むのはめんどくさい。
絶対色々言ってくるのが目に見えてわかる。
だから、今のうちに見ておこうというわけだ。
それに、俺以外にも大幅なレベルアップがあったのか少し気になるところだしな。
「今思えば、ヒマワリの今のステータス見るの初めてだな」
そんなことを思いながら、俺は寝ている二人へと鑑定を発動した。
『ステータス』
名前:キリガサキ シズク
レベル:80
所持金:324000マニー
HP:367(+70)
MP:872
スタミナ:407(+30)
STR:183
VIT:301
DEX:359
AGI:403
INT:704(+60)
LUCK:405
CHARM:609
武器:大天使の槍杖
頭:悪魔の角
胴:漆黒のローブ
腕:天の腕輪
腰:
足:暗闇のロングブーツ
アクセサリー:魔力の腕輪 生命のネックレス
スキル: 【四大魔法Lv.10】【魔法破壊】【魔力増大】【自動MP回復】【二連魔法】【魅了魔法】
称号: 四大魔法を極めし者
能力振り分けポイント:45
使用可能スキルポイント:30
取得可能スキル:【光魔法】【闇魔法】【三連魔法】
先にシズクを見た。
やはり、レベルは俺と同じように高くなっている。
これは70層のボスを三人で倒したから相対的に経験値が莫大なものだったからだろう。
それに、どうやらシズクは魅力魔法というものをいつの間にか取っていたらしい。
まぁシズクならcharm値も高いし使いこなせるだろう。
どう使うのか分からないが。
「さてと、次はヒマワリか?」
俺がヒマワリへと鑑定をかけようとした直後だった。
寝ているはずのヒマワリが立って俺を見つめていたのだ。
「ねぇ、エンマ? 何してるの?」
目は暗かった。
暗闇だからかもしれない。
だけど、月明かりによって見えたヒマワリの顔はいつもの明るいヒマワリじゃなかった。
怒っているとも表現出来ない、目を見れば吸い込まれそうな真っ黒の目をしていた。
「い、いや、ちょっと寝付けなくてな。少しお前らの寝顔見てたんだよ」
「そう。でも、シズクちゃんは気づいてないみたいだけど、勝手に人のこと鑑定したら分かるからね? ダメだよ?」
「あ、あぁ。すまん。無意識でオート鑑定にしてたよ」
「……それじゃ、早くエンマも寝るんだよ?」
少しだけ長い間があった。
これは俺の苦し紛れの言い訳が意味なかったことを表すはずだ。
ただ、ヒマワリがどうして鑑定をする直後に起きて俺に鑑定をさせなかったのかが分からない。
見られたら困ることでもあったのだろうか。
「あんまり考えすぎない方がいいよ。知らない方がいいこともあるんだから」
ずっと立って表情を変えずに淡々と喋るヒマワリを見て、俺は一時の森の中での出来事を思い出していた。
病んだヒマワリと言って良いのか、よく分からないが、あの時の狂ったようなヒマワリとオーラのようなものが似ているのだ。
姿形はあの時のヒマワリとは違う。
ただ、俺を見るその目と言葉に表せないものがどうしても似ているように思えた。
「あぁ。じゃ、ヒマワリおやすみ」
「うん。おやすみなさい。エンマ」
俺が寝転んでもまだ感じるヒマワリからの視線、というよりも気のようなもの。
寝るまで俺を見張っとくつもりなのだろうか。
いや、むしろ今思えばヒマワリは俺の前で俺より先に寝たことなんてあったか?
毎回俺が寝た後に寝ている気がするし、それ以外なら俺と違う部屋で寝たりとか。
「いや、考えすぎか……」
きっとヒマワリが単に見られたくないだけだろう。
俺をそう思いながらとりあえず寝る事にした。
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それからというもの、少しだけ休んだ俺たちはエデンの塔を攻略していた。
もちろん、ボスを三人で倒すなんて馬鹿な真似はしないで、攻略者たちと倒している、
この時は既に俺の頭の中からあの時のヒマワリの違和感は無くなっていただろう。
だけどこの後、俺がどうしてもヒマワリのことを鑑定したくなる事実が起きる。
それは、第78層を三人で挑んだ時の話だ。
今現在、難しいと思えた78層を乗り越えた為に80層へと至っているが、俺はその問題の78層の時のことを少しだけ思い返していた。
「ヒマワリ……お前は一体……」
隙がないヒマワリを俺が鑑定することは出来なかった。
ましてや、勝手にしようものなら魔防防護のバリアのようなものに弾かれてしまう。
ヒマワリは一体何を隠しているのだろうか。
それは仲間にも話せないことなのだろうか……
俺は二人と別の部屋で一人椅子に座り考えていた。