クリスマス特別編2 選ばれた答え
クリスマスまで残り2日。
あれから、二人は返事の催促をするまでもなく、至って普通に過ごしていた。
なのに、俺はというと、
「はぁ……まじどっちに行けばいいんだよ……」
初めは二人と行こうと考えた。
だが、仮にそれを言った場合、なんとなく喧嘩しそうで言えないのだ。
シズクなんて特に怒るだろう。
「俺から誘うという風にするかべき……か」
ただ、その場合二人が感づいてくれないと成立しないわけだ。
二人に対して突然俺がクリスマスにイルミネーションへと誘う。
だが、シズクとヒマワリは俺にイルミネーションへの誘いをしてきている。
俺から誘えば、一瞬の沈黙が流れる可能性もあるという事だ。そうなると、お互いに変な風に勘違いをして、俺は断られるという……いや待てよ?
むしろ俺の中では断られた方がいいのか?
断られればまたいつものようなクリスマスとなる。
「二人に悪い気がしちまうな……」
日が沈み、また結論が出ないまま今日という日が終わった。
そして、次の日になり、ようやくヒマワリが俺へと返事を訊ねてくる。
起きて朝の支度を終わらせて、ひとまず落ち着くためにも弱いところでレベル上げをしようと思った矢先に、ドアをノックする音が聞こえた。
「ん? 鍵なら閉めてないぞ」
「あ、うん。私だけど……」
周りを少し警戒しながら俺の部屋へと入ってきたのは、ヒマワリだった。
様子を見るに返事を聞きに来たのだろう。
「あの、ね。エンマ。そんなに悩まなくていいよ? たかが、クリスマスだし、家でゆったりとかでも、あ、他に誘われてる人が居るなら大丈夫だよ? でも、シズクとは行って欲しくないなぁ……嫉妬しちゃうし」
恥ずかしいのか、少しだけ早口で言った言葉は、俺の心を少しだけ抉った。
今この状況で俺はシズクからも誘われたと言おうとしていたのだ。
だが、ヒマワリのこの言葉で一気に言えないという状況になってしまった。
「どうしたの? エンマ」
俺が黙って考えているからか、ヒマワリが俺の前で手を振っていた。
「エンマ? 居るかしら? ちょっと話したいことがあるんだけど……」
最悪のパターンに陥ってしまった。
俺の答えを出すのが遅かったから、このヒマワリがいるという状況でシズクがドアの前に居る。
「開けるわよー?」
そして、今俺はまた返事をするのが遅くなり、シズクは問答無用にドアを開けて入ってきた。
ヒマワリはさっきまでとは少し違い、いつもの元気そうなヒマワリに戻っていた。
さっきまでは照れている感じで良いのだろうか。
「あら、居るじゃない。って、ヒマワリちゃんも居るの?」
「あ、あぁ。ちょっと俺に聞きたいことがあったらしくてな」
「あらそう。ま、いいわ。それよりもクリスマスの返事はまだかしら?」
あ、やばい。これはやばい。ヒマワリが完全に止まっていた。
驚いて止まっているんだろう。
「お、落ち着けシズク。とりあえずな、うん、」
「ちょ、ちょっと待って? シズクにも誘われてたの? ねぇ、で、今まで考えてたと。私とシズクどっちと行くか考えてるね。うん。ちょっと、エンマ、二人きりで! 話そうか」
「何怒ってるのよ。それならヒマワリちゃんも一緒に行く? 私的にはエンマと二人きりでも良かったんだけど、ヒマワリちゃんも行きたいなら別にいいわよ?」
「ふ、ふーん。ま、まぁそれなら確かにエンマは選ばなくて済むわね。で、でもとりあえずエンマの選択を聞いてもいいかしら?」
シズクの優しさによって、ヒマワリ達とは結局3人で行くことにはなるだろう。
だが、俺は一応二人のうちどっちかを選ばないといけないらしい。
二人の視線が俺へと集まる。
ヒマワリを選んでも、ヒマワリは多分シズクを連れてくし、その逆もまたある。
こういう時、しっかりと選べた方がカッコイイと思うが、そんな女の子に慣れてない俺には無理だった。
「あー。やっぱり選べねえわ。二人とも大事っていうか、まぁ二人と行きてえかな?」
「はぁ……ま、エンマならなんとなくそう言う気がしてたよ……」
「それじゃ、明日の夜に私たちの部屋に来てちょうだい。ちゃんとカッコよく支度してくるのよ?」
「カッコいいの期待してるからねー!」
「ま、待て! そんなの俺には無理だわ!!」
二人は俺の言葉に耳を貸す気もなく、部屋へと戻ってしまった。
結果的に悩みは解決したのだが、カッコよくなんて俺には無理だった。
そんなことを考えつつ、髪をセットしてみたりと、服を選んだりしていたら、その日は終わってしまった。
そして、クリスマスはやってきた。
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時刻は夜になり、俺たちは集まって問題のイルミネーション会場へと向かっていた。
「ふぅ。寒いね……」
「まぁ冬の夜だからなぁ……」
「あなた達。というか、エンマは妙に薄着ね。それに、カッコつけてる? のかしら?」
「お前らがカッコよくしろって言ったんだろうが!」
「「そんなこと言ったっけ(かしら)?」」
二人はとぼけたように首を傾けていた。
しょうがなく俺は諦めることにして、冷たい風に吹かれながら体を震わせる。
「全く。このマフラー貸してあげる!」
「ほら、手袋くらい付けなさい」
なんだかんだ言いつつも、二人は俺に配慮をして、手袋とマフラーを貸してくれた。
「ありがとな。二人とも」
「べ、別にあんたが寒そうにしてたからしょうがなくよ!」
「エンマ寒そうだもん。さすがに見てられないから……」
こうして、俺たちはイルミネーション会場へと到着した。
確かに、イルミネーションは綺麗だった。カップルも多く、友達同士で来ている奴らも居ただろう。
そこで俺たちにもなにかアクシデントが起きると思っていた。
だが、結局何もなかったのだ。手を繋ぐこともなく、ただ3人で歩きながら語彙力を低下していたのか、綺麗やら簡単な感想しか出てなかった。
「いやー、楽しかったね!」
「まぁ中々だったわ」
「確かに、クリスマスツリーも綺麗だったし、行った甲斐はあったな」
みんなで宿屋へと戻り、少しだけイルミネーションの感想を言い合いつつ、暖まった後に俺だけ自分の部屋へと戻った。
「クリスマスにほかの人と過ごすのって楽しいんだな……」
眠気に負けつつ、ベッドに寝転がった俺は、今まで一人で過ごしていたクリスマスよりも、楽しく女の子と過ごせたのが嬉しかった。
きっと寝ながら夢を見てニヤケているかもしれない。
こうして、俺はいい夢を見ながらクリスマスという聖なる日を終えた。
「あ、忘れてた。メリークリスマス……」
寝言のように呟き、俺はもう一度夢の世界へと入っていく。
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クリスマス特別編 完結。
皆様もいい夢を。
ふぉっふぉっふぉっ……
「Merry!X'mas!!」
なんとなく皆さん予想ついていたと思います(ノ∀`笑)
これでクリスマス編は終わりです。少し物足りなかったでしょうか?
ほんとは各ヒロインずつ書こうかと思ったのですが、さすがに厳しかった……




