68話 量産された者達
エデンの塔に向かってい俺たち。
既にエデンの塔にはあらゆる人が多数いた。
主に攻略する人達だ。レベル上げのために弱いところに潜る人も多いが、現在は攻略するために来た人が多いだろう。
なにせ、つい先日に69階層を突破し、今日から70階層が攻略出来るのだ。
早くクリアしたい人は一目散に飛び込むはず。
「70階層かぁ……俺らに勝てるか?」
「うーん。どうだろ。私がエデンの塔に行ったの結構前な気がするしなぁ……」
「そうねぇ。それに、私たち最近ゆったりしてたからレベル上げもしてないし」
確かに、シズクの言う通り、ここ最近少しゆっくりしすぎたかもしれない。
なにせ、レベルがルシフェルを仲間にするまでに1程度しか上がってないのだ。
これでは70階層のモンスターにも殺られるかもしれなかった。
「まだ行かないの?」
ルシフェルが進まない俺たちに首を傾げながら訊ねる。
「あ、あぁ。そろそろ行くか」
「そ、そうね。行きましょ」
「ほら、ルシフェル! 危ないから私と手を繋ご!」
「……エンマがいい……」
「はいはい。ほら、」
「はぁ……またエンマか……」
「諦めなさい。あなたはルシフェルちゃんの中の優先順位に負けたのよ」
俺とルシフェルが手を繋いでいる中、やけにショックを受けているヒマワリをシズクが慰めていた。
とても珍しいことだが、何故か俺が悪い気がしてくるので是非ともやめてもらいたい。
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そうしているうちに、俺たちはエデンの塔の70階層へと入っていった。
どうやら、今回はあらゆるエリアがあるらしい。
今尚俺たちの前には、3通りの道があった。
真っ直ぐの道はコンクリートやらで出来た普通の道。
右の道はジャングルのように森が生い茂っている道だ。
そして、左の道は明らかに危険な水に潜って進む式の道だった。
「なぁ、どの道に行く?」
「私、水が良い。エンマも良い?」
ルシフェルが自分から真っ先に意見を言ってきた。これは、珍しい。
だが、さすがに水となると潜って進む必要があるのだ。
当然モンスターとは戦いにくく、息継ぎが必要となる。
一番危険なルートと言えるだろう。
「私、みんなのこと浮かせれると思う」
「どうゆう事だ?」
「私、この塔に入って自分が出来ることの一つを思い出した。それが、体を軽くする事。単純に言えば、みんなの事を少しのあいだ飛ばせることが出来る」
「ほんと!? それならこの水のルートにしましょ!」
「うんうん!! 私も飛びたいし!」
「ほんと、お前ら欲望に忠実だなぁ……」
結局の所、みんなの意見が総意し、水のルートに進むこととなった。
もちろん、こんなルートほとんど攻略組も通っていない。
何故かって、少しも通った形跡がないからだ。
まぁ、死にに行くような所には普通入らないだろう。
「それじゃ、飛ばせるね。あんまり長くはできないから早く陸を見つけた方がいいかも」
「おっけー!」
「おう!」
「早く早く!!」
ルシフェルが俺たちに魔法? のようなものを掛け、俺たちは一瞬光の粉のようなものに包まれた。
そして、気がつけば、俺の体はものすごく軽くなっていた。
というよりも、既に浮いていた。
「ぉぉおお!! すげえなこれ!」
「早く行こ」
「ほらほら!エンマ置いてくよ!」
「これ、ちょっとだけ歩くの難しいわね……」
俺とシズクは少し苦戦しながらも水の上を飛んでいた。
少し経つ頃にはだいぶ慣れ、普通に飛ぶことが出来るようになった。
「おー。めっちゃ水透明だなぁ……」
上から見る景色は壮大なものだった。
水は透明度が素晴らしく、中にいるモンスターや魚まで見えるのだ。
というよりも、普通に水の中に見えるモンスターが危なそうなやつにしか見えず、俺の内心は飛べて良かったという気持ちしかなかった。
「みんな!何かが突撃してくるわよ!!」
シズクの声が聞こえ、俺たちは臨戦態勢に入る。
『おまえ達、どうして空を飛んでいる。不正行為だ。即刻排除する』
たまに俺の脳内へと響く声に似た声で話しかけてくるそいつは、妙に誰かに似ていた。
「……頭が……痛い……も、戻ろ……」
俺が隣を見ると、さっきまでは平然としていたルシフェルが突然頭を抱えだしていた。
そして、俺が一瞬疑問に思ったことが今解決されたのだ。
俺たちの前にいる敵は、そう、ルシフェルに似ているのだ。
どことなく、俺たちの前にいるルシフェルは色が薄かった。
それ以外はほとんど一緒だ。
「みんな!とりあえず戻るぞ! ルシフェルがやばい!」
「おっけー!」
「迎撃しつつ戻るわ!」
「頭が割れる……痛い痛い……やだやだやだ……もうやめて……嫌だよ……」
ルシフェルがブツブツ呟き出した。
嫌なことを思い出してしまったのだろうか。
自分と同じ者を見たから記憶を取り戻した?
なら、こいつは一体。
『複製された天使』
ステータス:解析不能
スキル:解析不能
称号:罰を与えしもの
鑑定してみてわかったが、やはりこいつはルシフェルを模して作られた複製体だった。
それも、どうやら不正行為などに対して発生する抑止力のようなものだった。
「襲ってこない?」
俺達が逃げようとしても、まるで何もしてこなかった。
さっきまでは排除すると言っていた口も何も喋らなくなり、ただその目はルシフェルを見つめていた。
そして、俺達がだいぶ離れた時、そいつの口は動いた。
『オリジナル。発見した』
それだけを言い残すと、複製体はどこかへと飛び去ってしまった。




