67話 抹消された者達
エデンの塔へと向かうべく、俺たちは街に転移石を買いに向かった。
「この街って、ほんと綺麗だなぁ……」
買い出しにヒマワリとシズクを連れていくとうるさい上に、無駄なものをヒマワリに買わされる危険性があるため、ルシフェルの面倒を見させて留守番をさせた。
久々に一人での買い物だ。少しだけ気が楽になる。
「私はあの食べ物屋に行きたい」
ん? 今どっかから声が聞こえたような……それに、手を引かれている気が……いやでも、三人は置いてきた……し……
「───聞いてるの?」
「───うわっ!! な、なんでお前がここに居るんだよ!!」
「二人から逃げてきた。多分大丈夫」
ルシフェルに驚きつつも、俺は周りを見渡す。
ルシフェルが逃げたことに気づいた二人がきっと捜している筈だろう。
「あ!見つけた!!」
「ヒマワリちゃん! 捕まえて!」
「了解!!」
こういう時ばっか連携をとる二人は、俺たちを見つけてすぐに、近くへと走ってきた。
「ルシフェル捕獲!……ってあれ?」
「ルシフェルが困ってるだろうが。やめなさい」
「はぁはぁはぁ……って、エンマ居たのね」
「私も今気付いた!」
ほんとにこいつらはルシフェルにしか目がいってなかったらしい。
俺がルシフェルを抱き抱えなきゃ、こいつが無理やり連れ去った可能性もある。
やはり三人きりにするのは危ないな。
「んで、転移石は買えた?」
「まだだ。でもそこの店に売ってるから買ってくる。そこで待ってろ。絶対に動くなよ?」
「私が見てるから早く行きなさい」
「私もついて……」
「「いかないの」」
さすがに短時間では何も出来ないだろうと思った俺は、目の前にあった店で転移石を買い、すぐさま戻った。
1分も経ってない故に、さすがに三人共動いてはいなかった。
「よし、とりあえずエデンの塔の近くの街に行くぞ!」
「了解であります!!」
「なんで敬礼してんのよ! ルシフェルちゃんも真似しなくていいのよ?」
「……?」
ルシフェルは見よう見まねでヒマワリの真似をし、敬礼していた。
少しだけ可愛いと思ったのは内緒だ。
こうして、転移石を買った俺たちは全員でエデンの塔近くの街へと転移した。
ルシフェルは俺の袖をつかみ、一緒に転移だ。
どうやら使い方がわからなかったらしい。無理もない。記憶もなくなってるんだからな。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「到着!」
体を伸ばし、周りを見渡して転移できたことを確認する。
どうしてか分からないが、転移した直後から、街は賑わっていた。
外までその賑やかさが伝わるほどだ。
「なんだろうね? お祭りとかかなぁ……」
「祭り??」
「ま、街の人に聞いてみましょ」
シズクの言う通り、俺たちは街へと入り近くにいた人に話を聞いた。
「この賑やかさか気になるって? そんなの決まってるだろ! 殺人ギルドが無くなったんだよ! ほんと、神運営だな!」
「へぇー。教えてくれてさんきゅ!」
「これくらい容易いさ」
俺は感謝を述べ、みんなに殺人ギルドがなくなったことを話した。
「そんな事があったのね……お知らせとかになにかないかしら」
シズクがメニュー開き、運営からのお知らせを確認している。
と言っても、この世界が既にゲームじゃないと知っている俺からすれば運営がどのようにして殺人ギルドを抹消したのか気になるところだ。
「あ、あったわ!」
シズクの言う通り、俺たちもお知らせを読んでいた。
そこには、何故殺人ギルドが消されたのかを簡潔に書かれていた。
『この世界において、NPCを残虐に殺害するなどの行為を働いたギルドを抹消した。同時に、同じ系列のギルド全ての抹消。不正行為はやめましょう』
どうやら、いくつかの殺人ギルドは巻き添えをくらったらしい。
「ま、殺人ギルドがなくなったのは嬉しいことだわ」
「そうだよね! これで安心出来るし!!」
ヒマワリとシズクも安堵した様子だった。
さすがにこれ以上、殺人ギルドについて色々言うのもアレだ思った俺は、二人に合わせてとりあえず本音の気持ちとして喜んでおく事にした。
「さてと、喜んでるとこ悪いが、そろそろエデンの塔に行くぞ」
「了解!!」
「大丈夫よ」
「……エデンの……塔……」
ルシフェルがなにかを考えていた。
だが、俺たちはそんな事にも気づかず、エデンの塔へと足を運ぶのだった。




