57話 怖い魔法
神殿内部を探索している俺達。
三人居ると、会話が絶えることはなく、むしろ騒がしい。
主にシズクとヒマワリの喧嘩やら、言い争いやらで騒がしいのであって、俺は止めるハメになっている。
止めるたびに色々言われるのは正直ちょっとしんどいというのは内緒だ。
「なぁ、お前らって毎度毎度何のことで喧嘩してんだ?」
純粋な疑問だった。
たまに俺の話で喧嘩になってるのがちょっと気になってしまう。
だから、今俺は聞いてしまったのだ。
「……それよりもシズクー? そろそろ私モンスターと戦いたいんだけどさー」
「そ、そうよねぇ。私もそろそろモンスターと戦いたいわ。魔法の腕も鈍ってきちゃうしねぇ」
明らかに話を逸らしている二人。
なにか怪しいが、ここは突っ込むべきなのか、俺も話に混ざるべきなのか。
「それじゃ、こっちの道行ってみようぜ。見た感じ細い道より広い道のがモンスター居そうだしさ、右の道に行けば広い道に出れそうだし」
少し迷った結果、俺は話に入ることにした。
喧嘩の話題は正直ちょっと気になっただけなので、放置しても問題はない。
「そ、そうね! なんとなく私もそっちの道がいいわ!」
「う、うんうん! そうしようそうしよう!」
「ただの俺の勘だけど良いのか?」
「「大丈夫大丈夫!」」
上手く話を逸らせたのが嬉しかったのか、二人は少しガッツポーズをしていた。
と、ここで俺は考えていた作戦を決行する。
「よし、道も決まったことだし! で、なんでたまに俺のことで喧嘩してんだ?」
「「そんなの知らないわよ!!」」
二人で同時に言葉を言い、俺はその迫力で負けてしまった。
「お、おう。なんかすまん」
ムスっとした二人の後を俺は歩き、モンスターと出会うために歩く。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
俺達が道を進むと、俺の予想通り広い道へと出ることが出来た。
そして、もちろん、俺の予想はさらに当たり、広い道の真ん中には巨大な如何にも強そうなモンスターが佇んでいる。
「なぁ、ほんとにあれ大丈夫か? 明らかに強そうじゃね?」
「あんなの余裕よ余裕! 私に任せてよ!」
「そうよ。私の魔法で一発に決まってるわ」
何故か余裕そうなヒマワリとシズクに対して、ちょっと疑問に思いつつも、俺は二人に従い、遠目から鑑定を使用する。
『ギガンテス』
レベル:76
HP:2540
STR:682
DEX:142
AGI:183
特徴:防御力が低く、攻撃力が高い。
どうやら、このモンスターはスキルも持っていなく、ただの木偶の坊は言い過ぎかもしれないが、体力と攻撃力が高いだけのモンスターだった。
「よし。二人とも。この距離から魔法で攻める作戦でいくぞ。なんかあのモンスター、体力と攻撃力は高いけど、防御力とスピードが遅いらしいから普通に勝てるはず」
「はーい! んじゃ、最高火力の魔法準備するねー!」
「ま、私はMPの事も考えて、程々の魔法で行くわ」
「一応、俺が注意を引く為に近くへと寄るから、隙を見て魔法を放ってくれ」
「気を付けてね?」
「攻撃力高いんでしょ。受けないように注意しなさいよ」
「はいはい。分かってるって」
俺は一人走り出し、モンスターに俺の存在を気付かせる。
モンスターは案の定俺にすぐ気付き、巨大な斧のような武器を構えて、俺へと投げてきた。
「うおっ!! あっぶねぇ……」
まさか斧を投げてくると思ってなかった俺は、巨大な斧を間一髪で避けた。
だが、俺の走りが止まったことにより、俺の近くへと既にギガンテスは迫っていた。
「雷魔法Lv.10 『神の雷!』」
「闇魔法Lv.9『深淵からの呼び声!』」
俺へと迫っていたギガンテスに対し、シズクとヒマワリが魔法を放つ。
ヒマワリの使った魔法は、動きは遅いながらも、シズクの雷によって痺れているギガンテスに直撃させることが出来た。
ヒマワリの使った魔法は、直接的なダメージとしてではなく、体の内部から破壊する魔法だった。
ギガンテスが痺れている今、それを避けることができなかったギガンテスは一つしかない目玉もくり抜かれ、口からは血を吐き、最後には体が真っ二つに割れ、血が噴水のように噴き出していた。
「おぉ……怖っ……」
「ほんと、ヒマワリちゃん怖いわ……」
「いやいやいや、あの魔法ね、普通当たらないから! 当たったら確かにグロいし、強いけど、条件揃わないと当たらないんだって!」
俺の近くへと寄ってきたヒマワリとシズク。
シズクはシズクでグロいのを見て、結構引いていた。
そして、俺とシズクは弁解しているヒマワリを前に、ちょっと引きつつも、ヒマワリが泣きそうになっていたのを見て、さすがに止めてあげることにした。
「ま、助かったわ! ありがとな!」
「うん……もうあの魔法二度と使わない……」
「そうなの? 結構強いし、良い魔法だと思うけど?」
「あんたも引いてたでしょうが!! 」
「あはは。ごめんなさいね。ちょっと冗談が過ぎたわ。ま、貴方が使わないなら良いんじゃない?」
「そうだな。別に使いたくない魔法なら使わなければいい」
「うん!」
こうして、エフェクトとなって消えたギガンテスを見てから、俺たちはまた歩き出した。
そして、歩き続けた先に見えたのは、また大きな扉。
頑丈で壊れそうにもない扉だ。
さっきのギガンテスは扉の割と近くだったこともあり、門番という立場だったのかもしれない。
「ふぅ。今度はボス部屋だよな。多分……」
「ま、そうだと思うわ」
「むしろボスじゃなかったらなにが居るんだよっ!って感じだしね」
その感じを一度味わった俺からすると、なんとも言えないのだが、まぁ2度目は多分ないだろう。
「よし、それじゃ、アイテム使って全回復したから行くか!」
「はーい!」
「そうね!」
俺たちは扉を前にして、失ったMPや、スタミナを回復し、扉の向こうに多分居る敵へと準備を整えるのだった。




