52話 神殿内部
街から見え、そう遠くない場所にある神殿。
街から見える限りでも、相当な大きさだと分かる神殿の前に俺たちは居た。
「これが神殿か……そういや、前はこんなのなかったなぁ」
「そうねぇ。こんなデカい建物あったらさすがに気付くわ」
「二人共! 早く入ろ!」
俺達が神殿を見て、観察している所をヒマワリが現れ、俺たちの手を引いて神殿へと引っ張ってしまった。
正直、ちょっとだけ中に入るのが怖かったとは言えない。
「おおー!! ここが神殿!! 凄い! 広いし天井高い!!」
ヒマワリが子供のようにはしゃいでいるが、確かにその気持ちも分からなくはなかった。
天井は高く、ダンジョンよりも明るく、それでいて綺麗。
広さも相当なものだし、子供のようにはしゃいぎたくなるのも分かる。
「ヒマワリちゃん、とりあえず落ち着いてちょうだい? もしも敵がいたら騒がしいのは危険だわ」
「べ、別に騒がしくしてないし! あんたに言われなくてもそんなこと分かってるもんね!」
「あらそう。あ! あそこに敵が!」
「えっ!? どこ!?」
「はーい。嘘です」
「嘘なの!? 安心したけどなんかムカつく……」
「まぁまぁ。二人とも、とりあえず喧嘩は終了。それよりも、前にある宝箱、気にならないか?」
誰が置いたものかは分からないが、どうみても罠であろう宝箱が三つ。俺たちから少し離れた所に置いてあった。
それが無性に俺は気になったのだ。
「罠だったらどうするのよ」
「そうだよなぁ……でもちょっと気になるんだよ」
「えーい!」
俺とシズクが警戒しつつ、宝箱を開けるか迷ってる中、楽観的なヒマワリは既に一つの宝箱を開けていた。
「あっ!! ねぇねぇ! 罠じゃないみたいだよ? なんかアイテム入ってるし!」
「ホントか!? 何が入ってたんだ?」
「ふぅ。罠じゃなくて良かったわ」
ヒマワリの側へと駆け寄り、ヒマワリが持っていたアイテムを見ようとしたその時だった。
ヒマワリの手からアイテムは消え、俺たちは奈落の底へと落下していた。
「えっ……私のアイテムは!?」
「それどころじゃねぇ!! やっぱり罠じゃねえか!!」
「キャァァァァァァァ!! 絶対これ死ぬ! 死んじゃうって!」
シズクがテンパって叫び声をあげていた。
確かに、この速度での落下。こんな状態で、下が固い地面だとしたら即死間違いなしだろう。
「───死んだわこれ」
地面が見えた時、俺は死を覚悟して目を瞑り、落下が終わるのを待った。
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落下は終わり、俺は自分が生きていることを確認した後に、目を開けた。
自分の体を見渡すが、目立ったところに外傷はなく、特に痛みもない。
「ん? これ、クッション?」
地面を叩き、バウンドするのを確認する。
どうやら、俺が地面に見えていたものは、クッションであり、落下死はしないように設定されていたようだ。
「おーい! シズクー! ヒマワリー?」
周りを見渡しても居ない二人をその場で大声で呼ぶ。
だが、反応はない。
「ふむ。とりあえず、歩いて探すか」
クッションから起き上がり、歩きなれないクッションを歩く。
何十mか歩いたところで、ようやくクッションから抜け、普通の地面へと変わった。
だが、やはりシズクとヒマワリ。どちらか片方も見つかるわけもなく、俺は一人になっていた。
「これが良くある仲間散り散りパターンか……」
はぁ。っと、ため息をつき、やっぱり罠であったことを再確認した後に、俺は二人を探すためにひたすら続く道を歩くのだった。




