51話 赴くは神殿
静寂に包まれた街へと瞬時に変化してしまった街。
NPCも居なく、プレイヤーも死んで氷漬け。
そんな街の中で俺たちは座り込んでいた。
「なんであのモンスター途中で消えたんだろうな……」
「さぁ? 負けると思ったんじゃない?」
「いやいや、あの状況さ明らかに私たちが不利だからそれはないと思うなー」
「だよなぁ……謎だなぁ……」
そんな話をしていると、次第に話題というのもなくなり、誰も喋らないという空間が広がった。
モンスターと戦った後に雑談なんて悠長かもしれないが、むしろこれくらい余裕の方がなにかと楽かもしれない。
「あ、そうだ! エンマ! ちょっと自分のステータス見てみなよ!多分なにか変わってるからさ!」
「そうよ。あなた、なんかさっき紫の光取り込んだんでしょ? それでなにかが変わってるかもしれないわ」
シズクとヒマワリに言われるがまま俺はステータスを開く。
正直何も変わってる気がしないが、まぁシズク達がこんなに勢いよく言ってくるもんだから変わってるという事だろう。
『ステータス』
名前:ヒイラギ エンマ
レベル:64
所持金:235000マニー
HP:521(+300)
MP:132(+80)
スタミナ:418(+180)
STR:364(+180)
VIT:352(+95)
DEX:267(+75)
AGI:319(+105)
INT:250(+150)
LUCK:200(+50)
CHARM:10
武器:黒魔の大剣
頭:
胴:防魔の鎧
腕:煉獄のガントレット
腰:
足:煉獄のブーツ
アクセサリー:星空のネックレス
スキル: 【六大魔法Lv.7】【サウザントスラッシュ】【剣技Lv.8】【聖騎士Lv.3】【暗黒騎士Lv.2】【鑑定Lv.10】【感知ガード】【気配察知】
称号: 光と闇を持つ者 魂を吸い取りし者 希望のプレイヤー
能力振り分けポイント:0
使用可能スキルポイント:0
取得可能スキル:【テレパシー】【ブレインコントロール】【死魔法】【天体魔法】
「うおっ。なんだこれ……めっちゃステータス上がってるじゃん」
「ほんと!? それでそれで、なんか特別なの増えてる?」
ヒマワリが興奮しながらピョンピョンしている。
自分の事を他人がここまで喜んでくれると何故かこっちまで嬉しくなってくるのは不思議だ、
「で、ステータスに変な称号とかあったかしら?」
シズクの言う通り、俺のステータスには謎の称号が二つあった。
十中八九あの称号が原因だろう。
「あぁ。なんか、『希望のプレイヤー』ってのと、『魂を吸い取りし者』ってのがあったな」
「それじゃ、エンマの鑑定で調べてみたら? それなら効果とか分かるんじゃない?」
「そうね。私もそうすると良いと思うわ」
ヒマワリとシズクに言われ、俺は自分の称号を鑑定することにした。
だが、ここで俺は少しだけ疑問に思ったことがある。
「なんでシズクは称号って分かったんだ?」
「ん? なにか言った?」
「いや、なんでもない……」
「早く鑑定してよー!」
「お、おう。分かった」
まぁシズクの事だから、きっと自分も色んな称号を持ってるのだろう。だから、俺にも聞いた。
それが最もな答えだろう。
シズクの件はここで置いておき、とりあえず俺は鑑定する事にした。
『称号.魂を吸い取りし者』
説明.プレイヤーの魂を禁断の方法で集め、吸い取った証。プレイヤーの数に応じて、ステータスアップ。
死んだプレイヤーの吸い取った者に対しての恨みの念でモンスター遭遇率大幅アップ。
『希望のプレイヤー』
説明.複数のプレイヤーを救った証。なんらかの理由で一定のプレイヤーが救われたと感じた時、この称号を手にする。
救われたプレイヤーの数に応じてステータスアップ。
救えば救うほど、さらにステータスはアップする。
「へぇ。こんな効果なのか」
「どんな効果だったのー?」
「あー。長くなるから省略するとな、ステータスアップと、多分俺にはないと思うが、一応モンスター遭遇率がアップするらしい。それと、なんかこれからもプレイヤーを救えばステータスアップもするとかなんとか……」
「おぉ!なんか凄い!! さすがエンマだね!」
「魂ってそんな効果があったのね。だから、あの殺人ギルドの人はこんな実験を……」
シズクが死んでしまい、氷漬けになったプレイヤーを見ながら悲しそうな目をしていた。
それ見て、俺はいてもたってもいられなくなり、シズクに声をかけようと思った。そんな時だった。
「さ、エンマ! この人達のためにも、早く神殿に行くわよ! この世界の秘密を知らなきゃいけないんだから!」
「ははっ。シズクは強いな……うん。そうだな。死んでしまった人のためにも、早くこの世界を終わらせないとな!」
「二人でなに話してるのー?」
「なんでもないさ。早く神殿に行こうって話をしてただけ」
「そうなの? なら早く行こっ! 神殿なんて楽しみ!」
「ほんと、ヒマワリちゃんは毎日楽しそうね」
「はははっ。ほんとにそうだな」
こうして、ヒマワリが走っていく中、俺とシズクはヒマワリの後ろ姿を見ながら、街からも良く見える、そびえ立つ神殿へと向かうのだった。