50話 再生の力
パベットドールが復活し、俺たちは苦戦していた。
先程までの楽な戦闘が嘘かのようにパベットドールは、いや、パベットドールが操る人形は強かった。
広場にいた人形の比ではない程だ。
「くっそ、人形も倒したら復活するし、これじゃ本体に攻撃できねえ!」
俺たちは人形を幾度と行動不能にしているが、やはり、パベットドールがまた糸を繋ぎ、動かし始める。
人形の数は減ることを覚えず、ただ俺たちは消耗していた。
シズクとヒマワリも本体に先程のように魔法を撃つ暇もなく、パベットドールが復活した瞬間に二人が放った魔法も耐性が出来たからなのか、耐えられてしまった。
糸を切ろうとしても、人形が身代わりとなって防ぎ、届かない。
「ヒマワリとシズクで広範囲魔法を試してくれないか?」
「ううん。多分それじゃダメ。あいつらを倒すには、さっきみたいに凍らせるか、私の予想だけど、頭を完全に砕くとかしないと無理だと思う」
「ヒマワリちゃん!ならさっきの氷魔法を!」
「無理。あれを使えば、ここら一帯は確かに凍る。人形も凍ると思う。でも、そうなるとエンマとあんたも凍るし、パベットドールには効かない可能性もある。だから、そんな真似は出来ない」
「頭を砕く? 分かったわ。ちょっと俺がやってみるよ」
俺は俺に対して突撃してくる人形を避け、その頭に自分の剣の柄を思いっきり殴るように当てた。
俺の力で殴られた人形はその場で地面に叩き付けられ、頭は見事に割れていた。
そして、糸は切られ、パベットドールも繋げようにも繋げれないようだった。
「おお! ヒマワリ! お前の読みは当たってるぞ! 頭を砕けば人形は復活しない!」
「さすが私! ってことで、3人でさっさと人形を砕くよ!」
「頭を砕く……って、魔法じゃ難しいわね……」
「なによ。雷を上から思いっきり当てれば砕けるでしょ? 多分……」
「ま、なんとかしてみせるわ」
こうして、俺たちは時間を掛けながらも、人形を一体一体と破壊していった。
そして、最後の一体を破壊し、パベットドールからの糸は全て切れ、パベットドールは無防備となってしまった。
「はぁはぁ。あとはお前を倒すだけだな」
何度も何度も人形にスキルを使ったりしたせいか、俺の体は疲れきっていた。
といっても、まだ無防備なこいつを倒すだけの力はある。
「これで終わりだ! 」
もはや抵抗してこないパベットドールに剣を振り下ろし、絶命させる。
これで二度目だ。
だが、やはりパベットドールのスキルは強かった。
「……マジかよ……」
俺の攻撃で倒れたと思った矢先に、また復活したのだ。
さっきよりも一回り小さいが、また人形は増えている。
絶体絶命の状況だった。
「エンマ。 私、もう無理だわ……」
「ごめん。私も……」
ヒマワリとシズクは魔法の使いすぎでその場に座り込み、もうこれ以上魔法は、撃てなくなっていた。
それに俺もほとんどスタミナも残っていない。
そんな中、人形は俺たちに襲い掛かってきていた。
俺達がどんなに疲れていようが全く気にすることなく攻撃を仕掛けてくる。
「……ドール。戻りなさい」
小さい声だが、よく響く声がこの街に聴こえた。
もちろん、俺の耳にもだ。
その言葉でパベットドールは止まり、同時に俺たちを襲う寸前だった人形、待機していた人形も全てパベットドールの懐へと戻っていった。
人形が全て懐へと戻った時、パベットドールは影の中に入るかのように消え、街には静寂と凍った人と人形のひんやりとした空気だけが残ったのだった。