48話 人形達の末路
襲い掛かってくる人形はなにせ量が多かった。
俺たち3人に対して、物量で突撃してくる。
魂の入っていない、無数の人は、人形に踏み潰され、嫌な音を起てながらぐちゃぐちゃになっていた。
「雷魔法Lv.9【エレクトリックサンダー!】」
シズクの魔法が複数の人形に直撃する。
どうやら、一体一体の人形は大した強さではないようだった。
シズクの魔法で粉々に砕けている。
「これならとりあえず勝てそうだな」
「エンマ! 右!!」
ギリギリで屈み、人形の攻撃を俺は回避した。
だが、俺の頭の上を通るナイフのようなものにはまるで毒が塗られているかのように紫に染まっていた。
当たれば動けなくなるのかもしれない。
倒れている人のように。
「神氷魔法Lv.1【絶対零度】」
ヒマワリがボソッと魔法を呟く。
その瞬間、辺りが突然寒くなり、人形の動きは遅くなった。
そして、ヒマワリは俺たちを後ろへと下がらせ、自分の魔法へと更に魔力を込めた。
広場には、現在10を超える人形と、魂が抜かれたプレイヤー。それに加え、ゆらゆらと揺れる紫色の光だけだ。
それら全てを俺達が見てる前で、ヒマワリは氷漬けにしてしまった。
一つの魔法でだ。
「……ヒマワリ。お前こんな魔法使えたのか……」
俺は驚いていた。
なにせ、今まで一度もこんな規模の魔法を見たことがないのだ。
それだけ、ヒマワリの魔法は規格外だった。
「ヒマワリちゃん凄いわね。魔法の腕だけは褒めてあげるわ」
「うっさいわね。あんたに褒められたって嬉しくないわよ。で、エンマ? あんた、そんなにポカーンとしてどうしたの? あんただって、私が洗脳されている時に私の魔法見たでしょ? あれと一緒よ、一緒」
「マジかよ……ってことは、この氷は俺の全力じゃなきゃ砕けないと……へぇ。ヒマワリはこんな魔法使って全然疲れてない。ってことは、もしや俺ヒマワリに勝負挑んだら負けるんじゃね?」
「そうね。多分だけど、私も負ける気がするわ」
「ま、シズクには絶対に負けないとして、エンマはどうだろうね。私は近接がほんとに出来ないから、近寄られたら負けるし、五分五分くらいじゃないかな?」
「近接に持ち込む前に負けそうだけどな」
俺たちは、話しながら広場をぐるっと回っていた。
氷の中に見える人形は、既に動かない。
紫色の光も氷の中ではどうやら動けないようで、そのまま光っている状態で凍ってしまっていた。
「それで、問題はこの人形やらを誰が作ったかだよなぁ……それに、こんな魂をなににつかうのかもわかんねえし」
「そうねぇ。人形も凍っちゃったから、場所も聞き出せないし……」
「いやいや、元々人形じゃ聞き出すのも無理だし。何いってんの?」
「もしかしたら可能性あるでしょうが! 喋ってたんだから!」
二人が言い争っているうちに、俺は紫色の光が凍っている所へと行き、その氷に手を触れてみていた。
その瞬間、氷は砕け、なんと光の部分だけ溶けてしまったのだ。
「うおっ……あっぶね……」
どうにか、光の近くには人形がいなかったことから、動き出すものは何もなかったが、唯一、光だけがゆらゆらと揺れていた。
「ほんと、これどういう原理で出来てるのかしらねぇ……」
「ちょっと触ってみるか……」
俺は興味本位で光へと手を当てた。
光の中はまるで熱くはなく、冷たくもない。
一定に保たれている温度のようだった。
そして、数秒光に手を入れていると、俺の体に異変が起こり始めていた。
「エンマ! なんか、体が光ってるよ!?」
ヒマワリに言われたとおり、俺は手を引き抜き、体を見ると、光に入れていた腕が光、同時に足も紫色に光っていた。
「光も小さくなってわね。もしかして、これは、触れた人に溶ける? いや、なんていうのかしら、吸収?」
「でも、こんなの吸収したら、危なくない? 人の魂でしょ? 」
「でも俺の体に異変はないぞ? 光ってるだけだし……」
俺達が困惑していると、この静かな街に俺たち以外の足音が聞こえてきた。
「くっくっくっ……まさかこの街にまだ生きている人が居るとはねぇ……」
俺達に気付いたそいつは、以前見たことがある人物だった。




