46話 定められた目的
翌朝、俺たちは宿屋を出て、クウガたちのいるところへと向かった。
俺達がたどり着き、出迎えてくれたのはクウガではなく、レントだった。
少し大柄な男だ。クルミのことで結構ショックを受けてたみたいだし、大柄だが精神面はもしかしたら弱いかもしれない。
「なぁ、クウガの調子はどうだ? 傷とかは大丈夫か?」
「あぁ。傷は大丈夫なんだがな……なんかクルミを連れ戻すとか言って暴れるんだよ……」
「そっか。とりあえず会わせてもらっていいか?」
「おう。中に入ってくれ」
俺たちはクウガたちが暮らしている家の中へと入っていった。
この世界でも、お金さえ出せば土地と家が帰るのだ。
まぁ、俺とシズクはただ単に買わないだけだが。
「あ、そうだ。ヒマワリとシズク。俺がクウガと話す時、お前らは街にでも行って買い物しててくれないか? 回復薬の量がちょっと微妙でな。頼む」
「えー! 私居ちゃダメなの?」
「いいから。ヒマワリちゃん。今回は私と街に行くよ!」
シズクが真剣な表情をしているのにヒマワリはなにかを感じづいたのか、素直に頷き、従ってくれた。
「この部屋だ。クウガが暴れてるから危ないかもしれん。気を付けてくれ」
レントは扉を開け、俺たちが中へと入ったのを見ると、なにかの作業があったのか部屋へは入らずにリビングのようなところへと行ってしまった。
「よぉ。クウガ」
「……なんだ。エンマか。それに二人も。どうしたんだ?」
「傷の調子はどうなの?」
「体大丈夫ー?」
ヒマワリとシズクが突然傷について聞いている。
なんだかんだ言ってもやはり、心配だったのだろう。
「体は大丈夫だ。それよりも、あのモンスターとはまた会えるのか? クルミについてちょっと話したいんだが……」
レントは暴れていると言ったが、そこまで暴れているとは思えない。
単に、相手が俺たちだから冷静になっているか可能性もある。
「あー、その事だがな。ちょっと俺から話があるんだ」
「それじゃ、私達は街に行くから。ちょっとした買い物だからクウガ君もお大事にね」
「シズクと二人とかなぁ……はぁ……行くかぁ……」
めちゃめちゃ嫌な顔をしながら、ヒマワリとシズクは部屋から出ていく。
てっきりこの部屋にいると思っていた、モエカは俺達が入った時から居なく、この家にもいないようだ。
一体どこに行ってしまったんだろうか。
「それで、俺に話ってなんだ?」
「あぁ。これは二人きりの時に言いたくてな。クルミについてだよ」
「クルミ!? なにか知ってるのか!?」
目を見開き、俺の肩へと勢いよく手を掛ける。
それほどまでにリーダーとして、仲間のことが知りたいのだろう。
「まぁ落ち着け。これからの話は、もしかしたらお前の心に大きなダメージを与えるかもしれない。耐えれるか?」
「だ、大丈夫だ。俺は、もしもクルミが死んでたとしても、きっと、リーダーとして耐える……」
「わかった。話すよ。クルミはな───」
そして、俺はクウガについてクルミがどこかへ行ってしまったこと。
ディラハンを洗脳していた事を話した。
クウガは暴れずに冷静に俺の話を聞いてくれた。
ただ、肩が少し震えていて、顔が俯いていたのは男として気付かなかったことにしておこう。
「それで、クルミはどこに行ったか分かるのか?」
「それは分からない。だけど、生きてるってことは保証するよ」
「わかった。ありがとなエンマ。これで俺たちの第一目標が見つかったよ。今日からクルミを探す旅に出ようと思う。当分の間エンマとは会えそうにないけど、ま、お前なら大丈夫だよな」
「あぁ。もちろんだよ。お前にはディラハンへの再戦もあるしな。クルミ探し。頑張れよ。俺達もクルミを見つけたらお前へと連絡するようにするから」
「本当にありがとう」
ひとまずはクルミが生きているということを知ったのが嬉しかったのか、涙を拭き、すぐに目標を決めて決意も固めていた。
これならもう心配しなくても大丈夫だろう。
「ただいまー! ついさっきそこでモエカさんと会ったよ? なんか材料買ってたから、今日の昼ご飯の買い出しだと思うの!」
ヒマワリが元気よく帰ってきた。
シズクが居ないことを聞くと、どうやら置いて帰ってきたらしい。
ただ、タイミングもピッタリと言うことから、もしかしたらどこからか見ていたのかもしれない。
そんなスキルないから偶然だとは思うが。
「ただいまー」
「おかえり、モエカ」
ヒマワリの言った通り、モエカさんが帰ってきた。
ついでといえばあれだが、シズクも一緒に帰ってきていた。
「あ、エンマ。ただいま。とりあえず、ヒマワリちゃんのこと呼んでもらっていい? 」
俺がシズクを玄関へと見に行くと、シズクは怒りを露わにしていた。
「ヒ、ヒマワリ? シズクが呼んでるぞ?」
「なにー?」
そして、ヒマワリとシズクは外へと行き、中にいても聞こえるくらいの声でシズクの説教が聴こえてきた。
「あはは。やっぱりお前らのパーティーは楽しそうだな」
「そうだろ? あ、そういえばだが、俺達も少しの間この街から離れるよ。噂を信じてみようとおもってな」
「うわさ? ま、噂だろうとなんだろうと、俺はお前達のことを止めないさ」
「またお前と会えることを俺は祈ってるよ」
「まぁまぁ。そんな話は置いといて、とりあえず今日は家で飯食ってけよ。どうせ、街出るのは夜だろ?」
「よく分かったな。それじゃ、飯だけ貰うとするよ」
クウガがモエカへと俺達の分も昼飯の用意をするように伝えると、モエカは張り切って作ってくれた。
腕によりを掛けて作ってくれた料理はどれも美味しく、ヒマワリとシズクも嬉しそうに食べていた。
「それじゃ、またいつか会おうな」
「おう! お前からはまだ奢ってもらってないしな!」
「お、そうだな」
「……エンマ。俺は、二人にもクルミのことを伝えてからこの街を出るよ。でも、二人にも伝えた方がいいのかまだ迷ってるんだ」
「俺はいいと思うぞ。やっぱり、真実っていうのは知りたいもんだからな。なにかあっても、リーダーのお前ならきっと大丈夫だよ」
「最後までありがとな。それじゃ、またな!」
「おう!」
「モエカさんにご飯美味しかったって伝えてもらえるかしら? それと、ごちそうさまって」
「私の分も伝えといてくれー!」
「あははっ。おっけー。任せといて。きっとモエカも喜ぶよ」
俺たちはクウガが見送ってくれる中、手を振って別れた。
そして、噂の神殿のことを俺は二人へと話した。
「へぇ。良いわね。面白そうじゃない」
「私はエンマが行くところに行くからどこでもいいよ?」
俺が噂の神殿へと行きたいと言うと、二人は快く了承してくれた。
ヒマワリはちょっとよく分からないが、とりあえず了承してくれたのに少しだけ安堵した。
「それじゃ、神殿へと行くとするか!」
「近くの街は、そうね、あ、『神秘の街』が近いっぽいわね」
「神秘の街? どんな所だったかなぁ……名前しか覚えてないや」
「とりあえず転移しようぜ?どうせ街についたらまた夜だろうし、宿を探すために街を回ろうか」
「賛成ー!!!」
「ヒマワリちゃんは子供みたいねぇ……」
「うるさい!!!」
こうして、俺たちは騒がしいまま転移石を使い、昔に一度だけ行った神秘の街へと転移したのだった。