38話 襲われる俺達
進む道を失った今、俺たちに出来るのは対抗することだった。
相手は殺す気で来るのにこちらは殺せないとなると、対抗して逃げるのが精一杯だ。
だが、鑑定してみて分かったが、相手の強さは俺たちとほぼ同じ。
ということは、この世界でのプレイヤーでも上位に入れるくらいの強さということだ。
「くっくっく。さてさて、どうするのかな。そうだねぇ。私的には殺さなくてもいいんだけど、そうだ、条件を出そうか」
俺たちを面白おかしく笑いながら、こいつらは条件を指定してくる。
だが、考えようによってはこれで逃げれるという可能性があるなら条件を飲むというのもありだろう。
「それで、条件ってのは……」
「ダメよエンマ。これはあいつらのやり口の一つなのよ。きっと条件はどちらか1人を残してやるから片方を殺させろ。とかよ。騙されてはダメ」
「私はそんな意味の無いことを要求しないよ? そうだねぇ。私の気分は今すごくいい。だから、今は一つのアイテムで許してあげる。君たちは持ってるでしょ? パンドラの箱から入手した、禁忌の腕輪を」
こいつがなぜそのアイテムを知っているのかは分からないが、俺はそのアイテムを持っていた。
偶然にも、初めて英雄憑依を使ったときに入手したのだ。
だが、このアイテムは非常に危ない。
アクセサリーとして装備した人を呪うというアイテムだ。
使い方によっては、誰かを呪い殺せるというアイテム。果たしてこれを渡していいのだろうか。
「雷炎魔法Lv.6【ライトニングフレイム!】」
俺が悩んでいるうちに、シズクが魔法を発動し、目眩しをした。
相手は突然の行動にビックリして少しだけ固まっている。
「エンマ!逃げるよ!!」
俺の手を引き、相手の横をすり抜けながら走り出したシズク。
俺も驚きで、手を引かれながら走ることしか出来ないが、どうやら上手く逃げ切ることが出来そうだった。
「水風魔法Lv.8【ウォーターハリケーン】」
相手はそんなに甘くなかった。
目眩しの炎をすぐにかき消したのはフードを被った人だ。
幸いにも逃げやすい方向にいけたのは良かったが、逃げ切るには、またれ相手の隙を突かなければならなかった。
「ふむ。交渉は失敗ですか。不本意ですが、ここで死んでいただくとしましょう。それでは、さようなら。死魔法Lv.3 【麻酔死】」
俺を標的と定めたのか、殺気のようなものが俺へと飛ばされてきている。
「闇魔法Lv.6【暗闇の障壁】」
俺には対策があった。
そして、それは逃げることにも繋がる魔法でもある。
今まで忘れていたが、この魔法は暗闇で前を見にくくしつつ、相手の攻撃を防ぐ魔法だ。
俺の力の方が上であれば、あいての魔法はある程度防げる。
現に、今の俺へと死魔法は当たっていない。
「シズク!逃げよう!!」
「ぐぬぬぬぬ……早く殺しなさい!!」
「了解……あっ……」
俺に魔法が通じなかったのが嫌だったのか、怒った口調でフードの人へと命令していた。
そして、フードの人は命令に従い、魔法を放とうとしたが、ふとその時にフードがずれてしまい、顔が露わになってしまっていた。
「───ヒマワリ?」
「エンマ!!早く!」
「お、おう」
ヒマワリらしき人物はフードを直すために魔法を中断し、見事に俺たちは逃げ切ることが出来た。
どうしてヒマワリが殺人ギルドにいるかは分からないが、まだあれの人がヒマワリであるという確信が俺にはなかった。
顔が似てるだけの別人ではないのだろうか。俺は現実逃避するかのように頭を悩ませた。
「エンマ。とりあえず、知り合いの人に51層探索を中断して街に戻るように言っとくわね。さすがに危ないわ」
「お、おう。頼む」
俺の受け答えに異変を感じたのか、シズクが少し悲しそうな顔でこちらを見てきたが、すぐにシズクは色んな人へとメッセージを飛ばしていた。
一通りメッセージを飛ばし終わったシズクは俺へと近づき、肩に手を起きながら呟いた。
「エンマ。悩まなくていいの。ヒマワリちゃん、だっけ? もしも、ヒマワリちゃんがさ、殺人ギルドにいたとしても、根はいい子なんでしょ? だったら、まだ人なんて殺してないかもしれない。洗脳されているだけかも。だから、今度はエンマが助けよ? ヒマワリちゃんを救い出そうよ。私はいつだってエンマの味方だから、ちゃんと手伝うから……だから、そんなに悲しそうな顔しないで……お願い」
俺はシズクの言葉に涙した。
「……そう、だよな。ヒマワリだって、昔は全然普通で、いつも楽しそうで、笑顔の可愛い女の子だったんだ。きっと、洗脳されて殺人ギルドにいるだけ。なぁ、俺が今からヒマワリを助けるって言ったら手伝ってくれるか?」
「もちろん!! 私は手伝うよ!エンマ!」
俺は嬉しかった。死ぬかもしれないという道で俺について来てくれるというのが俺にはたまらなく嬉しかったのだ。
「───おいおい。そんな危ない所、お前ら二人だけで行かせるかよ」
「そうそう。もちろん、俺たちも付いていくからな」
「君たちに拒否権はなーし!」
「二人が死んだら皆悲しむ。だから、私も手伝う事にする」
俺たちは殺人ギルドから逃げた後、街の外で話していた。
俺たちの会話が聴こえたのか、シズクが呼んだのかは分からないが、俺の背中を少し押して、話し掛けてくれたのは、4人パーティーの『四天王』の人達、リーダーである。クウガ、レント、モエカ、クルミだった。
「お前達、本当に良いのか? 死ぬかもしれないんだぞ?」
「そんなの知るかよ。友達を助けるのに理由なんていらねえ。それに、お前の大事な人なんだろ? 助けるに決まってるさ」
その言葉に他の人たちも頷いていた。
俺には、こんだけ付いてきてくれる仲間がいる。友達がいる。
孤独だった時には考えもしなかった事だった。
「さぁ行こうぜ!エンマ!」
四天王のリーダーであるクウガが俺の背中をまた押す。
「さ、エンマ! みんなもいれば大丈夫だから!!」
シズクが隣で元気づけてくれる。
「あぁ。みんな!ありがとな!!それじゃ、俺の友達を助けに行こうか!」
俺たちはまた51層へと向かった。
もう一度殺人ギルドの二人と会うために。
ふーむ……そろそろぶくま50件だし、特別な話考えるかな……(´ᴖωᴖ`)




