34話 精鋭部隊隊長
ずっと寝てました! 遅れてごめんなさいノω・、) ウゥ・・・
街に戻り、俺はひとまずシズクと話し合うことにした。
いくらゲームといえど、この世界で死ねば日本での俺も死ぬ。
これはもうこの世界にいるNPC以外の人、つまりはプレイヤーはみんな分かっている筈だろう。
初めてデスゲームが始まった場所にはこの世界にいる者が刻まれている石が置いてある。それもご丁寧に、全員の名前が書いてあり、更に死んだものは二重線のようなもので消されている。
だから俺はボスと戦うというのを慎重に考えなければならなかった。
「それで、結局ボスに挑むことにしたの?」
シズクはボスと戦いたいのだろうか。
ボスというのは、確かに強い敵だし、ドロップアイテム美味いと思う。
だけど、ボスというのは、いや、ボス部屋というのは中々大変な所だ。
今回は転移石が使えない。それに加え、ボス部屋は一定時間その場に留まると、いや、ボスと戦っていると強制的に扉が閉められ、戦うしか道がなくなるという仕様があるのだ。
「転移石が使えないんじゃなぁ……時間を掛ければ扉が閉まって逃げる手段なくなるし……」
「でも、あの敵を普通に倒せるくらいにならないとこの先100階というエデンの塔なんて進めないわよ?」
「そうだよな……よし!! 俺は戦うわ! シズクは、どうする? 死にたくなければ別にいいぞ? 今回は危険だしな」
「馬鹿じゃないの? 行くに決まってるじゃない。あなたとパーティー組んでるのよ? それに、強い敵と戦うのは楽しいじゃない」
「それもそうだな。んじゃ、エデンの塔に戻るとするか!」
俺たちはエデンの塔に戻り、マップデータを参考にモンスターを倒しつつボス部屋へと向かった。
やはり、あの隠し部屋付近は、ボス部屋の近くということもあり、どうやら敵は居ないようだった。
だが、その代わりといえばアレだが、またもや攻略ギルドの面々と出会ってしまった。
それも、今回は少人数の精鋭達だろう。
「少年君。君もボスに用があるということでいいのかな?」
俺たちを見た瞬間に話しかけてきたこいつは、多分だが、この部隊のリーダーだろう。
というか、普通に考えてリーダーだと思うし。
「えぇまぁ。それで、貴方達はその人数で挑むつもりですか?」
「それに、そのボス部屋の特性を知ってますわよね? 転移石が使えない。その辺はもちろん理解してるんですよね?」
俺とシズクはほぼ同時にリーダー格の男に問い掛ける。
「もちろんだよ。だから、この人数なんだ。僕達はまぁいわゆる、攻略ギルドの幹部。いや、頼られている精鋭隊なんだ。あ、ちなみに僕は精鋭部隊隊長。『ユウマ』だ。よろしく頼むよ」
何故こいつらはボス部屋を前にして入ろうしないんだろうか。
誰かを待っている? いや、精鋭部隊なら待つ人も居ないはず。
「ところでだ、君たちがあの隠し部屋の敵を倒したっていうのはホントかな? ひとりの部隊長から聞いたんだが、先にボス部屋の前にいたのは君たちで、隠し部屋も恐らく君たちが破壊したと思われる。という報告を受けたのだが」
前言撤回だ。
こいつが待っていたのは、戦力になりそうな奴。
即ち、俺とシズクだ。
そして、こいつは隠し部屋に一度行ったことがあるとみた。モンスターの強さもわかっている上で、それに打ち勝った俺たちを待っていたんだ。
「まぁな。ギリギリだけど勝ったには勝ったよ。だけど、それがどうしたんだ?」
「あ、ちなみに私は初撃で死にかけたのでほぼ寝てましたよ」
ここでシズクが空気を読めずに話に割り込んできた。
さぁ、ユウマはこれを無視できるのか。
「──ふむ。まぁ、勝ったということは、やはりそれなりの強さだということだろう。いや、あそこのモンスターは我らでも勝てなかった。君たちは、いや、きっと君はもしかしたら、現時点で我がギルドの長を除いたら最強のプレイヤーかもしれない」
こいつは俺たちをボス討伐に連れて行こうとしている。それは明白だった。
だが、それはそれで都合がいい。精鋭ともなれば、普通に強いだろうし、ボスに2人で挑むよりは良いだろう。
まぁドロップアイテムやらが分配されたり、最もダメージを与えた人に貰えるレアドロップやらが取れるか危ういが、命よりは優先すべきものではない。
よって、俺たちにとって精鋭部隊との共闘はメリットしかなかった。
「そこでだ、どうだい? 君たちも僕らと共にボス討伐しないかい?」
「えぇ。もちろんよ。丁度私達も討伐しに行くところだったの。人数は多いほうがいいわ」
「ちょ、おま、先に言うなよ! 俺が今言おうとしたのに!」
「うるさいわね。あんたが真剣に色々考えてるから言ってあげたのよ。感謝しなさい!」
「そうかいそうかい。ありがとう。それでは、僕達が先にボス部屋に入る。君たちはあとから入ってくれ。出来るだけ早くな。そして、充分に注意してほしい。君たちみたいな強いプレイヤーを今失うのは勿体無いんだ。転移石は使えないが、体力が黄色ゲージになったら必ず回復してくれ。それだけは頼む」
どうやら、ユウマは比較的まともな人のようだ。
俺たちにも忠告した後、仲間全員にもほぼ同じことを話していた。
そして、俺たちより先に精鋭部隊の人たちはボス部屋へと入っていった。
「よし、俺達も行くか!」
「そうね! 久々に魔法が放てるわ! 楽しみ」
だいぶレベルが高い雷魔法が存分に撃てるのが楽しみになのか、前回ほとんど戦う暇がなかったので戦いたかったのかは分からないが、ボスを前にしてここまでテンションが高いのはいい事だった。
「それじゃ、初めてのボス討伐といきますか!」
そして、俺とシズクもボス部屋へと入り、俺たちの初めてのボス討伐が始まった。